『 最近の記事 』
After:リノベーション後の外観
六条通りにほど近い、100年以上の歴史を持つ京町家。
完成編①と②をお届けしてきましたが、いよいよ最終回をお届けします。
前回までのお話はこちら→
vol.1
vol.2
vol.3
vol.4
vol.5
vol.6
こちらの町家は、初代の持ち主が骨董商だったこともあり、細部にまで意匠が凝らされ、随所に趣のある設えが見られました。
中でも私たち吟優舎のスタッフが特に感銘を受けたのが、「天井」の美しさです。
Before:解体中の2階
天井が語る、時間の記憶
vol.3でも少しご紹介したこちらの天井。
年月を重ねたからこそ醸し出される深い趣がありました。
「この天井は、ぜひ新しい暮らしの中にも残したい」
——その想いを形にし、住まいと自然に調和させています。
After:完成後の2階リビング
重厚感ある天井の下に広がる、2階のリビング。
お部屋の入口にはアーチ開口を設け、空間に柔らかな曲線と趣を添えています。
また、垂れ壁と窓のあいだには、職人技が光る網代天井が。
こちらも丁寧に保存し、当時の面影を今に伝えています。
After:元の天井を生かした網代天井
水屋の記憶を受け継ぐ御手洗
リビングの隣に位置する御手洗は、もともと茶席の準備を行う「水屋」があった場所。
Before:水屋の跡
After:2階御手洗
かつての天井をそのまま残し、空間に流れる“時間の重なり”を静かに感じられる設計となっています。
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Before:解体中
After:リノベーション後
こちらは、かつて床の間だった一角です。
段違い棚や布製のふすまをそのまま活かし、意匠はそのままに、ワークスペースへと生まれ変わりました。
あらかじめデスクの設置を決めることで、コンセントの高さも最適な位置に設定しています。
吟優舎では、家具や家電を事前に施主様にご決定いただき、サイズや形状に合わせて図面へと反映させていきます。
ベッドサイドも、心地よく
After
vol.3でもご紹介した、造作のベッドサイドテーブル。
ベッドの高さにぴったりと合わせているため、使い勝手も抜群です。
暮らしのなかで感じる“ちょうどいい”の積み重ねが、住まいの満足感につながります。
大正ロマンが香る、和洋室へ
Before:解体前の2階座敷
After:部屋をふたつに分け、天然素材のフローリングを設えた和洋室へ
伝統的な意匠に、現代の暮らしやすさを織り交ぜた空間。
まさに「大正ロマン」が香るような、懐かしさと新しさの調和が感じられるお部屋になったのではないでしょうか。
数寄屋造りの京町家、これにて完成です
今回で、こちらの町家リノベーションのご報告は最終回となります。
数寄屋造りの美しい京町家に携わることができ、私たち吟優舎としても大変光栄でした。
最後に、施主様へ心より御礼申し上げます。
この素晴らしい町家の再生に際し、常にあたたかく、丁寧にご対応くださったことに深く感謝しております。
今後とも、末永いご縁を賜りたく存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。
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2025年5月8日 3:39 PM |
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下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.6
After:リノベーション後の外観
六条通りにほど近い、100年以上の歴史を持つ京町家。
前回は完成編①として、ガレージや玄関まわりをご紹介しました。今回は庭に面したリビングやダイニングキッチンなど、住まいの中心となる部分をご紹介します。
前回までのお話はこちら→
vol.1
vol.2
vol.3
vol.4
vol.5
After:ダイニングキッチン
玄関から入るとすぐに広がるのが、ダイニングキッチン。
以前のキッチンは離れにあり、靴を履いて移動しなければならない不便さがありました。
今回のリノベーションでは、リビングと一体となるダイニングキッチンへと再構成。
家族が自然と集まり、ゆったりとした時間を楽しめる空間へと生まれ変わりました。
キッチンの造作カウンターも、「ただのカウンターではないものを」という施主様のご希望を反映し、なぐり加工を施した台の上にモザイクタイルをあしらい、デザイン性のある仕上がりに。
タイル選びのこだわり
施主様と吟優舎スタッフのLINEグループ会話
タイルは色の組み合わせひとつで、空間の雰囲気が大きく変化します。
施主様に4つのパターンをご提案し、お好みの色味を選んでいただきました。
こうした細やかなやり取りには、施主様と吟優舎のLINEが大いに役立っています。
完成したタイル部分
庭を生かした設計
Before:解体後の庭まわり
今回の設計で最も大切にしたのが、庭まわりの設計です。
After:完成後の庭まわり
町家ならではの美しい奥庭を最大限に生かすため、庭に面した窓から渡り廊下の出入口までを4枚ガラスとし、室内からも緑豊かな景色を存分に楽しめるよう設計しました。
広々としたリビングからは、四季折々の表情を見せる庭が一望でき、心地よい開放感に包まれます。
さらに、もともと庭の一部だった場所には、渡り廊下を設置。
ガラス窓を採用することで、冬の寒さを防ぎながら、年間を通して自然を身近に感じられる空間となりました。
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ご高齢のお母様のお部屋にも工夫を
廊下の奥は、ご高齢のお母様のお部屋です。
庭に面した大きな窓を設けることで、室内からゆっくりとお庭が眺められるようにしました。
吟優舎の町家リノベーションのこだわり
吟優舎のリノベーションでは、庭を設計の中心に据えています。
庭に面した和室(リビング)、浴室、御手洗いを庭に隣接した場所に配置し、どこからでも緑を感じられる住まいを目指しています。
可能な限り庭に面した広い開口を設け、光と風、そして庭の緑をたっぷりと取り込むことで、開放感あふれる心地よい空間を追求しています。
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2025年4月16日 5:09 PM |
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下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』 vol.5
Before:リノベーション前の外観
六条通りにほど近い、100年以上の歴史を持つ京町家。
前回は、エントランスに移設したアンティークの灯りや、船底天井を生かした2階部分をご紹介しました。
前回までのお話はこちら→
vol.1
vol.2
vol.3
vol.4
今回も、完成した部分をご紹介していきます。
歴史と施主様のこだわりが息づく空間、どうぞご覧ください。
この町家の特徴のひとつが、玄関庭と屋内茶室があったこと。
今回のリノベーションでは、この部分をガレージへと再構成しました。

After:新しく生まれ変わった玄関とガレージ
ガレージの奥に玄関と勝手口を配置。もともと茶室だった空間が、施主様の暮らしに寄り添うガレージへと変わりました。
玄関の壁に見える黒い柱は、もともとの大黒柱。この家の歴史を象徴する大切な存在だからこそ、あえて隠さずにデザインに生かしました。
3つの天井が織りなす玄関
玄関の天井には、異なる3つのデザインが共存しています。
網代天井:薄く削いだ竹を編み込んだ様式。上品な趣を演出。
竿縁天井:伝統的な和風建築に多い、細い角材を使った様式。
元々の天井:家の歴史や風合いを残す工夫。
異なる表情が響き合い、訪れる人を迎え入れます。
猫足スタンプと金魚手洗い
勝手口の土間には、猫好きの施主様がご用意された猫足スタンプが。職人がバランスを考え、ひとつ一つ押しました。
その先には、金魚柄タイルがかわいい手洗いを。ブロックと市販のガーデンパンを組み合わせ、タイルを貼って一体感が出るように工夫しています。
施主様のこだわりが詰まった、とても可愛らしい一角になりました。
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ウッドデッキへと変化した通り庭
玄関から奥へと続く土間「通り庭」は、ウッドデッキにリノベーション。既存の透明素材の屋根を活かし、可動収納式の物干しを設置。
天気に関わらず洗濯物を干すことができるようになり、機能性がぐんと向上しました。
まだまだ見どころ満載
歴史とこだわりが詰まった大正ロマン数寄屋造りの町家。次回はまた別の空間をお届けします。お楽しみに。
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2025年3月29日 2:42 PM |
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京町家コラム【嫁隠し】
京町家には、今の住宅にはないユニークな工夫がたくさんあります。
今回は、現場からその一例をご紹介します。
こちらは、町家の玄関から奥までを貫く土間、通り庭です。
奥の方の通り庭は、主婦たちが忙しく立ち働くことから「ハシリ」とも呼ばれます。
※解体前の町家の通り庭
通り庭の中ほどに、見つけました。
「嫁隠し」の跡。
嫁隠しとは、一種の衝立(ついたて)のこと。
来客に家の奥を直接見せないようにする工夫のひとつです。
名前の由来は「客から嫁の姿を隠すため」とされていますが、機能はそれだけではありません。
接客や商売をする「表の間」。
そして家族が過ごす「プライベート空間」の境界としての役割もありました。
酒屋さんやお米屋さんなどの御用聞き、使用人など、さまざまな人が出入りする京町家では、この嫁隠しの前で家人に声をかけ、許可を得てから奥へ入ることができました。
また、家の人にとっては、客に顔を見せる前に身だしなみを整える、ちょっとしたスペースとしても活用されていたようです。
嫁隠しなど珍しい意匠については、こちらの記事もご覧ください。
嫁隠しのある
『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.1
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2025年3月17日 12:14 PM |
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京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.6
京都市上京区西陣の京町家リノベーション。完結編(後編)をお届けします。
「実際に住んでいる町家にお客様をお迎えし、アットホームなおもてなしを」。
施主様が長年温めてこられたコンセプトの下に、観光・食事・鑑賞が楽しめるプライベート空間「あそんでいきなはれKYOTO」として生まれ変わりました。
前回までのお話はこちら→
vol.1
vol.2
vol.3
vol.4
vol.5
前回vol.5では、おもてなしの中心となる華やかな「ダイニングキッチン」をご紹介しました。
その奥に広がるのは、京町家らしい座敷と緑鮮やかなお庭の景色です。
BEFORE
AFTER
AFTER
庭に面した開口は、できるだけ広く取ることで、最大限の視界と光、風を取り込んでいます。
座敷は、おもてなしの場として、また舞妓さんや芸妓さんを招いてのお座敷遊びにも使われます。
掘り炬燵を設置した座敷
床には設備を入れていますので、畳を一部上げれば掘り炬燵としても使用できます。
施工過程
座敷と縁側の境の欄間には「黒竹(くろちく)の欄間」を採用しました。
黒竹とは竹の一種で、古くから建材や工芸品などに利用されてきた、素材本来の黒色が人気の素材です。
2mほどの黒竹のうち、最も細い先端30cmだけを選び抜きます。
それを職人の手で「一・二・三(ひふみ)」の間隔で並べていきます。
先端以外の太い部分は、あえて使用しません。
太い部分が入るとどうしても繊細さに欠けてしまうためです。より美しい意匠を求めるが故のこだわりです。
黒竹の後ろには、曇り調のカッティングをグラデーション状に施したガラスを嵌めています。黒竹の欄間を引き立てるとともに、美しい化粧を施した縁側の軒裏が、室内からも見えるようにしています。
最後に、庭についてもお伝えします。
吟優舎の町家リノベーションにおいての造園は、設計のコアとなる重要な部分です。
植栽はもちろん、灯籠や蹲(つくばい)、手水鉢(ちょうずばち)、石の一つまで自社で取り揃え、自社でプランニングし、専門の造園職人さんと一緒に作庭しています。
BEFORE
AFTER
こちらの造園では、施主様がご先祖様から大切に受け継がれてきた庭石が最も美しく見えるよう、専門の職人さんと共に作庭いたしました。
築100年を超える京町家のリノベーション。
弊社としても多くのチャレンジがありながらも、お客様の温かいご協力のもと、ついに完成することができました。
離れに住まわれながらの工事は、大変なご苦労であったことと思います。
終始温かくまた忍耐を持ってご対応下さった施主様には、心より深くお礼申し上げます。
誠に有難う御座います。
引き続き末永い御贔屓の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
blogged by 松山一磨 & 黒川京子
歴史的意匠建造物のプライベート空間、贅沢で優雅な「あそんでいきなはれKYOTO」様。
舞妓さんとのお座敷遊び体験など、非日常な京都時間を楽しめる場所となっています。詳しくはホームページをご覧ください。
『あそんでいきなはれKYOTO』様のホームページはこちらをクリック
2025年1月23日 5:55 PM |
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