『 最近の記事 』

京都市東山区 『山手の街並みに佇む町家リノベーション』 vol.5

京都東山区の『山手の街並みに佇む町家リノベーション』、続報です。

前回までのお話はこちら→vol.1 vol.2 vol.3 vol.4

今回は、工事現場から補強の様子を中心にお伝えします。

現場に、解体で取り除かれたボロボロの柱が置かれていました。 これは床下の木材のひとつ「大引(おおびき)」です。

このように家を支える土台となる部分です。

Vol.3でシロアリの被害についてお伝えしましたが、この大引きも深刻なシロアリの被害を受けていました。

築年数の古いお家は、時代の流れとともに周りの環境が変化し、建築当時の地盤より床下が低くなっていることがあります。そのため床下に水が流れ込んで湿気がちでシロアリにとって格好の環境となり、被害が大きくなったのでしょう。

今回のリノベーションでは、全体に防湿シートを敷き込んだ上でコンクリート土間を打ち、その上に基礎を作ります。シロアリが上がってくることはできなくなるので、新しいお家ではシロアリの被害はずいぶんと減ることでしょう。(vol.3参照)

こちらも、シロアリにより破損された柱です。

シロアリは水のあるところを起点にして1mほどしか移動できませんが、屋根から雨漏りがあると、どこまでも登ってくるので被害が甚大になります。

このように基礎を作って土台を入れ、シロアリで破損した木部は切り外し、土台と強固に繋ぐことで補強を行いました。

広報担当者、現場の大工に話を聞きました。 「こちらのお宅のシロアリの被害、ひどかったですか?」

「あちこちボロボロでしたわ。けど医者の手術のようにお腹を開いてみて『手の施しようがありませんでした』って閉じるわけにはいきません。シロアリの被害がひどかった部分をぜんぶ取り除くのに時間がかかって、なかなか大工道具を持たせてもらえませんわ」

冗談まじりにそう言う大工でしたが、やはり全体的にシロアリの被害があったようです。 弊社の熟練の大工の手によって傷んだ部分が取り除かれ、補強を行います。 「任しといてください」と頼もしい言葉が返ってきました。

さて、家が建ってしまってからは見えなくなる部分をご紹介します。

こちらは、構造用合板で柱と柱、柱と梁を繋いだ「耐力壁」です。

使用している「構造用合板」は、薄くスライスした板を重ねて一枚の合板にしているので、反りにくく強度が高いという特徴があります。壁の下地に使うことで地震に強い壁に仕上がります。

仕上げをすると見えなくなりますが、この処理をするとしないでは耐震効果に雲泥の差があるので、欠かせない部分です。

これらは特に補強が必要な場所に施工します。その判断は物件ごとに検討し、現場担当大工と弊社所長が行っています。

リノベーションにあたり、仮の柱を入れた写真です。

今回のリノベーションでは、庭に面した窓の部分をより広く見せるよう、柱を何本か抜きました。全体が仕上がるまで、崩れないように仮の柱(写真の斜めになった柱)をジャッキで取り付けています。

濡れ縁(壁や雨戸の外側につくられた縁側)の上部分にあたる、化粧軒天です。

シンプルな軒天のお家が多い中、和風建築では化粧垂木(だるき)を取り付けて美しく仕上げることも多々あります。

今回のリノベーションでも、奥行き135cmの長めの軒を作り、その軒天(軒裏)は創意工夫をこらし美しく仕上げました。大工の熟練の技が生きた部分ではないでしょうか。

まだまだこれから、問題ある部分を補強していきます。 続報をお待ちください!

blogged by 松山一磨 & 黒川京子

京都市東山区 『山手の街並みに佇む町家リノベーション』 vol.4

京都東山区の『山手の街並みに佇む町家リノベーション』。続報をお届けします。

前回までのお話はこちら→vol.1 vol.2 vol.3

弊社スタッフ、施主様ご夫妻とともに京都御池にあるタカラスタンダードショールームを訪れました。

ここは、キッチンや浴室などに設置する製品が展示されているショールーム。専属アドバイザーによる説明もあり、製品を見たり触れたりすることで、使用感を確かめることができます。

弊社はサイズ感やデザイン面の視点から、施主様の製品選びをお手伝いをします。

施主様は、シックな木調デザインのシステムキッチン、浴室暖房や乾燥機など機能が充実したホーローのタカラスタンドード製の浴室を選ばれました。

新しく生まれ変わる家に、これらの製品が実際に設置された様子が早く見てみたい!とワクワクした広報担当者です。

ショールームを後にした一行。

施主様とともに現場へと向かい、工事の様子を見て回りました。

最初の回(vol.1)で前回お伝えしたキッチンの上部です。

閉じられていた天井を開けると… 往時を偲ばせる、通り庭上部の火袋と高窓が現れました!

こちらは、改修前のキッチン。吹き抜け部分が閉じられていたので、ずいぶん印象が異なります。

子どもの頃この家にお住まいだった、施主である奥様。

「あの高窓、あるのは覚えてました。途中で天井を閉じたんです。古い家だから、家の中は何回も直してたんですよ」

施主様宅のように、昔ながらの町家はその後の改修で天井を閉じてしまうことが多々あります。

今回のリノベーションでは、隠されていたこの火袋を復元し、窓ガラスはペアガラスに交換することで光も取り入れます。

元々の火袋を復元することで、町家独特の天井の低さを解消した広々とした空間が出来上がることでしょう。

解体したことで、壁や柱などこれまで見えていなかったところがあらわになっています。

「すごいな、こんなんでよう建ってたな、ボロボロやわ」とご主人。

ここに補修を加えながら、耐久性もデザイン性も優れた家へと生まれ変わらせるのが吟優舎の仕事。気合いが入ります。

「子どもの頃の思い出が詰まってるから…懐かしいわ」と家中を見つめる奥様。

「きれいになるのが楽しみですね」とお声をかけると「本当にね」と頷かれました。

一体どんな家に生まれ変わるのでしょうか。広報担当者もとても楽しみです。

blogged by 黒川京子

京都市東山区 『山手の街並みに佇む町家リノベーション』 vol.1

今回からご紹介するのは、京都東山の住宅街に佇む一軒家。

施主様ご夫妻の奥様が、小さい頃に住まわれていたご実家です。奥様のご両親がお住まいだったこの家をリノベーションし、ご夫妻の終の住処にしたいというご要望を承りました。

「私の父が子どもの頃に建った家なんです。もう90年以上経っているのかな。せやから、どうなるのかなと不安もあるけど、きっと上手に直してくれはると思って」

穏やかに語る明るくおしゃれな奥様と、物静かで優しそうなご主人。ご夫妻のお好みをよくご存知の息子さんが、インターネットで弊社を見つけ、薦めてくださったといいます。

築90年以上にもなるこのお家は、いわゆる古民家といわれる物件。外から見ると波板にツタが這っていて、確かに年月を感じさせます。

しかし古い梁や建具を生かして再構成すれば、きっとべっぴんさんの素敵なお宅になる!と直感した弊社所長。施主様ご夫妻のお好みに合わせ、町家風デザインを生かしたリノベーションを施すことになりました。

実はこの家、何度かの改修を経て物置が増築されるなど外観が変化していますが、もともとは町家だったと思われます。

【京町家の定義とは?】
「通り庭」「火袋」「出格子」のいずれかがあることです。



「通り庭」とは、玄関から裏庭までまっすぐに通る土間のこと。昔は裏庭にいったん出てから、お風呂とお手洗いがありました。通り庭にはおくどさん(かまど)が置かれたため、炊事の火が燃え移らないよう天井が吹き抜けになっており、その空間を「火袋」と呼びました。

改修前のキッチンです。天井は吹き抜けではなく、閉じられてしまっています。

ちょっと裏庭へ出てみましょう。

2階の端につけられた、小さな窓。今は裏庭からしか確認できないこの窓は、火袋に取り付けられた高窓です。町家の火袋には、このように灯り取りのための窓が必ず付けられていました。これはまぎれもなく火袋があった証拠です。

そこで、キッチンの天井に吹き抜けを再現し、最大限に光を取り込むプランを立てました。明るいキッチンに生まれ変わるのが今から楽しみです。

また施主様がご高齢になった時のこともふまえて、今後も暮らしやすくする工夫を盛り込んだプランをご提案いたしました。

時を積み重ねた一軒家が、レトロモダンな京町家に生まれ変わる過程を少しずつご紹介していきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

blogged by 黒川京子