『 最近の記事 』

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.4

織物の町として知られる西陣。
この地に佇む、築100年を超える京町家のリノベーションが進んでいます。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3

「観光・食事・鑑賞」が楽しめるプライベート空間『あそんでいきなはれKYOTO』としてリニューアルするための壮大な計画です。

施主様は「計画のイメージをぼんやりと思い浮かべたのは20年ほど前。しっかりと考え始めたのは10年ほど前です」と仰います。

「私は生まれも育ちも西陣です。どんどん京都らしい街並みがなくなっていくのを見て、本当に残念やなぁと。京都にしかない街並みや文化をずっと残したいな、もっと日本や海外の方に知ってもらいたいなっていうのが、もともとの始まりなんです」

そう仰る施主様が目指したのは、町家という空間で様々な体験ができる場所。


出張シェフが腕をふるう料理を味わったり、女将と一緒におしゃべりや料理を楽しんだり、舞妓さんとお座敷遊びをしたり。


一般の人には敷居が高く感じられるような体験を、ひとつの場所で楽しむことができます。

「商業施設のような町家ではなく、実際に住んでいる町家に来てもらおうというのが大きなポイントです。気持ちは『お家に遊びにおいでよ』なんですよ。それで名前も『あそんでいきなはれKYOTO』としました」

女将である施主様がイメージしたのは、おもてなしの場を新しいダイニングキッチンとお座敷に据えること。これが吟優舎のプランニングの要となりました。

工事前の通り庭(台所)

玄関と通り庭横の部屋をダイニングキッチンとして再構成。

壁にタイルを貼ってシステムキッチンを施工し、部屋の中心には立派なアイランドキッチンも入りました。

改修前のお座敷

舞妓さんとのお座敷遊びができるお座敷は、建具を新設したり窓まわりを磨き上げたり、美しく整えます。

「何でも新しい物は刺激的なのですが、やはり古い物は永年に使いましたら愛着がありますので大切にしてゆきたいと切に思いますね。ましてや永年住むお家となると尚更です。町家のリノベーションは本当に難しいと思います。一つ間違えると前のままの方が良かったなとなるのではないでしょうか。その思いを更に上回るには、納得がいく施工つまり、職人さんの匠の技かなと感じております」

施主様の思いとお言葉を大切に、工事を進めていきます。

blogged by 黒川京子

伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.6

「伏見御香宮の古民家リノベーション『蔵』」の続報です。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5

木工事が順調に進み、完成に近づいたある日。
施主様に、縁側と玄関土間に設置するライトをお選びいただくことになりました。

部屋の雰囲気作りに欠かせない「照明」
どのような照明デザインを選ぶかによって、部屋の雰囲気はガラリと変わります。

まずは吟優舎が保有しているアンティークペンダントライトの中から、施主様宅に合いそうなものをいくつか選定。 その後、ラインにてご提案しました。(写真は候補の一例です)

今回はお写真でお伝えしましたが、直接現場にお持ちし、施主様とともに選ぶ場合もあります。

縁側には、こちらのアンティークライトを選ばれました。

実際に設置した様子です。

かさの部分が花のようにふわりと広がるペンダントライト。
レトロな華やかさがあり、やわらかな光が廊下と庭を優しく照らします。

玄関の土間上には、丸みのあるアンティークライトを選ばれました。

設置した様子です。

ころんとしたフォルムから漏れる光が、タイルを埋め込んだ飾り土間とマッチ。レトロな趣を引き出しているのではないでしょうか。

昭和初期ごろのアンティーク照明は、古民家や京町家と好相性なことから、よくご提案させていただく照明のひとつです。

数回に分けてお伝えしてきた伏見御香宮の古民家リノベーション『蔵』、近々完成の様子をお伝えいたします。

blogged by 黒川京子

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.3

上京区西陣。
築100年以上の歴史がある京町家リノベーション『雅』、続報です。


(前回のお話はこちらvol.1vol.2)



平成14年に「歴史的意匠建造物」、そして2024年には「歴史的風致形成建造物」の指定を受けた、由緒ある京町家です。

新しいおもてなし空間『あそんでいきなはれKYOTO』へと生まれ変わらせるため、着々と木工事が進んでいます。

床下部分の施工です。
この現場は、床下状況が良かったので、土(地面)にそのまま施工をしています。

築年数を経た京町家は、床下が湿気がちになり、シロアリの被害を受けていることが多々あります。その状況は現場によって異なりますので、その都度判断し、適切な処置を加えています。

前回vol.1でお伝えした束石の上に「鋼製束/こうせいづか(大引を受ける床束の一種)」を設置しているところです。

この上に、床組の重要な構造である「大引(おおびき)」を施工していきます。

断熱施工です。
床下には、冬の寒さだけでなく、夏の暑さにも有効な断熱性能素材を敷き込みました。

京町家は、冬の寒さが気になるところ。
吟優舎のリノベーションでは、必ず断熱施行を行なっています。

シルバーのものは掘りごたつの専用断熱材です。

以上、現場からの施工報告でした。

blogged by 黒川京子

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.2

上京区西陣、築100年以上の歴史がある京町家リノベーション『雅』、続報です。 (前回のお話はこちらvol.1)

「本当の京都を、日本だけでなく海外の方にも知ってもらいたい。実際に生活している京町家の空間を楽しんでもらいたいんです」。

そう仰る施主様。

長年の思いを観光・食事・鑑賞が楽しめるプライベート空間『あそんでいきなはれKYOTO』として形にするため、解体工事が始まりました。

床が取り払われ、中が見渡せる状態になりました。

立派な京町家ですのでとても奥に長く、京町家ならではの「鰻の寝床」の形状がよく分かります。

建物の両サイドに窓がないのは、京町家の特徴のひとつです。

床下の束石(つかいし)を設置しているところです。

束石とは、建築の床束(ゆかづか)を支えるための石材であり、建物の基礎部分に配置される重要な要素です。

掘り炬燵(ごたつ)だったと思われる跡のまわりに、束石を設置していきます。

束石は、地面の湿気から柱を守る役割も果たしています。

水回りの基礎施工部分です。

解体してみると既存の基礎の状態があまり良くなかったため、新たにコンクリートブロックによる補強を行いました。

町家リノベーションでは補強が欠かせません。

担当大工と弊社所長が部分ごとに状況を見て判断し、適切な補強を行っています。

解体が終わり、本格的に木工事が始まります。
ここからどんどん変化していくことでしょう。

ふと見上げると、廊下の庇(ひさし)に蝉の抜け殻がひとつ、くっついていました。

家の内側と外側(庭)との距離が近く、自然と共生する京町家ならではの風景に心が和んだ筆者です。

blogged by 黒川京子

下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.2

100年以上の歴史がある立派な町家のリノベーション、続報です。
前回までのお話→ vol.1

住まいにとっては大変重要となる、耐震構造部や断熱施工。
完成時には見えなくなりますが、出来る限りの対策を行なっている部分ですので、工事中の写真とともにご紹介いたします。

◆断熱施工

こちらは、1階ガレージ上となる2階の床組です。

通常1階と2階の間には、断熱材は施工されません。
ただしここは屋外と繋がったガレージになる部分です。

冬場、階下からの冷気があること。
また断熱性が高くなった2階で暖房をつけると、ガレージ空間との温度差により2階床が結露することが稀にあります。それを防ぐために断熱材を入れています。

床、壁、天井にも、断熱材をしっかり施工しています。

冬の寒さが厳しいと言われる京町家ですが、このような対策を行うことで、工事前と比較して室内の温熱環境がずいぶんと良くなります。


◆耐震補強

京町家の元々の木組には金物が使用されておらず、耐震面で不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

リノベーションにあたり、古い部分同士、また古い部分と新しい部分を繋いで補強するために金物を適所に取り付けています。

こちらは柱を抜いた箇所に新たな梁を入れ、既存梁と結束して強度を高めた部分です。

耐震性から見ても、金属である金物は大変有効です。

2階の床組です。
床を形成する主要な構造材を「構造用合板」という厚く強度の高い板材で直接繋ぐことで、剛床(ごうゆか)という耐震性の高い床組になります。

この上に、仕上げの床材(フローリングやコンパネ+フロアータイル)を施工します。
つまり床の厚みは、33~36mmになります。通常は12mmの構造用合板での施工にとどまることも多々あると思いますが、よりご安心いただける施工を心がけています。

blogged by 黒川京子