京都市南区『子供を育てやすい町家』の完成編です。
私たちが昨年施工させていただいた建築の中で代表的なものだったと思います。 この建築のプランナーを務めた新造は、一度に複数の建築の担当をしません。 『 1棟入魂 』 が彼女の信条です。 現場に通う頻度も高く、その拘(こだわ)りは、最後の最後まで続きます。 共に働く私ですら、その姿勢には敬服の念を感じています。
今回のこの建築は、今から子育てをされるまだお若いご夫妻の新居として、プランさせていただきました。 引渡しに際して、その施主様ご夫妻が夕方暗くなろうとする中で、いつまでもその外観を眺め続けていらした姿に、胸が熱くなりました。 建築をしていて、一番嬉しい瞬間です。
『 良いものを造りたい 』 『 美しいものを造りたい 』 『 可愛いと喜んでもらえるものを造りたい 』 と常に思っています。
プロでなくても、とてもセンスが良く、素晴らしいご提案をしてくださる施主様がいらっしゃることは、事実です。 ただ 『 こんな家を造りたい 』 という思いを実際に形にしていくことは、容易なことではありません。 細かいバランスやディーテイル(細かいデザインや納め方)を考慮しながら、トータルに考えて建築を進めることは、たいへん難しく、お客様にその一つ一つを聞いて、施工してしまうと、『 お客様のイメージされていた欲しい形 』 とは、『 違う物 』 ができてしまうことの方が一般的だと思います。 だからこそ建築の専門家としての私たちの存在価値が有るのだと信じています。
時間をかけて施主様の 『 欲しい形 』 をヒヤリング(じっくりとお客様のお話を聞くこと)を通して理解していきます。 そしてそのイメージをできる限り正確に捉(とら)えて、私たちのアイデアやデザインをプラスした形でプランニングを制作します。
2つのプランを提出することはありません。 『 最善を尽くした1プラン 』 をご提案しています。
施主様の言われるがままをプランするという設計士がいますが、私たちは敢(あ)えて、イメージのみを聞いた上で、細かい部分までご提案しています。 そこにはある意味、逃げ場のないリスクが存在します。 それでも、そうでなければ 『良い物 』 はできないと考えています。
この 『 子供を育てやすい町家 』 をご発注してくださいました施主様は、初めにご提出したプラン通りの内容で、ほぼそのまま建築をさせてくださいました。 だからこそ、私もプランナーもなおさらに、最後の最後までこの家に 『 一棟入魂 』 で臨めたのかもしれません。
ここまで信頼してくださった施主様には、感謝の念でいっぱいです。 このことは、一生涯忘れられないことだと思っております。
以下は、今の私達の精一杯の建築です。
勿論、これからなおいっそう精進して、さらに良い建築を志し続けます。 末永いご贔屓のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
Blogged by 松山 一磨(いつま)
左から玄関、自転車スペース、子供たちのフリースペース。 大きく見えますが間口は5mです。
手前は子供たちのフリースペースです。 ここからも出入りできます。 汚れた手足を表のモザイク造りの洗い場で綺麗にしてから室内へ・・・
もともとこの建物に有ったメタル製の花台です。 とてもお洒落な形をしています。 錆を落とし、不要な部分は撤去し、さらに溶接補強して生まれ変わりました!! 次の30年、また頑張ってください。
竪の格子で揃えたデザインです。 それぞれの格子のサイズを変えることでバランスに変化がついています。 この『バランスの変化』がある意味『美しさ』でもあると感じています。
玄関の片引き戸を空けた状態です。 表側の土間のデザインをそのまま玄関内部まで連続させています。
玄関網戸も木製で製作しました。 ネットはステンレスで耐久性をアップさせる仕様にしています。
一見お茶室風の3帖間。 子供たちの憩いの場。 ちょっとした来客時など、奥のリビングでなくここでお話することも可能です。
玄関収納はオーダー製のものを誂(あつら)えました。 飾り台は銀杏(いちょう)の無垢材。 表の路(みち)から格子のFIXを通して、飾ったお花がさり気無く見える設計になっています。
施主様拘(こだわ)りの玄関収納内部。 何を置くかを決めた上での設計と施工です。 電動自転車のバッテリー充電用のコンセントも設置してあります。
玄関廊下。 このフローリングは、フランス製チョウナ加工の無垢材です。 左はLDK入口。 昭和初期製作のアンティーク建具です。 ガラスを装着し、塗装をして再登板!! 正面のお部屋は子供のフリースペースの玄関からの様子です。 一見お茶室っぽい感じではありませんか?
お茶室をイメージした子供たちのためのフリースペース。 天井は格(ごう)天井にして、色の違う和紙調のクロスを市松仕様で施工。 床面は畳ですが、和紙をコーティングした色褪(あ)せしない、汚れの拭き取りやすい素材です。
玄関廊下からリビングを臨んだ様子。 右側は2階への階段室扉。 左はキッチンですが、来客者からキッチンが丸見えにならないように格子のパーテーションをつけました。 また幼児が自由にキッチンに入れないように鍵つきの格子扉を設置しています。
リビング内部から見た入口付近の様子。 アンティーク建具が町家の雰囲気を醸し出してくれます。 床は松の無垢フローリング。 塗装は柿渋+ベンガラの日本古来からの天然素材です。
LDKの一番奥、増築して天井を高くしたもっとも寛(くつろ)げるスペースに家族が憩(いこ)うリビングゾーンを配置しました。 その真上には大型の天窓が有ります。
東西に窓の無い町家。 天窓は明かりを取り入れる最強のパーツです。 天井は構造材を出してナチュラルな雰囲気を演出してみました。
奥様のご希望でキッチンは家族の顔が見える対面キッチンに。 風通しを考えて窓を多めに設置しています。 これも東西面に窓が無いことへの対策です。
モザイクタイル造りのキッチンカウンター。 LDKの中心に位置する、この町家の新たな顔の一つとして、製作しました。
レトロ感満点のモザイクタイル。 『 古いが新しい 』 という言葉がぴったりなモザイクタイル。 弊社お勧め素材の優等生です。
弊社では、取り壊された町家から回収された江戸時代~昭和初期製作のアンティーク建具を好んで再利用しています。 新品では決して表現できない味わい深さがあります。 これもまた弊社お勧め素材の優等生です。
2013年4月5日 4:21 AM |
カテゴリー:子供を育てやすい町家 VOL.4 |
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工事の途中寄り道して訪れた伊勢神宮。
内宮へつづく門前町的参道の店舗建築。 この地方特有の無垢板を桟木(さんぎ)で押えた外壁が随所に見られます。 こんなその地方独特の建築仕様を見るのが好きなのです。
京都では、よく目にする花台がここに沢山ありました。 参考になる花台を地元京都で見て回ることがあるのですが、このお伊勢さん参道の店舗は、意外にも『花台』の宝庫でした!!
オーソドックスなものから、現代風にあしらったものまで色々あって、思わず写真撮りまくりの状態でした。 職業柄、どこへ行っても建築が気になり、触ったり、たたいたりと、ちょっと変な人に見えるかもしれませんね・・・(笑)
投稿写真最後の花台は、弊社が京都で造ったものです。
オーソダックスな花台ですね。
神殿造り風の竪格子が綺麗な花台
土台すぐ上の造作デザインが粋(いき)な雰囲気を付加しています。江戸風な感じでは・・・
こんなクロス形状の花台、初めて見ました!
竪格子をとても綺麗に納めた優れた造りです。
弊社製作の花台です。 詳しくは弊社ホームページ『ピックアップ施工例 古民家再生 京都市北区』でご覧になれます。
2012年4月4日 3:24 PM |
カテゴリー:2012年4月4日 伊勢の花台 |
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