『 最近の記事 』

京都市左京区『杉皮塀のある町家』改修 VOL.4

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光陰者百代之過客(李白)

〝月日は百代の過客にして、行かふ年もまた旅人なり〟(松尾芭蕉)

 

いつのまにか、

年賀状のお年玉ハガキ抽選も過ぎ…

長らく、お待たせいたしました!

ブログ更新、スピードアップしてまいります!

ここでしか見られない工事写真をメインにお届けします。

 

裏玄関(勝手口)完成間近

 

今回は、杉皮塀のある町家の続報です。

(※以前のブログはコチラ→ VOL.1・ VOL.2・ VOL.3

だんだん、家の顔がはっきりとしてきました。

 

(before)玄関土間モザイクタイル

 

玄関土間では、左官職人がモザイクタイル飾りを施工中です。

小さなタイルは、塗った下地へ押し込んで埋め込みますが、

サイズが大きいと押し込む時に周りが崖のように盛り上がって

しまうため、今回はまずタイルを設計位置で固めてから、

下地を塗って仕上げます。

 

(before)天窓と梁の上の足場板

 

邸内には、塗装屋さんとクロス貼り屋さん。

高い所に足場を組み、職人さんがテキパキ働く姿には

いつも見とれてしまいます。

この時点で、内装の木部の塗装が終わりました。

いよいよクロス(壁紙)貼りです。

 

(before)クロスを貼る前にも色彩チェック!

 

リフォーム前のキッチンでは、

クロス裏面に糊を付ける機械が稼働し、

貼る前の準備作業が進行中…

 

(before)パテで壁面補修中の洋室

 

クロスを貼る前に、壁の穴やへこみはひとつひとつ、

パテでなめらかに補修しております。

クロスが凸凹せず、しゅっとした仕上がりになるんです!

 

(before)増えた階段

 

上の階へ移動いたしましょう。

まだ緑色のテープで止めた薄板のカバー付きですが、

上り下りしやすくなった新しい階段です。

畳半分ほどスペースを広げて2段分増やし、

角度がぐっとゆるやかになりました。

手すりも弊社設計の、木製オーダー品です。

 

(before)旧 既存の洗面台

 

2階では、もとからあった現代的な洗面台を取り外し、

設計デザイン担当者が、現状をしっかりと最終確認。

町家の魅力をアップさせるため、新しい洗面台製作が始まります。

 

(before)洗面台設置場所&トイレの扉

 

横のトイレスペースの扉は、アンティーク扉に交換しました。

もちろん、トイレ内もリフォーム済みです。

…チラッとご覧ください。

 

(before)アンティーク扉のアップ

 

アンティーク扉は、鍵まで木製で使えるものを選んでおります。

それに合わせ、トイレ背面の壁紙も模様入りの茶色に。

 

(before)ウッドデッキバルコニー工事中

 

お隣の2階の洗濯干場では、大窓についていた

鉄の手すりを一部カットし、出入口としました。

大工職人が、屋根の上に続くバルコニーを造っています。

洗濯干場、そして、お子様も遊べる安全な第2の庭として…

風と日射しが心地よく、気持ちの良い場所です。

 

(before)ウッドデッキバルコニーの目隠し製作

 

数時間で、デッキ土台から目隠しの柱まで完成しました。

ここに縦板を取付け、前後にずらした板の間を風が通る

和の「菖蒲張り(あやめばり)」で仕上げる予定です。

夏のバーベキューや夕涼みに、お子様のプール遊びに、

きっと充実した空間となることでしょう。

 

次回は、いよいよ完成編となります。

本日はここまでおつきあいいただき、ありがとうございました。

 

Blogged by  小川 還

( 監修 : 松山 一磨)

左京区北白川事務所 Vol.6

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・吟優舎 北白川事務所 改装編 第六弾!

 

左京区北白川の事務所改装の、続報です。

 

(after)北白川事務所 外装工事完了

 

ご覧の通り完成していた、事務所でした。

ところが、裏の壁が1カ所消えておりまして(?)、

 

(before)北白川事務所 壁があった前回

 

…たった1枚のベニヤ板に変わっておりました。(▼写真の左側)

 

(before)北白川事務所 壁が消えた現在

 

どうします、所長?

 

(before)北白川事務所 床磨き中

 

どうなるんでしょうか??

床を磨く前に、教えてくださいませ。

 

 

※こちらから以前の状況がご覧いただけます。

 

(before)北白川事務所 工事前の外観

 

→ Vol.1) (→ Vol.2) (→ Vol.3

→ Vol.4) (→ Vol.5

 

ともあれ、まずはご案内いたしましょう!

 

(after)玄関の前へ

 

さあ、お入りください。

 

(after)玄関ポーチ

 

カチャッ!

どうぞ。

 

(after)玄関へ一歩入った所

 

鼻をくすぐる、

削りたての新しい木のかおり。

 

すぐ左は、縦長のスリッパ収納庫です。

彫り跡が特徴の「なぐり加工」された収納庫の扉と、

本物の和のアンティーク木戸が並んでいます。

 

(after)なぐり加工の収納庫の扉とアンティーク木戸

 

ふりかえった頭上には、アンティーク風の小さな玄関照明。

続いて、奥の部屋へどうぞ。

 

(after)玄関の灯り

 

オフィス・ルームは、洋館風のしつらえです。

対面の窓は、設計から吟優舎オリジナルの木製仕様でして、

デスクもオリジナルで一部可動になっております。

 

(after)オフィス・ルーム (※連休verより変更しました)

 

その手前には、吹きぬけと照明、そして、

屋根裏ロフトへの梯子があります。

 

(after)吹きぬけと2種類の屋根裏ロフト

 

(after)吹きぬけのアンティーク風照明

 

(after)吹きぬけ梯子側

 

(after)屋根裏ロフトへの梯子

 

設計デザイン担当者いわく、

「いつも、ひとつの家が完成するまでは、緊張のあまり

ドキドキが止まらない毎日」なんだそうです。

 

「施主さんの期待に応えるのはもちろん、

それを実際に作ってくれる職人さんに申し訳ないから、

いい加減なデザインなんか絶対にできない」と。

 

どんな人の意見も聞き、キチンと消化してから

真剣勝負で検討し、デザインに取り組む。

「すべての努力が報われる瞬間がある」

という口癖と、0.1ミリすら手を抜かない担当者の姿には

いつも圧倒されています。

 

 

 

…あっ、所長っ!

ここです、この壁、どうなるんでしょうか?

えっ、暖炉に?

 

(after)事務所 暖炉のスケッチ

 

スケッチによれば、薪ストーブを置く暖炉、と。

冬の前に、仕上げはタイルで飾る予定となりました

 

「すみませーん、各担当者さん、

事務所改装の仕事が増えました、大丈夫ですか?」

 

 

 

…こんな調子で、あっという間に8月が過ぎて行きました。

もう1度、途中経過をお届けしまして、

今度こそ、お披露目させていただくつもりです。

 

おつきあいいただき、ありがとうございました。

みなさま、完成までしばしお待ちいただけますでしょうか?

 

Blogged by 小川 還

 

 

 

京都市左京区『杉皮塀のある町家』改修 VOL.2

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目にも鮮やかな緑の季節です。

 

堀川通りより見た御所

 

「杉皮塀のある町家」へやってまいりました。

前回ご報告した、杉皮塀のリフォーム完了後の、続報です。

(※初回ブログはコチラ→ VOL.1

 

(after)玄関前より杉皮塀、歌舞伎門

 

ついに家本体のリフォーム工事の準備が整いまして、

解体前日のチェックにお邪魔いたしました。

 

お施主様ご夫婦にとっては、現状での見納めです。

お子様も小さく、片付けにいらっしゃるだけで大変なのに、

気持ちのよい笑顔で迎えてくださいました。

捨てるもの、残すもの、それぞれを色テープで分別し、

取り違え無いよう邸内を念入りに確認してゆきます。

 

 

さて、リフォーム前の家の様子をどうぞ。

…端正な美宅です、リフォーム前ですけれども是非ご覧ください。

 

お施主様のお祖父様が購入されてすぐ増改築され、

次に、ご両親の時代に水回りや空調の改築があったようです。

今回は、全体のリフォームとなります。

 

(before)正面から見た7面の屋根

 

こちらのお屋敷の特徴は、

2つの玄関と過去の増築で複雑になった屋根です。

解体してみるまで構造がわからず、気は抜けません。

 

(保存箇所)来客専用玄関

 

玄関のうち1つは、お客様専用の格式高い玄関。

 

(保存箇所)踏み石と障子

 

足を踏み出すと、気が引き締まります。

 

(before)家族用玄関

 

もう1つは、家族の玄関。

 

(before)門前から続く、趣き深い石畳

 

普段の勝手口でもあり、つい入ってみたくなる雰囲気です。

…お邪魔いたします。

 

(before)邸内と上がり框(あがりかまち)

 

上がり框(あがりかまち)から先は意外にも、現代的な空間でした。

 

(※上がり框/あがりかまち=土間から床へ上がるための一段高い板段。

視線が集まるため、良質な木目の美しい木材で製作される)

 

(before)上がり框の対面側

 

上がり框(あがりかまち)より振り返れば、昔の屋根としっくい壁が

あり、現代と過去のちょうど境目にいる心持ちです。

 

少しスピードをあげて、改築予定部分をご案内しましょう。

 

(before)現代風のダイニングキッチン

 

明るい木目調のフローリングに、システムキッチン。

水回りを使いやすくするために以前、増築された部屋です。

配置を変え、家とつり合うように古めいた仕様に変更されます。

 

(before)玄関脇の洋室

 

玄関を入ってすぐの洋室は、神戸の西洋館に似たデザインで、

壁は丸みをおび、天井へとなめらかに続いています。

壁紙・絨緞など表面の仕上げは新しいものになっていました。

木製の窓枠やお洒落なガラスは、そのまま残る予定です。

 

(before)茶の間。押入れの中には階段

 

お隣の茶の間からは、寝転べず不評だった掘りごたつが撤去され、

階段は、もっと傾斜がゆるいものと付け替えられます。

 

(before)網代(あじろ)の戸棚

 

押入れの奥は、裏手にある廊下側から使えるように浅く仕切られています。

その戸棚の戸は、檜(ひのき)の薄板を斜めに編んだ、手間のかかる高価な

「網代(あじろ)」の仕上げでした。

 

(before)来客専用の階段

 

お座敷と仏間の奥に、また階段がありました。

来客専用で現在は使われておらず、今回、撤去されます。

 

 

では、2階へまいりましょう。

1階とそっくりなお座敷と、洋間が並んでいます。

 

(before)お座敷と洋間の書斎

 

現代風に改築された洋間には、窓際の押入れを改造した

小さな書斎があり、古い机が置かれていました。

ここは、1階に場所を移し、設計担当者の指示によって再構築されます。

 

(before)2階。お座敷と洋間の欄間の比較

 

家全体で統一された形の欄間があり、洋間だけは、

エアコンで空調するためにふさがれていました。

過去に行われた改築は、どちらかと言えば、見た目より

実用本位の改造だったのでしょうか。

今回は、こういった点も解消されると聞いております。

 

(before)廊下のアンティーク照明

 

珍しいデザインに、設計担当者も思わず歓声をあげていました。

この照明は、外の杉皮塀の上に取り付けられた照明と

同じ時代の作品のように思われます。

 

(before)古い電灯のスイッチ

 

古い照明器具がある…つまり配線も古い、ということでしょうか?

新旧が入り交じったスイッチは、使いにくそうでした。

漏電による出火を防ぐために、配線までスッキリ整える必要があるようです。

 

(before)1・2階の廊下アップ

 

部屋をめぐって歩いた廊下は、昔のままの美しい木目であり、

角は寄木(よせぎ)にされ、長い1枚板を丁寧に組んであります。

表面はそのままに。

裏側には断熱材を施工して、床下からくる寒気をふせぎ、

より快適になる予定です。

 

2階の廊下からは手すりの柵がはずされ、屋根の上に

広いウッドデッキが新設されます。

 

(before)1階の廊下

 

庭の緑が目に心地よく、涼しい風が吹き抜けてゆきます。

この環境はそのまま、残されるはずです。

 

 

どんなスタイルも必ず、いつかは時代遅れになるもの。

されど、いくら古くとも、留めておきたい部分はそのままに。

…こだわりは受け継がれ、家屋に残ります。

 

家を購入したお祖父様やご両親は、その時代の最先端を集めて

自分の住まいをつくりあげられたのでしょう。

こんどはお施主様が、今の感覚でつくり変える番です。

 

弊社の設計担当者は、

目の前のお施主様のご希望をうかがいながら、

お祖父様が残された和のアンティークと対話するつもりで、

間取りはもちろん、紙・石の1つ1つまで膨大なサンプルを

取り寄せて吟味してきました。

 

古くても心には新しく感じられ、

新しくても古く懐かしい家に…。

徐々に明かされる全貌にご期待ください。

 

おつきあいいただき、ありがとうございました。

 

Blogged by 小川 還

 

 

 

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建築こぼれ話 その3

「ピッタリ作らない、という知恵」

 

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今回は、高級な網代(あじろ)戸の棚がありましたので

思わず、戸を開いて中をのぞいてみました。

 

(before)網代(あじろ)の戸棚の上部

 

最上段には、天板がありません。

また、背板も少しずらしたような納まりです。

 

試しに棚と押入れ、両側の戸を開いてみると、

強めの風が吹きぬけてゆきました。

…湿気対策だったようです!

 

押入れなど、布団からの湿気がたまりやすい所では

細かく仕切って空間を密閉しない、という昔の知恵です。

 

宮大工さんの書いた本によると、

日本の大工さんは古代から、視線がむかう部材の

美しさを大変気にかけたそうです。

逆に、見えない部分は、地震や台風での揺れや

湿気を逃がす構造に注力していました。

 

もちろんピッタリに作る技術力はあったのですが、

わざと、ピッタリ作らない部分を残したのです。

 

機会がありましたら、町家の土台の柱を見てください。

ゴツゴツした石にパッとのせただけの雑な仕上げに見えますが

適度にすきまができて、湿気がぬけます。

もし、石の上面にピッタリ合うように柱を削ると、

見た目はいいのですが、水にぬれた時に乾きません。

 

現代の押入れは、すきまが無いからカビが生えやすいそうです。

すのこを使って風の道を開けることをお奨めいたします。

 

…では、またお目にかかれますよう。

 

 

 

京都市左京区『杉皮塀のある町家』改修 VOL.1

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今回は出町柳、「杉皮塀のある町家」へご案内いたしましょう。

 

お客様の祖父母様の世代にご購入されたというお話でしたので、

築年は不詳ながら、おそらくは大正〜昭和初期ごろでしょうか。

 

しっくい壁に傷みは見られるものの、繊細な彫刻や美しい建具など、

すみずみまで洗練された上品な雰囲気です。

 

(before)杉皮塀のある町家 正面側

 

(before)来客用玄関の脇、梁に施された彫刻

 

(before)家族用の勝手口の格子扉

 

ところが、お隣りの家の解体が決まり、工事の際に、

片側の塀(へい)も無くなってしまいました。

そのため、新たに独立の塀の造作を希望されておりまして、

まず、ひどく傷んだ既存の門扉と塀を修復する運びと

なったのです。

 

(before)塀の片側を失った、修復前の歌舞伎門

 

(before)家までの通路と失われた塀の跡

 

(before)歌舞伎門の腐敗箇所

 

(before)歌舞伎門の腐敗の様子のアップ

 

 

「祖父母の代から続く杉皮張りの塀のたたずまいを

   活かした、この家にふさわしい塀を造りたい」

「通路に以前あった懐かしい照明器具を復活させたい」

 

それが、お施主様…この家を受け継ぐ若いご夫婦のご希望です。

 

保管されていた古い照明器具は、さびてはいるものの

和製アンティーク独特の美しさは失われていません。

シンプルながら、手づくりの曲線の優雅さに癒されそうです。

職人がさびを落とし、通路の幅にたりない部分には新しくあつらえた

アイアン細工の足を溶接、再生の準備を進めます。

 

(before)保管されていた、古い照明器具

 

(after)塗装され、修復が済んだ古い照明

 

 

この作業と同時進行で、設計担当者ら2名が、京都市内の

塀という塀を2日間見て歩き、修復プランを練り上げました。

杉皮塀の古き良き、美しいデザインとはいったい何なのか、

本質を探り、得た結論がこちらです。

 

設計したプランの、完成イメージ画

 

 

このたびのリフォームによって、

無くなっていた塀が新たに新設され、歌舞伎門の腐った箇所

は新材に差し替えられ、通用口建具はもともと使われていた

扉を利用して修復・補強されました。

 

コンクリートブロックで新設された塀

 

ブロックの間にモルタルを詰め、鉄筋を固定しています

 

修復前の歌舞伎門と化粧前のブロック塀

 

歌舞伎門の屋根周りの修復箇所のアップ

 

歌舞伎門の部材。腐った部分を切り取ったところ

 

新材に差し替えられた修復後の歌舞伎門。塀と門はつなげられ、上から見て、コの字形に配置されます

 

 

リフォーム後の姿をご確認ください!

 

門の格子扉は、磨かれ、戸車で動きが軽くスムーズになりました。

 

(after)修復された格子扉を開いたところ。左側には格子の背後に閉じて視界を遮るための木戸が見えています。

 

傷みかけていた木製敷居は、モルタル+小石の洗い出しに

変わり、水や虫にも負けません。

 

(after)修復された敷居。モルタルと小石を混ぜて型枠に詰め、完全に固まる前に、表面に水を流して小石を洗い出します

 

総仕上げは、門扉と塀全体に塗られた防腐剤入りの浸透性塗料です。

日ざしや風雨に長年さらされ、乾燥していたせいでしょうか?

塗料製造元に指定されている必要量の2倍の量、

なんと2リットルもの吸い込みがありました。

 

(after)修復された格子扉と塀を道路側から見たところ

 

(after)修復された格子扉のアップ

 

(after)修復された杉皮塀のアップ

 

新設した塀は、日影側にあるため水はけを考えて杉皮が短めにされ、

足元には石(京都の山石)を敷きつめた溝が掘られました。

山石の下は地面なので樹木や花を自由に植えることができますし、

白いしっくい壁と杉皮の渋く暗い色彩の対比により明暗が生まれます。

単なる通路としてではなく庭としてご覧いただくための演出です。

デザイン性を高めるため、杉皮としっくい部分の幅のバランスに

最後までこだわりました。

塀のてっぺんには、設計者が意地で探し出した、通常のルートでは

販売されていない珍しいスタイルとサイズの瓦が使われています。

 

(after)新設した塀の足元は、石を敷きつめた溝

 

(after)もともとあった石畳の通路と、新設した山石を敷きつめた溝

 

(after)塀のてっぺんの屋根瓦。杉皮が主役なので、瓦のデザインは控えめに、シンプルで美しいものが選ばれました

 

水道栓はこの溝の脇に移設され、小さなお子様も気軽に足を

洗えますし、真夏は通路に打ち水をすれば涼しくなります。

蛇口は、レトロ感に合うデザインを選んだものです。

 

(after)新設された水道蛇口

 

 

こうして、門扉と杉皮の塀が完成いたしました。

門扉を開けば、昼は青空に浮かんだ照明のアーチが、

夜は、照明のやわらかな光が出迎えてくれることでしょう。

 

(after)夕暮れに照明をつけて、門ごしに見た塀と通路

 

(after)通路に復活した、懐かしい照明の灯り

f

(after)新しい塀にある足元照明の光は、通路の照明光と一体化し、石やしっくいをやわらかく輝かせます

 

(after)日没後、門から玄関へと歩き、道路側をふりかえったところ

 

おつきあいいただき、ありがとうございました。

 

…次回は、家のリフォームについてお届けいたします。

設計担当者が奮闘しております、ご期待ください。

 

Blogged by 小川 還

 

 

 

京都市南区『子供を育てやすい町家』改修VOL.4 完成です!!

京都市南区『子供を育てやすい町家』の完成編です。

私たちが昨年施工させていただいた建築の中で代表的なものだったと思います。 この建築のプランナーを務めた新造は、一度に複数の建築の担当をしません。 『 1棟入魂 』 が彼女の信条です。 現場に通う頻度も高く、その拘(こだわ)りは、最後の最後まで続きます。 共に働く私ですら、その姿勢には敬服の念を感じています。

今回のこの建築は、今から子育てをされるまだお若いご夫妻の新居として、プランさせていただきました。 引渡しに際して、その施主様ご夫妻が夕方暗くなろうとする中で、いつまでもその外観を眺め続けていらした姿に、胸が熱くなりました。 建築をしていて、一番嬉しい瞬間です。

『 良いものを造りたい 』 『 美しいものを造りたい 』 『 可愛いと喜んでもらえるものを造りたい 』 と常に思っています。

プロでなくても、とてもセンスが良く、素晴らしいご提案をしてくださる施主様がいらっしゃることは、事実です。 ただ  『  こんな家を造りたい 』  という思いを実際に形にしていくことは、容易なことではありません。 細かいバランスやディーテイル(細かいデザインや納め方)を考慮しながら、トータルに考えて建築を進めることは、たいへん難しく、お客様にその一つ一つを聞いて、施工してしまうと、『 お客様のイメージされていた欲しい形 』 とは、『 違う物 』 ができてしまうことの方が一般的だと思います。 だからこそ建築の専門家としての私たちの存在価値が有るのだと信じています。

時間をかけて施主様の 『 欲しい形 』 をヒヤリング(じっくりとお客様のお話を聞くこと)を通して理解していきます。 そしてそのイメージをできる限り正確に捉(とら)えて、私たちのアイデアやデザインをプラスした形でプランニングを制作します。

2つのプランを提出することはありません。 『 最善を尽くした1プラン 』 をご提案しています。

施主様の言われるがままをプランするという設計士がいますが、私たちは敢(あ)えて、イメージのみを聞いた上で、細かい部分までご提案しています。 そこにはある意味、逃げ場のないリスクが存在します。  それでも、そうでなければ  『良い物 』 はできないと考えています。

この 『 子供を育てやすい町家 』 をご発注してくださいました施主様は、初めにご提出したプラン通りの内容で、ほぼそのまま建築をさせてくださいました。 だからこそ、私もプランナーもなおさらに、最後の最後までこの家に 『 一棟入魂 』 で臨めたのかもしれません。

ここまで信頼してくださった施主様には、感謝の念でいっぱいです。 このことは、一生涯忘れられないことだと思っております。

以下は、今の私達の精一杯の建築です。

勿論、これからなおいっそう精進して、さらに良い建築を志し続けます。  末永いご贔屓のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

Blogged by 松山 一磨(いつま)

 

左から玄関、自転車スペース、子供たちのフリースペース。 大きく見えますが間口は5mです。

 

手前は子供たちのフリースペースです。 ここからも出入りできます。 汚れた手足を表のモザイク造りの洗い場で綺麗にしてから室内へ・・・

 

もともとこの建物に有ったメタル製の花台です。 とてもお洒落な形をしています。 錆を落とし、不要な部分は撤去し、さらに溶接補強して生まれ変わりました!! 次の30年、また頑張ってください。

 

竪の格子で揃えたデザインです。 それぞれの格子のサイズを変えることでバランスに変化がついています。 この『バランスの変化』がある意味『美しさ』でもあると感じています。

 

玄関の片引き戸を空けた状態です。 表側の土間のデザインをそのまま玄関内部まで連続させています。

 

玄関網戸も木製で製作しました。 ネットはステンレスで耐久性をアップさせる仕様にしています。

 

一見お茶室風の3帖間。 子供たちの憩いの場。 ちょっとした来客時など、奥のリビングでなくここでお話することも可能です。

 

玄関収納はオーダー製のものを誂(あつら)えました。 飾り台は銀杏(いちょう)の無垢材。 表の路(みち)から格子のFIXを通して、飾ったお花がさり気無く見える設計になっています。

 

施主様拘(こだわ)りの玄関収納内部。 何を置くかを決めた上での設計と施工です。 電動自転車のバッテリー充電用のコンセントも設置してあります。

 

玄関廊下。 このフローリングは、フランス製チョウナ加工の無垢材です。 左はLDK入口。 昭和初期製作のアンティーク建具です。 ガラスを装着し、塗装をして再登板!! 正面のお部屋は子供のフリースペースの玄関からの様子です。 一見お茶室っぽい感じではありませんか?

 

お茶室をイメージした子供たちのためのフリースペース。 天井は格(ごう)天井にして、色の違う和紙調のクロスを市松仕様で施工。 床面は畳ですが、和紙をコーティングした色褪(あ)せしない、汚れの拭き取りやすい素材です。

 

玄関廊下からリビングを臨んだ様子。 右側は2階への階段室扉。 左はキッチンですが、来客者からキッチンが丸見えにならないように格子のパーテーションをつけました。 また幼児が自由にキッチンに入れないように鍵つきの格子扉を設置しています。

 

リビング内部から見た入口付近の様子。 アンティーク建具が町家の雰囲気を醸し出してくれます。 床は松の無垢フローリング。 塗装は柿渋+ベンガラの日本古来からの天然素材です。

 

LDKの一番奥、増築して天井を高くしたもっとも寛(くつろ)げるスペースに家族が憩(いこ)うリビングゾーンを配置しました。 その真上には大型の天窓が有ります。

 

東西に窓の無い町家。 天窓は明かりを取り入れる最強のパーツです。 天井は構造材を出してナチュラルな雰囲気を演出してみました。

 

奥様のご希望でキッチンは家族の顔が見える対面キッチンに。 風通しを考えて窓を多めに設置しています。 これも東西面に窓が無いことへの対策です。

 

モザイクタイル造りのキッチンカウンター。 LDKの中心に位置する、この町家の新たな顔の一つとして、製作しました。

 

レトロ感満点のモザイクタイル。 『 古いが新しい 』 という言葉がぴったりなモザイクタイル。 弊社お勧め素材の優等生です。

 

弊社では、取り壊された町家から回収された江戸時代~昭和初期製作のアンティーク建具を好んで再利用しています。 新品では決して表現できない味わい深さがあります。 これもまた弊社お勧め素材の優等生です。