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伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.9

名水で知られる京都伏見の「御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)」から徒歩数分。築100年ほどになる連棟の古民家リノベーション。いよいよ完結編をお届けします。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5 vol.6 vol.7 vol.8

昔ながらの町家に、必ず造られてきたものといえば「庭」。

解体後の座敷と庭

一日中室内が薄暗い京町家にとって、窓は美しい景色を愛でるだけでなく、通風と彩光のためになくてはならないものでした。
庭があることで家の中に新鮮な空気と光を取り込むことができるのです。

吟優舎のリノベーションにおいても、庭は大切な空間。庭を囲むように居間、浴室、洗面室、お手洗いを配置し、風と光を最大限に取り込むプランを基本としています。

こちらのリノベーションでも、施主様がご両親から受け継がれた庭を中心にしたプランをご提案しました。

リノベーション前の廊下とお風呂です。



ゾーニングはそのままに、美しく整え、新しい意匠も盛り込みました。

廊下の入口は、茶室の入口=火灯口(かとうぐち)をイメージしたアーチ開口に。

お風呂への期待感が高まるようなアプローチを意識しています。

アーチ開口手前のスペースには、アンティークショップでご購入された本棚がすっぽり収まっています。この上にはライトを置きたいということで、コンセント差込口も設置しました。

ブログvol.5でお伝えしたように、施主様には工事前に家具のサイズをあらかじめお知らせいただきます。それに合わせてコンセントの位置や壁の位置を決定しますので、失敗がありません。

廊下の幅はリノベーション前よりも広く取り、格子状の意匠を凝らした天井にはダウンライトを仕込みました。

少し狭さを感じさせていた脱衣所も、すっきりと広くなりました。

システムバスは、施主様がショールームにて選ばれた、タカラスタンダードの「GRANSPA」。掃除しやすい床材が魅力です。

参考:ブログvol.2

そして一番のポイントは、湯船から臨む景色です。

「庭を眺めながら浸かるのが楽しみです」と仰っていた施主様。 新しいお風呂を使われた後には「気持ち良かったです、まるで別世界でした」と喜んでおられました。

お風呂のリノベーションでは、窓からの風景を楽しみにされる施主様も多くいらっしゃいます。

吟優舎では、庭への眺めをよくするために、浴室の窓を出来るだけ浴槽に寄せて低く設置するようにプランニングしています。

庭を囲む塀は、焼き板にし落ち着きのある印象に。

いくぶん鬱蒼としていた庭は、庭師の手により風情が感じられる風景へと生まれ変わりました。

四季によって移ろう自然の景色は、飽きることがありません。
日々の暮らしに潤いをもたらすことでしょう。

最後に、隣家にお住まいの中で行われた工事。施主様には大変なご苦労であったことと思います。終始にこやかにご対応くださり、心より深く御礼申し上げます。

誠に有り難うございました。

blogged by 松山一磨 & 黒川京子

伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.8

京都伏見の「御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)」近くの古民家リノベーション。今回は完成編②をお届けします。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5 vol.6 vol.7

こちらは、新しくなったキッチンです。

施主様がタカラスタンダードルームにて選ばれたホーローキッチンが設置されました。
(その様子はvol.2でご紹介しています)

ホーローキッチンと壁のタイルは明るい色で統一されているので、すっきりと清潔感があります。
あえて高いところに設えた、キッチン上部の窓。昼間はここから自然光が入り、明るく手元を照らします。

大変読書家でいらっしゃる施主様ご夫妻。以前からお持ちの本棚、そして新たにご購入された本棚は、あらかじめ決めていた位置に設置されました。

リノベーション前の室内
リノベーション後

両サイドに窓がなく奥行きが深い連棟の町家。
奥庭に面した開口をなるべく広く取ることで、開放感が感じられる室内になりました。


手前の部屋と奥の部屋は3連の引き込み戸で仕切ることができ、戸をしまえば最大限に光を取り入れることができます。

施主様は、庭の草花がお好きです。
そこで庭の緑を風景の一部として借りるいわば「借景」を意識。
庭に面した窓を大きめに、そして廊下も広めに設定しました。

施主様によると、小学生のお孫さんは輝くような緑のお庭が大変お気に入りだそう。
廊下に座ってずっとお庭を眺めておられるのだとか。
『おばあちゃん、こんな綺麗な庭は見たことがない』とまるで大人みたいな言い方をすると、笑いながら楽しくお話ししてくださいました。

施主様の喜ばれるお声を聞くと、私どもも大変嬉しい気持ちになります。

blogged by 黒川京子

伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.7

「御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)」は、伏見全町の総氏神であり、環境省「名水百選」に選ばれた「御香水(ごこうすい)」が湧くことでも有名です。 こちらにほど近い古民家リノベーション、完成編①をお届けします。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5vol.6

改装前

施主様の家は、築100年ほどになる連棟の京町家。
30年ほど前に改装され、町家らしい面影はなくなっていました。


羽柴、福島、小早川など大名ゆかりの地名が残るこの地域には、かつて坪庭付きの立派な町家が多く残っていたとか。

年月を経るうちに周りの家は次々と現代風の家に変化。そんな中でも施主様は「自分の住まいを直すなら、町家風に」と考えていたそうです。

ご依頼を受けた吟優舎がご提案したのは「蔵戸をイメージした町家リノベーション」。

玄関扉にアンティークの蔵戸を使用し、ファサード(正面外観)には町家らしい格子を設るプランです。

ご提案したプラン図

ご契約後、実際に使用するアンティーク蔵戸を施主様にご確認いただきました。

使い込まれた味わいが感じられる、かなり広めの蔵戸です。

金具部分などディティールにも趣がある蔵戸。全体の傷みを補修し、磨き上げてから設置します。

蔵戸というと重く古めかしいイメージがあるのではないでしょうか。

吊り引き戸にすることで、動きは大変なめらかで軽やか、スムーズです。

戸を開ければ、墨モルタルにモザイクタイルを埋め込んだ土間が現れます。

アンティークペンダントライトの光が優しく照らす、大正モダンが薫るエントランスです。

改修前とは大きく変化したファサード。威風堂々とした蔵戸です。



「ご近所の方が前を通るたび『すごい!何が起こったの!?』と覗いて行かれるんですよ」と笑顔の施主様。

カメラマンによる撮影時にも、ご近所の方の「すごいわねー!」という驚きの声が。

思いがけず、嬉しい評判を耳にすることができました。

blogged by 黒川京子

伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.6

「伏見御香宮の古民家リノベーション『蔵』」の続報です。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5

木工事が順調に進み、完成に近づいたある日。
施主様に、縁側と玄関土間に設置するライトをお選びいただくことになりました。

部屋の雰囲気作りに欠かせない「照明」
どのような照明デザインを選ぶかによって、部屋の雰囲気はガラリと変わります。

まずは吟優舎が保有しているアンティークペンダントライトの中から、施主様宅に合いそうなものをいくつか選定。 その後、ラインにてご提案しました。(写真は候補の一例です)

今回はお写真でお伝えしましたが、直接現場にお持ちし、施主様とともに選ぶ場合もあります。

縁側には、こちらのアンティークライトを選ばれました。

実際に設置した様子です。

かさの部分が花のようにふわりと広がるペンダントライト。
レトロな華やかさがあり、やわらかな光が廊下と庭を優しく照らします。

玄関の土間上には、丸みのあるアンティークライトを選ばれました。

設置した様子です。

ころんとしたフォルムから漏れる光が、タイルを埋め込んだ飾り土間とマッチ。レトロな趣を引き出しているのではないでしょうか。

昭和初期ごろのアンティーク照明は、古民家や京町家と好相性なことから、よくご提案させていただく照明のひとつです。

数回に分けてお伝えしてきた伏見御香宮の古民家リノベーション『蔵』、近々完成の様子をお伝えいたします。

blogged by 黒川京子

京都市東山区 『山手の街並みに佇む町家リノベーション』 vol.7

京都東山区の『山手の街並みに佇む町家リノベーション』
いよいよ完成編をお届けします。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5 vol.6

築90年以上も経つ古い町家が、リノベーションによって町家らしい姿に生まれ変わりました。 ぜひご覧ください。

リノベーション前

昭和の改装で増築しサッシなどが取り付けられた、リノベーション前の町家。

そしてリノベーション後はこちらです。

木製格子がついてガレージも新たになり、色調も統一され落ち着いた印象に変化しました。

新しいのに時代はむしろさかのぼったような、そんな雰囲気が感じられるのではないでしょうか?

では中をご案内いたします。

改修前の玄関の様子です。ごく一般的な古民家のものでした。

そして新しくなった玄関は…

玄関の土間に墨モルタルを流し込み飾りタイルを入れることで、モダンさも可愛らしさもある表情に変化しました。

飾りタイルの玄関土間は、帰ってきた時にどこかホッとするようなぬくもりがあります。

なぐり調の式台も味わいがあります。
夏には裸足で歩けば、木の質感を存分に感じられてとても心地よいことでしょう。

アンティーク風のペンダントライトが、優しく玄関を照らします。

このライトがあることで、可愛らしさがぐんと引き立つと思いませんか?

玄関の横は小さな洋室になっています。
和室と洋室の間に採用したのは、磨き上げられたアンティーク建具。
古いものを手入れして使うと、新しいものにはない味わい深い雰囲気の決め手となります。

前回お伝えしたように、トイレは玄関横のこちらに再設定しました。
まだまだお元気な施主様ですが、10年後のご年齢や生活スタイルを想定し、ご提案させていただきました。

新たに整えたガレージから、室内を見たところです。
車だけでなく電動自転車用も置けるようになっています。そのためのコンセントも設置いたしました。

アンティーク建具を開けると、和室そしてLDKへとつながっています。
京町家らしい奥に長い間取りが、現代の暮らしへと生かされています。

和室の襖は京唐紙に張り替えました。

京唐紙の面白い点は、何と言っても紙の色とインクの色でお家の雰囲気をガラリと変えるところ。

こちらのお宅は紙もインクも落ち着いた色調をお選びになったので、シックモダンな雰囲気に仕上がっています。

庭に面したLDK

vol.4の回で、施主様が京都御池タカラスタンダードショールームで選ばれたシステムキッチンです。

家電収納棚や柱の色など全体的な色調とよくマッチしています。キッチンの壁面にはモザイクタイルも貼られ、すっきりとした風情にまとまっています。

このLDKにはテーブルと椅子、ソファとテレビを置かれる予定です。

キッチンの奥に洗面、お風呂と続きます。
水回りが一直線で続いているので、家事などの面でとても便利ではないでしょうか。

何度かお伝えした、キッチンの天井です。
「元々の火袋を復元することで、町家独特の天井の低さを解消した広々とした空間を作る」という今回のプラン。

吹き抜けにすることで開放感があり、また高窓から光も取り入れられるようになりました。和風のライトも雰囲気を高めています。

こちらはお風呂の窓を縁側から見たところ。
浴槽に浸かった時にお庭が見えるよう、窓の位置を微調整しています。
弊社では、こういった細かい配慮も欠かせないと考えています。

新しいお風呂も設置されました。こちらでゆったりとバスタイムを楽しまれることでしょう。

建物は完成したとお伝えしましたが、お庭の方は未完成でこれから造園作業に入ります。お庭が完成した際には、改めてこちらでお伝えする予定です。

最後になりましたが、暑い時期から寒い冬まで何度も打ち合わせに足をお運びくださった施主様。
大工に差し入れなど多くのお心遣いをいただき、厚く御礼申し上げます。

「希望していた以上に良い家に仕上がった」とお喜びの言葉までいただき、スタッフ一同とても嬉しく感じております。

心より深くお礼申し上げます。誠に有難う御座いました。

blogged by 松山一磨 & 黒川京子