『 最近の記事 』
前回に引き続き、京都市南区の『子供を育てやすい町家』工事をご紹介していきます。
施主(せしゅ)様【私たち建築者はお客様のことをこのようにお呼びします。】は、三十代のご夫婦と保育園に通われる小さなお子様お一人のご家族。 奥様もお仕事をお持ちです。 またこれからお子様が増えることを想定しての家族計画を立てていらっしゃいます。
共働きのご家庭は、どうしても奥様の負担が絶大です!! その負担を少しでも多く解消するために間取りのプランニングは、重要です。
今回の建築テーマ『子供を育てやすい町家』の課題の1つは、『奥様の家事動線を良くする』です。 朝出勤の時、また帰宅されてからの家事動線を如何(いか)に能率的にプランニングできるか?
その結果、外壁面以外の柱を全て撤去して、水回りを含む全ての間仕切り変更と階段の移動と形状変更、また部分的な増築建て直しが必要になりました。
『子供を育てやすい町家』のその他の課題は、『危険でないこと』『快適に子供と過ごせる空間と癒し』を設定しました。
『危険解消』としては、町家特有の1間(けん)、つまり2mで2階に上がりきる急で踏み面(つら)の狭い階段の解消やキッチンの刃物などに小さなお子様が直接触れられない工夫などを考慮しました。
『快適に子供と過ごせる空間と癒し』としては、最も快適に過ごせる空間にリビングスペースを配置しました。 またお子様が友達と遊べるスペースを1階のリビング以外の空間にプランニングし、そのすぐ外には散水栓と足洗い場を設置。汚れて帰ってきてもそこで綺麗にしてから直接室内に入れるようにしています。 また、町家独特の左右側面に窓が無い、つまり風通しが悪く、暗いという悪条件解消のために、窓と建具の配置を考慮して『風の道』を作り、効果的な位置に天窓を採用しています。 1階の内装仕上げは、和紙や珪藻土の天然素材のクロスを採用し、無垢材と天然素材の塗料で仕上げていきます。
私たち自身が、とても完成が楽しみな内容なのです!!(*^_^*)
下の画像は、解体の模様。
全て手作業による解体です。 解体が進むにつれ、この家の歴史や成り立ち、また問題点などが浮き彫りになってきます。 路地奥にあり、解体廃材や機材の搬出入はなかなかの大仕事でした。 解体に従事してくれた職人の皆さん、本当にお疲れさまでした!!m(__)m

天井と二階の床を解体撤去しています。

土間のキッチンスペースから玄関土間部

建物奥から表側を撮影。ここに映っている柱は全て撤去となります。

1間(けん)上がりの急で踏面(ふみづら)の狭い既存階段。移動し、上がりやすい階段にリフォームします。

2階天井を撤去した映像です。つまり屋根の裏側です。

屋根を瓦を撤去した状態です。空が見えてますね!!

二階に梁。細く心もとない感じですね。補強必要箇所です。

玄関から見た流し台、奥のWCスペース
Blogged by 松山 一磨(いつま)
2012年9月22日 11:35 AM |
カテゴリー:子供を育てやすい町家 VOL.2 |
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7月27日から京都市南区で町家工事に着工させていただいています。この古民家は路地奥に在(あ)り、両側面は隙間なく隣家とくっ付くように建っています。南北にある路地の両側に抜けている間口が狭く奥行きのあるいわば、うなぎの寝床的スタイルの京都の典型的な町家です。 施主様と初めてお会いした日、この物件を見せて頂いた時のことをはっきりと覚えています。
プランナーと二人で、『ぜひこの町家の改修をさせて頂きたい!』と心から強く感じました。
まさに京都の典型的な町家のスタイルであること。 現況から見て、その顔を “べっぴんさん” にお化粧できると直感したこと。 そしてお客様のご要望が、『子供を育てやすい安全な家』『町家スタイル』と、とても明確であったこと。 建築のコンセプトが明確であればあるほど、良いプランニングが可能です。
とても楽しくプランニングさせて頂き、ご発注を頂いた時の喜びはひとしおでした!!
さて以下は、着工前のいわば現況写真です。
現在は、解体工事が終わり、構造躯体(くたい)工事の真っ只中!! これから工事の進展の様子を逐次お伝えして参ります。
工事が大規模なため、長いブログになりそうです。 どうぞよろしくお願い申し上げます。m(__)m

南側路地に面した建物正面の顔。 “べっぴんさん”に変身できると直感!! 2階に在る鉄製の花台も十分再利用可能はデザイン性優れたパーツです!!

北面裏側は1階部分に浴室、WCを増築されていますが、ご覧のように屋根は鉄板波板で簡易な施工で〝とりあえず的に造られた感じが窺(うかが)えます。

玄関から見た玄関土間と流し台。建築当初の形がありありと窺(うかが)える部分です。この流し台のところに“おくどさん(かまど)”が有りそのk上部は吹抜けになっていたのでしょう・・・。流し台手前左側のベンガラ色の格子戸がその時の雰囲気を伝えてくれます!!

おそらく奥の建具の向こうは、裏庭だったと思われます。現在は浴室とWCが増築してあります。

増築された洗面上部の天井。波板造りです。両側面に窓が無く、奥が深い京都の町家は、どうしても室内が暗くなります。断熱性と耐久性こそありませんが、光を取り込む一つの選択だったのだと思います。

増築で造られた浴室。情緒や見栄(みば)えより便利さや機能性が重視された時代の改装形式なのでしょうか?本来あった町家の体(てい)が、全否定されています。

僅(わず)か1間半(2.7m)の間口でさらに部屋を細切(こまぎ)れに間仕切られています。室内がさらに暗くなり、風の通り道がありません。

階段とその下の押入れ。ただしこの建物を当初は平屋建てだったと思われます。2階は増築されています。解体後に柱など構造体の状況で、その様子がよく分かります。

1間(1.8m)で上がりきる急な階段です。今の基準では“危険な”階段になってしまいます。

2階廊下です。南北の空間を分断?!する東西方向の廊下。

南側の空間は、さらに2部屋に間仕切られています。

北側洋室です。昭和40年頃の日本の典型的なスタイルの一つです。

地面は乾燥しており、良好です。シロアリ被害もありません。ただし構造材、床板は全て交換します。

思いの外、床下の状態が良く、ホッとしました!!(^。^)
Blogged by 松山 一磨(いつま)
2012年9月17日 6:22 AM |
カテゴリー:子供を育てやすい町家 VOL.1 |
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全編6回に渡る『京都市北区町家改修ブログ』もいよいよ今回が完成最終編となりました!!
ブログを綴(つづ)っている私自身が、このブログを通して、私たちの会社や私たち自身の思いなど、気づくことが多くあり、ちょっとビックリした次第です。 このような機会を与えて下さった、今回この工事の施主様である橋本様ご主人様、並びにご家族様に、心から深くお礼申し上げます。
誠に有り難うございます。
さて、以下はその完成写真です。
この工事は、施主様の熱く真剣なご要望を形にしたことと同時に、僭越(せんえつ)ではございますが、デザインしたプランナー新造さんとそれを形にすべく施工にあたった弊社協力業者さん達のまさに精一杯の結晶でもあります。
1ケ月以上に及ぶ工事の間、終始にこやかに暖かく見守るように接してくださった施主ご主人様、お母様、奥様、ご長男様に最後に重ねてお礼申し上げます。
ほんとうに有り難うございます。 またまだまだ至らない私どもでは御座いますが、どうぞ末永いご贔屓の程を心からお願い申し上げます。
吟優舎 松山 一磨(いつま)

夕暮れ時の完成外観。外構(がいこう)土間は、駐車場スペースと玄関アプローチ、その他の3箇所で素材を変えてデザインしました。

解体した歌舞伎門に在(あ)った丸い外灯をリフォームして勝手口に設置。メイン玄関には四角のステンドグラス外灯を設置。丸い外灯と暖簾(のれん)の丸いデザインがマッチしてなんとも嬉しいかぎりです!!

左側隣家との境界に在(あ)ったブロック塀は、“京あぜくら”という塗壁で仕上げました。 また二階のルーバー窓を格子で隠し、簾(すだれ)を交換しています。

出格子の建具は、既存の外壁、木部との調和を考えて、古色の木目出しの塗装を施しました。メイン玄関外灯はステンドグラスの外灯を採用。点灯するとステンドグラスのグリーン色が壁面にほのかに反映されます。

出格子の内観です。硝子(がらす)に写るシルエットがなんとも京都らしく情緒感たっぷりです?! いかがでしょうか?

外構土間は、石にこだわってデザインしています。墨入り土間コンクリートに角形鉄平石。アプローチには粗肌色御影石。その他土間と巾木には、粒石の洗い出し。 10年後、20年後の変化が楽しみな素材です。

玄関敷居は、粒石洗い出しで製作。土間の御影石のむっくり感は私のお気に入りのイメージです。施主様とご一緒に石屋さんへ赴(おもむ)いて選んだ御影石。 施主様と共にこだわった結果の仕上がりです。

フローリングは、フランスボルドー製の“なぐり加工”のパイン(松)材を採用しています。この個性豊かな表情と存在感は、他のフローリングではなかなか出せません。施主様お気に入りの素材です。また框もそれに合わせて“松材”で製作。印刷加工の建材では表現できない無垢材の落ち着きと情緒があるように思います。

文様(もんよう)、和紙、印刷色を全て選べるオリジナル唐紙(からかみ)で製作した襖(ふすま)とアンティーク建具です。弊社がご提案する特徴的デザインの素材です。町家改修に自然に馴染(なじ)むデザイン素材ではないでしょか?またその間にある柱は、弊社スタッフの植村が1日がかりで既存柱を磨いて補正再生したものです。

天井は、四角枠に桟木を造作して色の違う和紙調クロスを施工しています。写真では分かり難(にく)いのですが、ダウンライトの縁(ふち)も施主様の手でクロスの色に合わせて着色されています。

出格子出窓台の素材は下駄箱と同じものを採用。とっても個性的で雰囲気のある木肌柄です。壁面クロスは和紙クロスを採用しています。紙と木、自然な素材の癒(いや)しを感じます。

ようやく完成です。 施主様、住まわれながらの長期の工事。本当にしんどい期間だったはず。そんな素振(そぶ)りは、終始かけらも見せず、毎朝笑顔で迎えてくださったこと、心からお礼申し上げます。 誠に有り難うございました。
2012年9月16日 6:20 AM |
カテゴリー:出格子町家 VOL.6 |
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さて京都市北区町家改修、いよいよ化粧(仕上げ)に入っていきます。
建築工事は、大きく二つの部分に分類することできるかもしれません。
1つは、構造躯体(くたい)、いわゆるフレームとなる部分です。 これは間取りに大きく影響しますし、また建物自体の強度、安全性に大きく影響する部分です。
もう1つは、化粧(けしょう)と私たち建築専門家は表現するのですが、つまり仕上げ、いわゆるデザインとなる見栄え(みばえ)に関する部分です。 これは、人で例えるなら、『どんな衣服を着て行こうか?』 『どんな靴を履こうか?』 『どんな髪型が、この服に合うかな?』 『どんな鞄(かばん)が、良いかな?』 という感じの事柄にあたります。
構造躯体(くたい)は、地震が頻発に発生する昨今では、最重要課題です。 しかしながら近年、これを軽視して“手抜き”または“素人的技量、不勉強”と言っても過言でない施工で終わらせているケースを見聞きすることが増えてきているように感じています。 とりわけ新築と違って、公的検査のないリフォーム工事では、より多く見受けられます。
もう1つの化粧・デザインですが、これはどうでしょうか?
私の主観になりますが、多くの建築会社は、このデザインを『軽視』しているのか、はたまた『苦手』なように感じられてなりません。 化粧・デザインは、毎日の生活の中で常に目に付く部分です。 バランスが良く、美しい色彩や形は、見る人の精神にストレートに良い影響を与えてくれます。
弊社では、この化粧・デザインは、専門家のプランナーが設計・ご提案します。
これは、専門家でないと無理な部分だと思っています。 お客様のご要望をヒヤリング(お聞き)して、専門のプランナー、ある意味デザイナーが、設計するという方式でプランニングを行います。
弊社では、構造躯体(くたい)と化粧・デザインは、自転車の前後の両輪だと認識しています。 いずれが欠けても前には進みません。 デザインのために安全性を犠牲にすることは有り得ませんし、また安全性のためにデザインを犠牲にすることも有り得ません。
『構造躯体(くたい)の安全性』と『化粧・デザインの美しさ』が揃っていることが、プランニングの条件だと考えています。 はずかしながら、弊社の施工した建築が全てその二つ、とりわけ『化粧・デザイン』において、そうなっているかと言われれば、そうではないかもしれません。 ただ、そうなくてはいけないという思いでプランニングをしていることに、偽(いつわ)りはありません。
ちょっと堅苦しい話しになってしまいました!
では、以下はその『化粧・デザイン』の施工途中の映像です!!

アプローチの御影(みかげ)石の施工。この御影石、お客様とご一緒に現物を見学して選んだものです。『色』『石肌』『サイズ』にとことんこだわりました。

6月2日のブログにありますが、祇園の出格子を全て見て回った結果に製作した出格子建具です!!美しい仕上りだと自画自賛の私達です!?

玄関建具は、太さの異なった縦格子をランダムに並べたデザインにすりガラスをはめ込みました。この縦格子が『かまぼこ型』に加工してあるのがお分かりいただけるでしょうか?

土間にコンクリートを打つ前にデザインの石を埋め込みます。ご提案した2つのデザインからお客様が選ばれたのがこのデザインです。

天井の木組枠です。この中に『市松』デザインで異なった色の和紙調クロスを貼っていきます。結構手間のかかる作業なのです・・・!!
Blogged by 松山 一磨(いつま)
2012年9月13日 7:58 AM |
カテゴリー:出格子町家 VOL.5 |
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床下の補強を行いました。前回のブログでお伝えしたように、この年代の伝統工法で建築された家は基礎がなく、床から上の構造に比べて床下の構造が弱いケースが多く見受けられます。前回ブログで解体後の床下の状況がご確認いただけますが、こちらも例外ではありませんでした。今回はその改修 補強に『根がらみ工法』を採用しました。『根がらみ工法』とは、床下で独立して存在する柱を厚みのある木材で繋(つな)ぐというものです。金物はビスでなく、柱や梁の連結に使う頑強なコーチスクリューボルトを採用しています。次に下が腐食した柱は、腐食部分を除去して新たに柱を根接ぎしました。この際、下からの水に干渉しないように、その柱の下に小さな独立基礎を作り、上げています。
また、下がり傾いていた勝手口庇屋根は、その根元を胴と言われる構造材に繋ぎ補強した上で、ジャッキアップ(文字通り ジャッキで上げて柱を入れ直す作業)を行いました。
ただ単に綺麗にするという工事でなく、町家の工事ではこのような補強補修工事がとても重要なポイントとなります。

床下で独立している基礎を厚みのある木材で連結します。 とても有効な補強工法の一つです。

柱と補強材を留める金物は、ビスではなく構造用のコーチスクリューボルトを採用します。

柱の腐食した部分を除去し、差し替えました。最下部は水を吸い上げなないように独立基礎で上げています。継ぎ足した木材と既存柱の木目を合わせているのが分かっていただけるでしょうか?!

下がった庇を補正するため、ジャッキで上げて柱を入れ替えます。また弱った接合部の補強のため、建物本体の構造材に補強接合しています。

撤去した歌舞伎門に当初から有った、とってもアンティークな外灯です。初めて拝見した時から再生再利用をしたいと思っていました!!

お客様は箔の専門家です。弊社で補強溶接してお客様が塗装のコラボ再生作業!!見事に復活ですヽ(^。^)ノ

塗装は町家工事の要(かなめ)の作業です。 私たちがその塗装作業で最も信頼し、頼りにしている人。その真っ直ぐな気性と真面目さは、国宝級?!です。

サイズカット、補強して設置完了!!次に、すりガラスを装着して、全体を塗装し直します。そして金物の取り付け。アンティークの建具の再生はなかなか手間の掛かる作業なのです!(^_^.)
Blogged by 松山 一磨(いつま)
2012年9月5日 11:05 AM |
カテゴリー:出格子町家 VOL.4 |
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