京町家コラム【嫁隠し】


京町家には、今の住宅にはないユニークな工夫がたくさんあります。
今回は、現場からその一例をご紹介します。
こちらは、町家の玄関から奥までを貫く土間、通り庭です。
奥の方の通り庭は、主婦たちが忙しく立ち働くことから「ハシリ」とも呼ばれます。

通り庭の中ほどに、見つけました。
「嫁隠し」の跡。

嫁隠しとは、一種の衝立(ついたて)のこと。
来客に家の奥を直接見せないようにする工夫のひとつです。

名前の由来は「客から嫁の姿を隠すため」とされていますが、機能はそれだけではありません。
接客や商売をする「表の間」。
そして家族が過ごす「プライベート空間」の境界としての役割もありました。
酒屋さんやお米屋さんなどの御用聞き、使用人など、さまざまな人が出入りする京町家では、この嫁隠しの前で家人に声をかけ、許可を得てから奥へ入ることができました。
また、家の人にとっては、客に顔を見せる前に身だしなみを整える、ちょっとしたスペースとしても活用されていたようです。

嫁隠しなど珍しい意匠については、こちらの記事もご覧ください。
嫁隠しのある
『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.1
blogged by 黒川京子
2025年3月17日 12:14 PM | カテゴリー:( 1. お知らせ ) | コメント(0)