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京都市北区『出格子の町家』に改修 完成です!!

全編6回に渡る『京都市北区町家改修ブログ』もいよいよ今回が完成最終編となりました!!

ブログを綴(つづ)っている私自身が、このブログを通して、私たちの会社や私たち自身の思いなど、気づくことが多くあり、ちょっとビックリした次第です。 このような機会を与えて下さった、今回この工事の施主様である橋本様ご主人様、並びにご家族様に、心から深くお礼申し上げます。

誠に有り難うございます。

さて、以下はその完成写真です。

この工事は、施主様の熱く真剣なご要望を形にしたことと同時に、僭越(せんえつ)ではございますが、デザインしたプランナー新造さんとそれを形にすべく施工にあたった弊社協力業者さん達のまさに精一杯の結晶でもあります。

1ケ月以上に及ぶ工事の間、終始にこやかに暖かく見守るように接してくださった施主ご主人様、お母様、奥様、ご長男様に最後に重ねてお礼申し上げます。

ほんとうに有り難うございます。 またまだまだ至らない私どもでは御座いますが、どうぞ末永いご贔屓の程を心からお願い申し上げます。

吟優舎 松山 一磨(いつま)

夕暮れ時の完成外観。外構(がいこう)土間は、駐車場スペースと玄関アプローチ、その他の3箇所で素材を変えてデザインしました。

解体した歌舞伎門に在(あ)った丸い外灯をリフォームして勝手口に設置。メイン玄関には四角のステンドグラス外灯を設置。丸い外灯と暖簾(のれん)の丸いデザインがマッチしてなんとも嬉しいかぎりです!!

左側隣家との境界に在(あ)ったブロック塀は、“京あぜくら”という塗壁で仕上げました。 また二階のルーバー窓を格子で隠し、簾(すだれ)を交換しています。

出格子の建具は、既存の外壁、木部との調和を考えて、古色の木目出しの塗装を施しました。メイン玄関外灯はステンドグラスの外灯を採用。点灯するとステンドグラスのグリーン色が壁面にほのかに反映されます。

出格子の内観です。硝子(がらす)に写るシルエットがなんとも京都らしく情緒感たっぷりです?!  いかがでしょうか?

外構土間は、石にこだわってデザインしています。墨入り土間コンクリートに角形鉄平石。アプローチには粗肌色御影石。その他土間と巾木には、粒石の洗い出し。 10年後、20年後の変化が楽しみな素材です。

玄関敷居は、粒石洗い出しで製作。土間の御影石のむっくり感は私のお気に入りのイメージです。施主様とご一緒に石屋さんへ赴(おもむ)いて選んだ御影石。 施主様と共にこだわった結果の仕上がりです。

フローリングは、フランスボルドー製の“なぐり加工”のパイン(松)材を採用しています。この個性豊かな表情と存在感は、他のフローリングではなかなか出せません。施主様お気に入りの素材です。また框もそれに合わせて“松材”で製作。印刷加工の建材では表現できない無垢材の落ち着きと情緒があるように思います。

文様(もんよう)、和紙、印刷色を全て選べるオリジナル唐紙(からかみ)で製作した襖(ふすま)とアンティーク建具です。弊社がご提案する特徴的デザインの素材です。町家改修に自然に馴染(なじ)むデザイン素材ではないでしょか?またその間にある柱は、弊社スタッフの植村が1日がかりで既存柱を磨いて補正再生したものです。

天井は、四角枠に桟木を造作して色の違う和紙調クロスを施工しています。写真では分かり難(にく)いのですが、ダウンライトの縁(ふち)も施主様の手でクロスの色に合わせて着色されています。

出格子出窓台の素材は下駄箱と同じものを採用。とっても個性的で雰囲気のある木肌柄です。壁面クロスは和紙クロスを採用しています。紙と木、自然な素材の癒(いや)しを感じます。

 

ようやく完成です。 施主様、住まわれながらの長期の工事。本当にしんどい期間だったはず。そんな素振(そぶ)りは、終始かけらも見せず、毎朝笑顔で迎えてくださったこと、心からお礼申し上げます。 誠に有り難うございました。

京都市北区『出格子の町家』に改修 VOL.5

さて京都市北区町家改修、いよいよ化粧(仕上げ)に入っていきます。

建築工事は、大きく二つの部分に分類することできるかもしれません。

1つは、構造躯体(くたい)、いわゆるフレームとなる部分です。 これは間取りに大きく影響しますし、また建物自体の強度、安全性に大きく影響する部分です。

もう1つは、化粧(けしょう)と私たち建築専門家は表現するのですが、つまり仕上げ、いわゆるデザインとなる見栄え(みばえ)に関する部分です。 これは、人で例えるなら、『どんな衣服を着て行こうか?』 『どんな靴を履こうか?』 『どんな髪型が、この服に合うかな?』 『どんな鞄(かばん)が、良いかな?』 という感じの事柄にあたります。

構造躯体(くたい)は、地震が頻発に発生する昨今では、最重要課題です。 しかしながら近年、これを軽視して“手抜き”または“素人的技量、不勉強”と言っても過言でない施工で終わらせているケースを見聞きすることが増えてきているように感じています。 とりわけ新築と違って、公的検査のないリフォーム工事では、より多く見受けられます。

もう1つの化粧・デザインですが、これはどうでしょうか?

私の主観になりますが、多くの建築会社は、このデザインを『軽視』しているのか、はたまた『苦手』なように感じられてなりません。 化粧・デザインは、毎日の生活の中で常に目に付く部分です。 バランスが良く、美しい色彩や形は、見る人の精神にストレートに良い影響を与えてくれます。

弊社では、この化粧・デザインは、専門家のプランナーが設計・ご提案します。

これは、専門家でないと無理な部分だと思っています。 お客様のご要望をヒヤリング(お聞き)して、専門のプランナー、ある意味デザイナーが、設計するという方式でプランニングを行います。

弊社では、構造躯体(くたい)と化粧・デザインは、自転車の前後の両輪だと認識しています。 いずれが欠けても前には進みません。 デザインのために安全性を犠牲にすることは有り得ませんし、また安全性のためにデザインを犠牲にすることも有り得ません。

『構造躯体(くたい)の安全性』と『化粧・デザインの美しさ』が揃っていることが、プランニングの条件だと考えています。 はずかしながら、弊社の施工した建築が全てその二つ、とりわけ『化粧・デザイン』において、そうなっているかと言われれば、そうではないかもしれません。 ただ、そうなくてはいけないという思いでプランニングをしていることに、偽(いつわ)りはありません。

ちょっと堅苦しい話しになってしまいました!

では、以下はその『化粧・デザイン』の施工途中の映像です!!

 

アプローチの御影(みかげ)石の施工。この御影石、お客様とご一緒に現物を見学して選んだものです。『色』『石肌』『サイズ』にとことんこだわりました。

 

6月2日のブログにありますが、祇園の出格子を全て見て回った結果に製作した出格子建具です!!美しい仕上りだと自画自賛の私達です!?

 

玄関建具は、太さの異なった縦格子をランダムに並べたデザインにすりガラスをはめ込みました。この縦格子が『かまぼこ型』に加工してあるのがお分かりいただけるでしょうか?

 

土間にコンクリートを打つ前にデザインの石を埋め込みます。ご提案した2つのデザインからお客様が選ばれたのがこのデザインです。

 

天井の木組枠です。この中に『市松』デザインで異なった色の和紙調クロスを貼っていきます。結構手間のかかる作業なのです・・・!!

 

Blogged by  松山 一磨(いつま)

京都市北区『出格子の町家』に改修 VOL.4

床下の補強を行いました。前回のブログでお伝えしたように、この年代の伝統工法で建築された家は基礎がなく、床から上の構造に比べて床下の構造が弱いケースが多く見受けられます。前回ブログで解体後の床下の状況がご確認いただけますが、こちらも例外ではありませんでした。今回はその改修 補強に『根がらみ工法』を採用しました。『根がらみ工法』とは、床下で独立して存在する柱を厚みのある木材で繋(つな)ぐというものです。金物はビスでなく、柱や梁の連結に使う頑強なコーチスクリューボルトを採用しています。次に下が腐食した柱は、腐食部分を除去して新たに柱を根接ぎしました。この際、下からの水に干渉しないように、その柱の下に小さな独立基礎を作り、上げています。
また、下がり傾いていた勝手口庇屋根は、その根元を胴と言われる構造材に繋ぎ補強した上で、ジャッキアップ(文字通り ジャッキで上げて柱を入れ直す作業)を行いました。

ただ単に綺麗にするという工事でなく、町家の工事ではこのような補強補修工事がとても重要なポイントとなります。

 

床下で独立している基礎を厚みのある木材で連結します。 とても有効な補強工法の一つです。

 

柱と補強材を留める金物は、ビスではなく構造用のコーチスクリューボルトを採用します。

 

柱の腐食した部分を除去し、差し替えました。最下部は水を吸い上げなないように独立基礎で上げています。継ぎ足した木材と既存柱の木目を合わせているのが分かっていただけるでしょうか?!

 

下がった庇を補正するため、ジャッキで上げて柱を入れ替えます。また弱った接合部の補強のため、建物本体の構造材に補強接合しています。

 

撤去した歌舞伎門に当初から有った、とってもアンティークな外灯です。初めて拝見した時から再生再利用をしたいと思っていました!!

 

お客様は箔の専門家です。弊社で補強溶接してお客様が塗装のコラボ再生作業!!見事に復活ですヽ(^。^)ノ

 

 

 

塗装は町家工事の要(かなめ)の作業です。 私たちがその塗装作業で最も信頼し、頼りにしている人。その真っ直ぐな気性と真面目さは、国宝級?!です。

 

サイズカット、補強して設置完了!!次に、すりガラスを装着して、全体を塗装し直します。そして金物の取り付け。アンティークの建具の再生はなかなか手間の掛かる作業なのです!(^_^.)

 

Blogged by  松山 一磨(いつま)

 

 

京都市北区『出格子の町家』に改修 VOL.3

このブログは、一つ前のブログ『京都市北区町家改修 VOL.2』からの続きとなります。

まずそちらをご覧頂いてからの方が、分かり易いと思います!!<m(__)m>

 

今回の工事の管理監督は私、松山が、 そのサブ管理監督として前田が参戦!?解体工事が伴うリフォームは女性にはなかなか難しい内容です。ただお客様にとっては、何かと話し易いというのは、女性の管理者の良い点だと思います。忙しく又、遠慮なく『ああだこうだ』と私に振り回された一番の被害者です?!

 

弊社大工の小林(右)と応援大工の大沢さん(左)。規模こそ小さいものの難しい木(大工)工事が満載のこの工事。小林が最も適任と思い担当大工としました。

 

地中梁的に地面に這(は)わしてある木材と床組を支える大引。いずれもシロアリの被害があります。残念ですが、『安全』と言える状態ではありません。

 

上の写真の拡大写真

 

伝統工法の壁面。まさに土と竹と木材で造られた壁面です!!

 

Blogged by  松山 一磨(いつま)

京都市北区『出格子の町家』に改修 VOL.2

しばらくの間、ブログが止まっており、誠に申し訳ございませんでした。m(__)m

多くの方々から『ブログ見ようとパソコン見てるのに止まっているね!!』『更新してください!!』などなど数々のメールを頂き、嬉しいやら、焦るやらで・・・・(^_^;)

6月の半ばから絶え間のないの着工が続き、その調整に追われておりました。8月いっぱいでほぼ落ち着くのですが、とにかく皆様の応援にもお応えすべく、最近の工事の様子と私たちの近況のご報告を兼ねて、ブログ更新してまいります。m(__)m

ご報告すべき内容が多いため、数回に分けてブログを更新してまいります。

 

では、さっそく・・・

前回ブログ

『京都市北区の〝威風堂々たる町家″の改修工事の着工と解体』まではブログにてご覧になれます。 今回はその続きをご報告いたします。

ご一緒にお仕事をさせて頂きこれほどまでに楽しく、気持ちの良い方はいないと言ってもけっして過言ではないお客様です。とてもセンスが良く、良いものを作りたいという強い思いを持っておられます。またご家族全員でその思いを共有されているので、素材や色などの『好み』が出る選定においても、スムーズに進んでいきます。これはもちろん、仲の良いご家族だからこそできることでもあるのですが・・・。

今回はこの工事に携わった弊社の協力業者の紹介と解体後の状況を説明したいと思います。

工務店は実に多くの職人を集めて一つの家を造っています。

いわば〝 職人集団 ″ です。 ( 私たち、結構この言葉が好きなのです・・・)(*^_^*)

建築内容によって変わりますが、その数は15から20にのぼります。これだけの業種の職人を集めて一つのものを造る建築は、高度な専門職であり、技術と経験が必要な仕事だと思っています。そういう意味において、他の業種の取引業者とはまた違った関係性が工務店とその協力業者(専門の職人さん達)にはあるように感じます。同じ会社の同僚ではありませんが、それに近い関係性がありますし、割り切りでない前向きな協力の姿勢なくしては、良いものは決して出来上がりません。また、一部を省いて、多くの協力業者が、会社組織ではなく、理屈より気持ちで動いてくれる職人さんであるということもその関係を作っているようです。 さてそんな弊社の協力業者の職人さんと弊社スタッフを下の写真にてご紹介させて頂きます。

おおよそ80年前後が経過した町家です。解体すると勿論この年式の建物なので基礎はありません。当然のことかもしれませんが、白蟻(シロアリ)による被害もあります。いわゆる伝統工法といわれるこの年式の古民家を解体すると概(おおむ)ね共通していることが、梁(はり)や柱、天井裏の構造体の頑強(がんきょう)さに比べて床下が華奢(きゃしゃ)であるということ。そのために頭でっかちなアンバランスな、いわゆる地震に弱い家の構造になっています。

今回は家全体でなく一部分の改修工事ですが、その箇所においては、床下の補強も行いました。

デザインと機能、構造耐力は、どれも重要です。そのどれが欠けてもいけないと考えます。このデザインのためにここが弱くなるということでは、工事は行えません。プロである以上は、この3つの調和が取れるご提案をすべきだと思っています。

さてこの京都市北区の町家の工事、既に工事は竣工しています。また、上の3つのバランスも取れていると思います。 ぜひご覧いただいて、ご検証ください。

 

電気工事の毛利(もうり)さん その誠実さと優しさは誰にも真似のできない人。 いつも回りの人を気遣ってくれるその姿勢に頭が上がりません。

 

 

解体工事業者『ヨウケン』の青木さん きっちり解体・きっちり養生・きっちり掃除 三拍子揃った頼れる解体集団です。 この笑顔が現場には大切なのです!!(*^。^*) 

 

左官工事の須崎さん 温厚と協調の人。もう10年以上のお付き合いです。弊社の工事は難しいことが多く、職人さんにとっては、とても『やり難い』工務店です。とりわけこの工事は、石と左官の工事が多く難易度は『極高』でした。

 

Blogged by  松山 一磨(いつま)