『 最近の記事 』

京町家コラム【嫁隠し】

京町家には、今の住宅にはないユニークな工夫がたくさんあります。
今回は、現場からその一例をご紹介します。

こちらは、町家の玄関から奥までを貫く土間、通り庭です。
奥の方の通り庭は、主婦たちが忙しく立ち働くことから「ハシリ」とも呼ばれます。

※解体前の町家の通り庭

通り庭の中ほどに、見つけました。
「嫁隠し」の跡。

嫁隠しとは、一種の衝立(ついたて)のこと。
来客に家の奥を直接見せないようにする工夫のひとつです。

名前の由来は「客から嫁の姿を隠すため」とされていますが、機能はそれだけではありません。

接客や商売をする「表の間」。
そして家族が過ごす「プライベート空間」の境界としての役割
もありました。

酒屋さんやお米屋さんなどの御用聞き、使用人など、さまざまな人が出入りする京町家では、この嫁隠しの前で家人に声をかけ、許可を得てから奥へ入ることができました。

また、家の人にとっては、客に顔を見せる前に身だしなみを整える、ちょっとしたスペースとしても活用されていたようです。

嫁隠しなど珍しい意匠については、こちらの記事もご覧ください。

嫁隠しのある
『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.1

blogged by 黒川京子

お客様の声<京都市山科区 H様>

お客様が、ご依頼の経緯や施工の感想をお書きくださいましたので、ご紹介いたします。

【京都市山科区 H様より】

築28年の中古マンションを購入し、町家・古民家再生で定評のある吟優舎さんにリフォームをお願いしました。

当初は、マンションの仲介業者から紹介された業者に依頼する予定でした。しかし、以前、私の友人が町家のリノベーションを吟優舎さんに依頼し、とても素敵な住まいに再生されたことを思い出し、ご紹介いただきました。

所長さんをはじめ、スタッフの皆様は、初めてお会いした時からアットホームな雰囲気で、住む人の「心地よい暮らし」を第一に考えたリフォームを提案してくださいました。

そのお人柄にも心惹かれました。見積もりの段階から施工前の打ち合わせ、さらにはリフォーム中も、何度もこちらの要望を懇切丁寧に聞き取ってくださり、限られた予算の中で最大限の提案をしてくださいました。専門家としての的確なアドバイスと抜群のセンスのおかげで、想像以上に満足のいく仕上がりになりました。

玄関から廊下、ダイニング・リビングへと続く壁紙は珪藻土のものを採用し、既存のフローリングと新調したフローリングに合わせて色を変え、部屋の雰囲気に調和する仕上がりに。
唐紙のふすまや和紙の畳、自然を感じられながらも耐久性のあるフローリングなど、吟優舎さんならではのこだわりが、日々の暮らしを豊かにしてくれています。

特に気に入っているのは、洋室のクローゼットとダイニングの収納です。購入時は収納が少なく悩んでいましたが、吟優舎さんが設計してくださった収納は、機能性・デザインともに素晴らしく、部屋の雰囲気とも見事に調和しています。

また、キッチンは当初2方向に出入り口があり、食器棚の配置が難しかったのですが、廊下側に壁を設けて出入り口を一つにすることで、使い勝手のよい空間になりました。

キッチン・浴室はメーカーの既製品を使用していますが、吟優舎さんの提案による色の組み合わせで、高級感のある仕上がりに。浴室とトイレの壁紙は昭和レトロな風合いで、落ち着いた雰囲気を演出しています。

職人の皆様には、猛暑の中での作業にもかかわらず、細部まで丁寧に仕上げていただき、感激いたしました。

おかげさまで、家族全員が毎日心地よく過ごしており、感謝の気持ちでいっぱいです。これからも大切に住まわせていただきます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

H様からのお声をご紹介しました。

今回はマンションリフォームの機会をいただき、さらにはこのようなメッセージをくださいましたこと、大変感謝しております。

お客様に感動していただくことを目標に、今後も社員全員で日々の仕事を大切にしてまいります。 誠にありがとうございます。

blogged by 松山一磨 & 黒川京子

京都市山科区『旧東海道のマンションリノベーション』vol.2

京都山科、旧東海道沿いの築30年ほどのマンション。
年月を重ねたその一室に、新たな命を吹き込むリノベーション工事を承りました。
そして今回、その完成編を皆様にお届けします。

前回のお話はこちら→ vol.1



◆玄関からリビングのクロス

玄関から廊下、リビングダイニングにかけては珪藻土(けいそうど)クロスを使用。

珪藻土クロスは、天然の調湿性と消臭効果で注目を集める「珪藻土」を壁紙状にしたもの。
優れた機能性で人気が年々高まっている内装材です。

落ち着いた自然の風合が魅力的。
心安らぐ、優しい雰囲気が感じられます。



◆クローゼット

リノベーション前のクローゼット
リノベーション前のクローゼット
施行中
完成したクローゼット

「購入時は収納が少なく悩んでいた」と施主様がおっしゃっていた部分です。
プランニングによって、収納力とデザイン性を両立した空間に生まれ変わりました。



◆リビング

玄関から続く珪藻土クロスと、新しいフローリング、そしてデザイン性の高い照明を採用し、リビングの雰囲気が大きく変化。

統一感のあるデザインが、空間全体に広がりを与えています。



◆和室

リビングに続く和室です。 壁の和紙クロス、新しくなった畳敷きと襖の効果で、静かで上品な空間へ。
畳の一部にフローリングの異素材をデザインすることで、コントラストを生み出し、奥行きと立体感を演出しています。



◆水回り

当初より「水回りの老朽化が気になる」とおっしゃっていた施主様。

キッチン、洗面、浴室、トイレ回りには新しい設備を入れたことで、すっきりと美しくなり、また使いやすさがアップしました。



旧東海道沿いの築 30 年マンションのリノベーションが完了いたしました。

洗練されたデザインと快適な居住空間の調和を追求し、施主様の理想のお住い作りに携われましたこと、大変嬉しく思っております。 この度、吟優舎にご依頼くださった施主様には、厚く御礼申し上げます。

引き続き末永い御贔屓の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

blogged by 松山一磨 & 黒川京子

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.6

京都市上京区西陣の京町家リノベーション。完結編(後編)をお届けします。



「実際に住んでいる町家にお客様をお迎えし、アットホームなおもてなしを」。 施主様が長年温めてこられたコンセプトの下に、観光・食事・鑑賞が楽しめるプライベート空間「あそんでいきなはれKYOTO」として生まれ変わりました。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5

前回vol.5では、おもてなしの中心となる華やかな「ダイニングキッチン」をご紹介しました。

その奥に広がるのは、京町家らしい座敷と緑鮮やかなお庭の景色です。

BEFORE
AFTER
AFTER

庭に面した開口は、できるだけ広く取ることで、最大限の視界と光、風を取り込んでいます。

座敷は、おもてなしの場として、また舞妓さんや芸妓さんを招いてのお座敷遊びにも使われます。

掘り炬燵を設置した座敷

床には設備を入れていますので、畳を一部上げれば掘り炬燵としても使用できます。

施工過程

座敷と縁側の境の欄間には「黒竹(くろちく)の欄間」を採用しました。

黒竹とは竹の一種で、古くから建材や工芸品などに利用されてきた、素材本来の黒色が人気の素材です。

2mほどの黒竹のうち、最も細い先端30cmだけを選び抜きます。
それを職人の手で「一・二・三(ひふみ)」の間隔で並べていきます。

先端以外の太い部分は、あえて使用しません。
太い部分が入るとどうしても繊細さに欠けてしまうためです。より美しい意匠を求めるが故のこだわりです。

黒竹の後ろには、曇り調のカッティングをグラデーション状に施したガラスを嵌めています。黒竹の欄間を引き立てるとともに、美しい化粧を施した縁側の軒裏が、室内からも見えるようにしています。

最後に、庭についてもお伝えします。

吟優舎の町家リノベーションにおいての造園は、設計のコアとなる重要な部分です。

植栽はもちろん、灯籠や蹲(つくばい)、手水鉢(ちょうずばち)、石の一つまで自社で取り揃え、自社でプランニングし、専門の造園職人さんと一緒に作庭しています。


BEFORE
AFTER

こちらの造園では、施主様がご先祖様から大切に受け継がれてきた庭石が最も美しく見えるよう、専門の職人さんと共に作庭いたしました。

築100年を超える京町家のリノベーション。

弊社としても多くのチャレンジがありながらも、お客様の温かいご協力のもと、ついに完成することができました。

離れに住まわれながらの工事は、大変なご苦労であったことと思います。
終始温かくまた忍耐を持ってご対応下さった施主様には、心より深くお礼申し上げます。 誠に有難う御座います。

引き続き末永い御贔屓の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

blogged by 松山一磨 & 黒川京子


歴史的意匠建造物のプライベート空間、贅沢で優雅な「あそんでいきなはれKYOTO」様。 舞妓さんとのお座敷遊び体験など、非日常な京都時間を楽しめる場所となっています。詳しくはホームページをご覧ください。

『あそんでいきなはれKYOTO』様のホームページはこちらをクリック

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.5

2002年(平成14年)に「歴史的意匠建造物」、2024年(令和6年)には「歴史的風致形成建造物」の指定を受けた、築100年を超える京町家リノベーション。
いよいよ、完成編(前編)をお届けします。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4

「観光・食事・鑑賞」が楽しめるプライベート空間 『あそんでいきなはれKYOTO』として新しく生まれ変わり、玄関横の壁には切文字看板もつけられました。

「おうちへ遊びにおいでよ」というコンセプトを京言葉で表現した店名。
そして施主様自らデザインされたロゴマーク(チューリップとAの文字をイメージ)が、切文字で表現されています。

チューリップの花言葉は「思いやり」、Aはアットホームを表し、アットホームなおもてなしができたらという施主様の思いが込められています。この切文字看板設置も、吟優舎でお手伝いさせていただきました。

BEFORE
AFTER

玄関扉を開ければ土間、その隣の部屋はダイニングキッチンへと再構成。
工事前は畳の四畳半だったため、ずいぶんと印象が変化しました。

建物の外観は趣のある京町家ですが、一旦扉を開けるとおもてなしにふさわしい華やかさが広がります。古さと新しさがマッチしているのではないでしょうか。

vol.4でお伝えした、アイランドキッチンです。
ふだんはご家族のキッチンとして使われていますが、おもてなしの際にはここがお客様との会話の中心に。時には、出張シェフが腕を振るうこともあります。

タイル貼り込み前
タイル貼り込み後

モダンなタイルが目を引くこちらの壁。
棚の板を先に組み込んでいるので、職人がタイルをカットし、繋がっているかのように丁寧に貼り込みました。職人ならではの技が生きています。

BEFORE
AFTER
AFTER

こちらが、ダイニングキッチンの全体です。
瀟酒なダイニングから奥へと視線が広がり、奥庭の緑がアイストップに。

立派なシャンデリアが輝く内装は、施主様のこだわりが結集した部分。全てを新しくするのではなく、残すべき良いものは残し、新しいものとなじむよう磨き上げてから再設置しています。

AFTER

ダイニングキッチンと座敷を分けるのは、 3枚引き戸の京唐紙の襖。その横には、晒竹(さらしたけ)のパーテーションを設置しました。

晒竹(さらしたけ)のパーテーションは、完全に目線を塞ぐのではなく、適度に目線を遮りながらも向こう側が見えるため、奥行きを感じさせることができるポイントとなっています。

ランダムに並ぶ節が美しく、オブジェのような存在感も併せ持ちます。 現代的なインテリアと違和感なく調和しているのではないでしょうか。

今回はここまでのご紹介とさせていただきます。
完成編(後編)をお待ちくださいませ。

blogged by 黒川京子