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京都市南区『子供を育てやすい町家』改修VOL.4 完成です!!

京都市南区『子供を育てやすい町家』の完成編です。

私たちが昨年施工させていただいた建築の中で代表的なものだったと思います。 この建築のプランナーを務めた新造は、一度に複数の建築の担当をしません。 『 1棟入魂 』 が彼女の信条です。 現場に通う頻度も高く、その拘(こだわ)りは、最後の最後まで続きます。 共に働く私ですら、その姿勢には敬服の念を感じています。

今回のこの建築は、今から子育てをされるまだお若いご夫妻の新居として、プランさせていただきました。 引渡しに際して、その施主様ご夫妻が夕方暗くなろうとする中で、いつまでもその外観を眺め続けていらした姿に、胸が熱くなりました。 建築をしていて、一番嬉しい瞬間です。

『 良いものを造りたい 』 『 美しいものを造りたい 』 『 可愛いと喜んでもらえるものを造りたい 』 と常に思っています。

プロでなくても、とてもセンスが良く、素晴らしいご提案をしてくださる施主様がいらっしゃることは、事実です。 ただ  『  こんな家を造りたい 』  という思いを実際に形にしていくことは、容易なことではありません。 細かいバランスやディーテイル(細かいデザインや納め方)を考慮しながら、トータルに考えて建築を進めることは、たいへん難しく、お客様にその一つ一つを聞いて、施工してしまうと、『 お客様のイメージされていた欲しい形 』 とは、『 違う物 』 ができてしまうことの方が一般的だと思います。 だからこそ建築の専門家としての私たちの存在価値が有るのだと信じています。

時間をかけて施主様の 『 欲しい形 』 をヒヤリング(じっくりとお客様のお話を聞くこと)を通して理解していきます。 そしてそのイメージをできる限り正確に捉(とら)えて、私たちのアイデアやデザインをプラスした形でプランニングを制作します。

2つのプランを提出することはありません。 『 最善を尽くした1プラン 』 をご提案しています。

施主様の言われるがままをプランするという設計士がいますが、私たちは敢(あ)えて、イメージのみを聞いた上で、細かい部分までご提案しています。 そこにはある意味、逃げ場のないリスクが存在します。  それでも、そうでなければ  『良い物 』 はできないと考えています。

この 『 子供を育てやすい町家 』 をご発注してくださいました施主様は、初めにご提出したプラン通りの内容で、ほぼそのまま建築をさせてくださいました。 だからこそ、私もプランナーもなおさらに、最後の最後までこの家に 『 一棟入魂 』 で臨めたのかもしれません。

ここまで信頼してくださった施主様には、感謝の念でいっぱいです。 このことは、一生涯忘れられないことだと思っております。

以下は、今の私達の精一杯の建築です。

勿論、これからなおいっそう精進して、さらに良い建築を志し続けます。  末永いご贔屓のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

Blogged by 松山 一磨(いつま)

 

左から玄関、自転車スペース、子供たちのフリースペース。 大きく見えますが間口は5mです。

 

手前は子供たちのフリースペースです。 ここからも出入りできます。 汚れた手足を表のモザイク造りの洗い場で綺麗にしてから室内へ・・・

 

もともとこの建物に有ったメタル製の花台です。 とてもお洒落な形をしています。 錆を落とし、不要な部分は撤去し、さらに溶接補強して生まれ変わりました!! 次の30年、また頑張ってください。

 

竪の格子で揃えたデザインです。 それぞれの格子のサイズを変えることでバランスに変化がついています。 この『バランスの変化』がある意味『美しさ』でもあると感じています。

 

玄関の片引き戸を空けた状態です。 表側の土間のデザインをそのまま玄関内部まで連続させています。

 

玄関網戸も木製で製作しました。 ネットはステンレスで耐久性をアップさせる仕様にしています。

 

一見お茶室風の3帖間。 子供たちの憩いの場。 ちょっとした来客時など、奥のリビングでなくここでお話することも可能です。

 

玄関収納はオーダー製のものを誂(あつら)えました。 飾り台は銀杏(いちょう)の無垢材。 表の路(みち)から格子のFIXを通して、飾ったお花がさり気無く見える設計になっています。

 

施主様拘(こだわ)りの玄関収納内部。 何を置くかを決めた上での設計と施工です。 電動自転車のバッテリー充電用のコンセントも設置してあります。

 

玄関廊下。 このフローリングは、フランス製チョウナ加工の無垢材です。 左はLDK入口。 昭和初期製作のアンティーク建具です。 ガラスを装着し、塗装をして再登板!! 正面のお部屋は子供のフリースペースの玄関からの様子です。 一見お茶室っぽい感じではありませんか?

 

お茶室をイメージした子供たちのためのフリースペース。 天井は格(ごう)天井にして、色の違う和紙調のクロスを市松仕様で施工。 床面は畳ですが、和紙をコーティングした色褪(あ)せしない、汚れの拭き取りやすい素材です。

 

玄関廊下からリビングを臨んだ様子。 右側は2階への階段室扉。 左はキッチンですが、来客者からキッチンが丸見えにならないように格子のパーテーションをつけました。 また幼児が自由にキッチンに入れないように鍵つきの格子扉を設置しています。

 

リビング内部から見た入口付近の様子。 アンティーク建具が町家の雰囲気を醸し出してくれます。 床は松の無垢フローリング。 塗装は柿渋+ベンガラの日本古来からの天然素材です。

 

LDKの一番奥、増築して天井を高くしたもっとも寛(くつろ)げるスペースに家族が憩(いこ)うリビングゾーンを配置しました。 その真上には大型の天窓が有ります。

 

東西に窓の無い町家。 天窓は明かりを取り入れる最強のパーツです。 天井は構造材を出してナチュラルな雰囲気を演出してみました。

 

奥様のご希望でキッチンは家族の顔が見える対面キッチンに。 風通しを考えて窓を多めに設置しています。 これも東西面に窓が無いことへの対策です。

 

モザイクタイル造りのキッチンカウンター。 LDKの中心に位置する、この町家の新たな顔の一つとして、製作しました。

 

レトロ感満点のモザイクタイル。 『 古いが新しい 』 という言葉がぴったりなモザイクタイル。 弊社お勧め素材の優等生です。

 

弊社では、取り壊された町家から回収された江戸時代~昭和初期製作のアンティーク建具を好んで再利用しています。 新品では決して表現できない味わい深さがあります。 これもまた弊社お勧め素材の優等生です。

 

 

 

京都市北区『出格子の町家』に改修 完成です!!

全編6回に渡る『京都市北区町家改修ブログ』もいよいよ今回が完成最終編となりました!!

ブログを綴(つづ)っている私自身が、このブログを通して、私たちの会社や私たち自身の思いなど、気づくことが多くあり、ちょっとビックリした次第です。 このような機会を与えて下さった、今回この工事の施主様である橋本様ご主人様、並びにご家族様に、心から深くお礼申し上げます。

誠に有り難うございます。

さて、以下はその完成写真です。

この工事は、施主様の熱く真剣なご要望を形にしたことと同時に、僭越(せんえつ)ではございますが、デザインしたプランナー新造さんとそれを形にすべく施工にあたった弊社協力業者さん達のまさに精一杯の結晶でもあります。

1ケ月以上に及ぶ工事の間、終始にこやかに暖かく見守るように接してくださった施主ご主人様、お母様、奥様、ご長男様に最後に重ねてお礼申し上げます。

ほんとうに有り難うございます。 またまだまだ至らない私どもでは御座いますが、どうぞ末永いご贔屓の程を心からお願い申し上げます。

吟優舎 松山 一磨(いつま)

夕暮れ時の完成外観。外構(がいこう)土間は、駐車場スペースと玄関アプローチ、その他の3箇所で素材を変えてデザインしました。

解体した歌舞伎門に在(あ)った丸い外灯をリフォームして勝手口に設置。メイン玄関には四角のステンドグラス外灯を設置。丸い外灯と暖簾(のれん)の丸いデザインがマッチしてなんとも嬉しいかぎりです!!

左側隣家との境界に在(あ)ったブロック塀は、“京あぜくら”という塗壁で仕上げました。 また二階のルーバー窓を格子で隠し、簾(すだれ)を交換しています。

出格子の建具は、既存の外壁、木部との調和を考えて、古色の木目出しの塗装を施しました。メイン玄関外灯はステンドグラスの外灯を採用。点灯するとステンドグラスのグリーン色が壁面にほのかに反映されます。

出格子の内観です。硝子(がらす)に写るシルエットがなんとも京都らしく情緒感たっぷりです?!  いかがでしょうか?

外構土間は、石にこだわってデザインしています。墨入り土間コンクリートに角形鉄平石。アプローチには粗肌色御影石。その他土間と巾木には、粒石の洗い出し。 10年後、20年後の変化が楽しみな素材です。

玄関敷居は、粒石洗い出しで製作。土間の御影石のむっくり感は私のお気に入りのイメージです。施主様とご一緒に石屋さんへ赴(おもむ)いて選んだ御影石。 施主様と共にこだわった結果の仕上がりです。

フローリングは、フランスボルドー製の“なぐり加工”のパイン(松)材を採用しています。この個性豊かな表情と存在感は、他のフローリングではなかなか出せません。施主様お気に入りの素材です。また框もそれに合わせて“松材”で製作。印刷加工の建材では表現できない無垢材の落ち着きと情緒があるように思います。

文様(もんよう)、和紙、印刷色を全て選べるオリジナル唐紙(からかみ)で製作した襖(ふすま)とアンティーク建具です。弊社がご提案する特徴的デザインの素材です。町家改修に自然に馴染(なじ)むデザイン素材ではないでしょか?またその間にある柱は、弊社スタッフの植村が1日がかりで既存柱を磨いて補正再生したものです。

天井は、四角枠に桟木を造作して色の違う和紙調クロスを施工しています。写真では分かり難(にく)いのですが、ダウンライトの縁(ふち)も施主様の手でクロスの色に合わせて着色されています。

出格子出窓台の素材は下駄箱と同じものを採用。とっても個性的で雰囲気のある木肌柄です。壁面クロスは和紙クロスを採用しています。紙と木、自然な素材の癒(いや)しを感じます。

 

ようやく完成です。 施主様、住まわれながらの長期の工事。本当にしんどい期間だったはず。そんな素振(そぶ)りは、終始かけらも見せず、毎朝笑顔で迎えてくださったこと、心からお礼申し上げます。 誠に有り難うございました。

京都市北区『出格子の町家』に改修 VOL.5

さて京都市北区町家改修、いよいよ化粧(仕上げ)に入っていきます。

建築工事は、大きく二つの部分に分類することできるかもしれません。

1つは、構造躯体(くたい)、いわゆるフレームとなる部分です。 これは間取りに大きく影響しますし、また建物自体の強度、安全性に大きく影響する部分です。

もう1つは、化粧(けしょう)と私たち建築専門家は表現するのですが、つまり仕上げ、いわゆるデザインとなる見栄え(みばえ)に関する部分です。 これは、人で例えるなら、『どんな衣服を着て行こうか?』 『どんな靴を履こうか?』 『どんな髪型が、この服に合うかな?』 『どんな鞄(かばん)が、良いかな?』 という感じの事柄にあたります。

構造躯体(くたい)は、地震が頻発に発生する昨今では、最重要課題です。 しかしながら近年、これを軽視して“手抜き”または“素人的技量、不勉強”と言っても過言でない施工で終わらせているケースを見聞きすることが増えてきているように感じています。 とりわけ新築と違って、公的検査のないリフォーム工事では、より多く見受けられます。

もう1つの化粧・デザインですが、これはどうでしょうか?

私の主観になりますが、多くの建築会社は、このデザインを『軽視』しているのか、はたまた『苦手』なように感じられてなりません。 化粧・デザインは、毎日の生活の中で常に目に付く部分です。 バランスが良く、美しい色彩や形は、見る人の精神にストレートに良い影響を与えてくれます。

弊社では、この化粧・デザインは、専門家のプランナーが設計・ご提案します。

これは、専門家でないと無理な部分だと思っています。 お客様のご要望をヒヤリング(お聞き)して、専門のプランナー、ある意味デザイナーが、設計するという方式でプランニングを行います。

弊社では、構造躯体(くたい)と化粧・デザインは、自転車の前後の両輪だと認識しています。 いずれが欠けても前には進みません。 デザインのために安全性を犠牲にすることは有り得ませんし、また安全性のためにデザインを犠牲にすることも有り得ません。

『構造躯体(くたい)の安全性』と『化粧・デザインの美しさ』が揃っていることが、プランニングの条件だと考えています。 はずかしながら、弊社の施工した建築が全てその二つ、とりわけ『化粧・デザイン』において、そうなっているかと言われれば、そうではないかもしれません。 ただ、そうなくてはいけないという思いでプランニングをしていることに、偽(いつわ)りはありません。

ちょっと堅苦しい話しになってしまいました!

では、以下はその『化粧・デザイン』の施工途中の映像です!!

 

アプローチの御影(みかげ)石の施工。この御影石、お客様とご一緒に現物を見学して選んだものです。『色』『石肌』『サイズ』にとことんこだわりました。

 

6月2日のブログにありますが、祇園の出格子を全て見て回った結果に製作した出格子建具です!!美しい仕上りだと自画自賛の私達です!?

 

玄関建具は、太さの異なった縦格子をランダムに並べたデザインにすりガラスをはめ込みました。この縦格子が『かまぼこ型』に加工してあるのがお分かりいただけるでしょうか?

 

土間にコンクリートを打つ前にデザインの石を埋め込みます。ご提案した2つのデザインからお客様が選ばれたのがこのデザインです。

 

天井の木組枠です。この中に『市松』デザインで異なった色の和紙調クロスを貼っていきます。結構手間のかかる作業なのです・・・!!

 

Blogged by  松山 一磨(いつま)