『 最近の記事 』

加茂街道『賀茂川沿いに佇む京町家リノベーション』vol.5

賀茂川のせせらぎ。
街路樹を渡っていく、やわらかな風の音。
穏やかな環境で、京町家のリノベーション工事が進んでいます。

今回は、数ある設えの中でも、特に施主様の想いが色濃く映し出された部分をご紹介いたします。

前回のお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4



心に留まっていた 町家の壁

施主様が街中で目に留められた、町家の壁色。
そのお写真を手がかりに、今回の外壁の色を検討しました。

塗り替え前の壁の色
塗り替え後の壁の色

茶を基調としながら、どこか赤みを含んだ色調。木部とよく調和し、やわらかな華やぎを感じさせる色合いになりました。

完成した外観

外壁の仕上げには、化粧漆喰とも呼ばれるスタッコ塗装を採用しました。やや細かな粒子を選び、光を受けるたびに陰影が生まれる、奥行きのある表情に仕上がっています。

色味や質感は、必ずサンプルを作成し、実際に触れながら、自然光の下での見え方を確かめていきました。納得できるまで、施主様と一つひとつ確かめながら決定しています。

実際に作成したサンプル

完成後、施主様からは「外壁の色、イメージしていたのとぴったりです」とのお言葉をいただきました。

毎朝この町家の前を通りかかるスタッフからは「スモークピンク系の壁色と木材の色味がよく調和していて、周りの家並みの中でも、どこか印象に残る佇まいだと感じていました」という声もありました。




キッチンに寄り添う 小さな居場所

施主様のご希望でキッチンダイニングの一角に設けたのが、「ヌック」です。ヌックは、欧米の住まいにおいて、読書や休息のための小さな居場所として設けられています。

施主様からいただいたのは、このようなイメージでした。

「木の箱のような形で、座面にはクッションを置きます。背もたれは、低くていいと思っています。テーブルと椅子を置けば、ダイニングとしても使えるイメージです」

具体的なイメージをもとに、設計プランナーが丁寧に図面へと落とし込みました。

座面下は収納として活用できるよう計画し、背もたれには、ぽこぽこした手触りが特徴の「なぐり仕上げ」木材を採用。光の当たり方によって表情が変わる、美しい木目が印象的です。

大工職人の手によるヌック
椅子の下は収納スペース

完成後には、施主様から「素晴らしいです。背もたれの木の模様もとても綺麗で、幸せです」と、嬉しいお言葉をいただきました。



途中の時間も施主様とともに

工事の途中経過も、施主様と共有することを大切にしている吟優舎。定期的に現場の写真をお送りし、住まいが少しずつ形になっていく様子をお伝えしています。

「どんどん、お家らしくなってきていますね」

施主様からのメッセージからは、完成を待ちわびながら、工事の過程そのものも楽しんでくださっているご様子が伝わってきました。

私たちもまた、そのお気持ちに応えるべく、自然と背筋が伸びます。


賀茂川のせせらぎのそばで、この町家は、少しずつ完成へと近づいています。

blogged by 黒川京子


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【京都市上京区】「beautiful…」静かな感動に包まれた京町家のお引き渡し

京都の中心にほど近い場所にありながら、
観光地のにぎわいとは一線を画す、静かなエリア。
そんな上京区にて、イギリス在住の施主様のお引き渡しを行いました。

海外在住の施主様を迎えてのお引き渡し当日

これまで細やかな打ち合わせを重ねてきましたが、完成したご自宅を実際にご覧になるのは、もちろんこの日が初めて。

一歩足を踏み入れ、
ぐるりと室内を見渡された施主様からは、

「beautiful…!」
「good…!」

と、次々に言葉がこぼれました。

それ以上多くを語らずとも、「感動」がその場に伝わる、そんな印象的なひとときでした。

格子や唐紙に感じる、京町家らしさを活かした設計

格子や唐紙など、随所に感じられる「京町家らしさ」。
一部屋一部屋、スタッフ一同でご案内させていただきました。

天井に見える柱は、実は構造材ではなく、あえて「デザイン」として施工したもの。
箱型の造りで軽やかに見せつつ、空間のアクセントとして印象的な存在感を生み出しています。


ご家族との時間が感じられた、心温まるひととき

この日は、オランダから帰国されていたご子息様もご一緒でした。

ご案内のお部屋を移る度に、施主様がご子息様へ
「これは何だと思う?」
「これはね……」
とクイズを出される場面もあり、お引き渡しの日ならではの、微笑ましい光景が広がります。

また、ご子息様は建築を学ばれているとのことで、図面を一緒にご覧になる姿も。
その様子を拝見しながら、私たちも自然と温かい気持ちになりました。

最後に
「ご自宅の中で、一番のお気に入りはどこですか?」
とお伺いしたところ、

「床の間です」
と、笑顔で教えてくださいました。

この住まいが、ご家族の新しい暮らしの舞台として、これからも多くの笑顔とともに、たくさんの思い出を育んでいくことをスタッフ一同心より願っております。

ご家族の大切な節目となる住まいづくりに携わらせていただきましたこと、改めて深く感謝申し上げます。

この度は誠にありがとうございました。

blogged by 中田ゆや


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出町柳賀茂大橋『通りに寄り添う門構えの大正ロマンリノベーション』vol.1

時間がゆるやかに流れる鴨川

新しく始まったリノベーションをご紹介いたします。

京都市上京区・出町柳。
賀茂大橋にほど近く、水面に映る青空、三角州で思い思いに過ごす人々の姿が見られる場所。鴨川の穏やかな風情と学生の活気が共存する町に、今回承った一軒の京町家があります。

通りに寄り添う門構え

こちらの京町家でまず目を引くのが、門の佇まいです。
斜めに走る通りに寄り添うように据えられ、建物とは、わずかに角度を変えて建てられています。 個性あふれる佇まいから、
「通りに寄り添う門構えの大正ロマンリノベーション」と題し、ご紹介してまいります。

昭和初期の町家を大正ロマンの住まいへ

建物は、昭和初期に建てられた京町家長屋の一角です。約10年前には、耐震補強や屋根の葺き替え、上下水道管・ガス管の更新が行われていました。

「大正ロマンの趣を生かした住まいへ整えたい」というご希望で、吟優舎にお問い合わせくださった施主様。畳とフローリングが共存するリビング空間や、これまでなかった浴室の新設などのご希望を受け、計画が始まりました。

解体して初めて見えたシロアリの被害

解体工事が進むにつれ、明らかになったのが、想像以上に深刻なシロアリ被害です。

詳しく見てみると、地面に直接柱が設置されているような箇所も多く、シロアリが侵入しやすい環境であったことが分かりました。


シロアリが上がりやすい環境

中でも、こちらの柱は被害が進行し、途中で欠損していました。

シロアリの被害を受けた柱
根本から欠損した様子

それに伴い、荷重を支えられなくなったことで負荷がかかり、関連する梁にはひび割れも生じていました。このままでは、構造全体へ深刻な影響が及ぶ危険性があります。

ヒビが入った梁

直す前の応急補強

状況を確認後、すぐに支えとなる筋交いを入れ、応急補強を施しました。

仮補強のために入れた筋交

解体は単に壊す作業ではなく、どんな時間を重ね、どんな状態で今ここに建っているのかを知るための工程でもあります。

次回へ

こちらの町家が、どのようにして大正ロマンの空間へと生まれ変わっていくのか。 次回 vol.2 でも引き続き、再生のプロセスをご紹介してまいります。

blogged by 黒川京子


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加茂街道『賀茂川沿いに佇む京町家リノベーション』vol.4

賀茂川の気配と木々の緑に包まれる「賀茂川沿いの京町家リノベーション」。
屋根の葺き替えを終え、現場は「木工事」の段階へ。建物の骨組みを整え、新しい命を吹き込む、とても大切な工程です。

前回のお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3

見えない場所こそ大切に

京町家のリノベーションを考えるとき、多くの方がまず気にかけられるのが「耐震性」ではないでしょうか。戦前に建てられた町家は、現代の耐震基準とは異なる考え方のもとに造られています。

吟優舎では、その歴史を尊重しつつも、木工事の段階で構造を根本から見直し、現代の暮らしにふさわしい強度へと高める補強を行っています。

金物補強の様子
金物補強の様子

写真は、梁と梁を専用の金物で繋いだ様子です。
長い年月を耐え抜いてきた古い部材と古い部材、また古い部材と新しく加えた部材。それらを金物でしっかりと繋ぎ合わせることで、住まいを支える強固な骨組みへと生まれ変わります。

金物補強の様子

また、より高い耐震性を確保するために、厚みがあり高い強度を備えた板材「構造用合板」を用いた施工も取り入れています。柱・梁・土台を連続的につなぐことで、地震の揺れを「面」で受け止める、より確かな耐震構造へと整えていきます。

これらの補強は、完成後には壁や天井の奥に隠れてしまいます。
しかし、「見えない場所こそ、大切に」。 私たちはそう考え、工事中にしか見ることのできない構造補強の様子も、施主様へ丁寧にお伝えしています。

歳月を物語る、京町家の象徴「ゴロンボ」

町家の解体を進めるなかで、力強い姿を現したのが、ゴツゴツとした丸太の梁。 京町家で古くから「ゴロンボ(ゴロン棒)」と呼ばれるものです。

ゴロンボ

かつての職人たちは、自然のしなりがある丸太が、いかに強靭であるかを知り尽くしていました。その特性を生かし、適材適所に配置することで、町家の強度を支える要としたのです。

通常は2階天井に見られるゴロンボですが、この町家では、1階部分にも立派なゴロンボが渡されていました。1階と2階の梁を交差させるように配置することで、建物全体のねじれを防ぐという、当時の大工の見事な仕事ぶりが伺えます。

当初、ゴロンボは天井裏に収める予定でした。 しかし、2階の寝室に現れたゴロンボがとても堂々と美しかったため、急遽施主様にご相談し、その力強い質感を活かした「見せる意匠」へと変更いたしました。

本来は「野材(のざい)」と呼ばれ、隠れることを前提とした材料ですので、 手をかける必要があります。一つひとつ丁寧に磨き上げ、風合いを損なわないよう塗装を施して、大正ロマンが香る空間のアクセントとなるよう整えていきます。

少しずつ家らしくなっていく喜び

「木工事も順調に進んでおります」という担当者からの報告に、施主様からメッセージをいただきました。

「解体ではなく、『作る』作業が始まったんですね。テンション上がります!」

その明るいメッセージに、私たちスタッフも励まされます。 壊す工程から、積み上げる工程へ。
新しい暮らしの輪郭が少しずつ見え始める瞬間は、何度立ち会っても感慨深いものです。

施主様の期待をしっかりと受け止め、完成の日まで、細かな気遣いを忘れず歩みを進めてまいります。

blogged by 黒川京子


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加茂街道『賀茂川沿いに佇む京町家リノベーション』vol.3

少し時間が空いてしまいましたが、加茂街道「賀茂川沿いに佇む京町家リノベーション」の続きをお届けいたします。


街路樹の緑と賀茂川の気配がすぐそばに感じられ、ふと時間が緩むような、穏やかさに包まれた京町家。
解体工事を終え、現場では次の工程へと作業が進んでいます。

前回のお話はこちら→ vol.1 vol.2

吟優舎の建築幕を掲げた現場

強い日差しのなか、大屋根(2階上)の葺き替え工事が行われました。
吟優舎の建築幕が、光を受けながら現場を静かに見守ります。

未来へ繋がる京町家の屋根

京町家の屋根には、いぶし銀の「和瓦」が用いられることが一般的です。
その施工法は、かつては瓦を土で固定する「土葺き」が主流でしたが、粘土質の葺き土は重量があるため、屋根全体に相応の負担をかけてしまいます。

阪神・淡路大震災以降、町家の屋根にも軽量化と耐震性が求められるようになりました。
現在では、瓦桟(かわらざん・瓦を受け止める下地材)に瓦を掛け、釘で固定する「桟葺き(さんぶき)」が、和瓦屋根の標準的な工法となっています。

「伝統を守りながら、現代における安全性を追求する」。
今回の工事も、その理念に基づいて進めています。

解体中の現場の様子

京町家を守る屋根葺き替えの工程

①古い屋根材の撤去
長年この町家を守ってきた瓦や屋根材を、一枚一枚、丁寧に取り外していきます。古い葺き土が残っている場合は撤去し、昔の下地材である杉皮(通称トントン)が確認された場合は、こちらも取り除きます。下地をあらためて確認することで、傷みや雨漏りの原因を根本から整えます。

②新しい下地づくり
垂木の状態を確認しながら、12mm厚の野地板(のじいた)を隙間なく張り込んでいきます。既存の野地板がある場合は、その上から重ねて張り、現行基準に適した屋根下地へ更新します。屋根を支える、構造上最も重要な工程です。

③防水シートの敷設
野地板の上に、雨水の侵入を防ぐルーフィングと呼ばれる防水シートを丁寧に施工します。屋根の耐久性を大きく左右する大切な役割を担います。

④瓦桟を用いた和瓦の施工
ルーフィングの上に瓦桟(かわらざん)を設置し、その桟に和瓦を一枚ずつ掛けていきます。瓦にはあらかじめ釘穴が設けられており、釘やビスで確実に固定することで、強風や地震によるズレを抑え、軽量で安定した屋根構造となります。

落ち着きと格式を備えた屋根へ

大屋根の葺き替え

安全性を追求した、いぶし瓦の大屋根へ。
銀灰色の瓦が整然と連なる町家の屋根は、すっきりとした佇まいの中に格調を宿し、住まい全体の表情を引き締めています。

一つ一つの工程を大切にしながら、現場は順調に歩みを進めています。
次回も、工事についてお伝えしていきます。

blogged by 黒川京子


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