『 最近の記事 』

猫と町家とアンティーク「好きなものと育つ家」 長岡京市Y様邸 

リノベーションは終わりではなく、始まりなのかもしれません。 年月を重ね、手をかけながら、自分らしい暮らしへと育っていく。 そんな過程こそが「家づくりの醍醐味」だと気づかされます。

2019年にリノベーションさせていただいたY様邸を再訪。 施主様の「その後の暮らし」を拝見する機会は、そう多くはありません。

町家風の外観。
玄関をくぐると──
わあ、素敵。

町家テイストとアンティーク、
そしてアジアの逸品が溶け合い、
趣あふれる世界が広がっていました。

ブリティッシュショートヘアの姉妹猫が、
のんびりとお出迎えしてくれます。

吟優舎にご依頼くださったのは、6〜7年前のこと。
もともと町家に惹かれ、
この昭和住宅を購入されました。

「購入の際は、吟優舎さんに
『ここなら理想に近いリノベーションができるんじゃないですか』
と言っていただいて決めました」

あれから数年。
Y様はリノベーション後も、家づくりを楽しまれています。


「DIYが好きで。いろいろな人に聞きながら、全部自分で手をかけました」

そう語るY様が見せてくださったのは、
アジアの古い薬箱をアレンジしたオリジナルのカウンター。

吟優舎が設えた、なぐり調のカウンター。
そこに施主様の工夫が加わり、
唯一無二の場所へと育っていました。

リノベーション直後
現在

意外な発想。
モロッカンタイルと
アンティークの薬箱テーブルが
驚くほど美しく調和して、
まるでもとからそこにあったようです。


施主様のご要望で設置した、アンティークガラスのキッチンボード。

ダークブラウンの内装に合わせて吟味した、同系色のタイル。

存在感が大きい冷蔵庫には、施主様お手製の木製カバーを。

アンティーク市で見つけた椅子たちは、施主様自ら磨き上げて。
大正ロマンなペンダントライトがマッチ。

無機質なスイッチ類は、アジアのレリーフでおしゃれにカバー。

施主様がデザインしたステンドグラス。中央はなんと筍。

ちょっぴり年齢を重ねた猫ちゃんたち。
キャットウォークに上がることは減ったけれど
このお部屋がお気に入り。

猫たちが歩いて傷ついた無垢の床は、
こうやって補修。
「それも楽しいんですよ」とY様。

年月を経て、
お庭のもみじの木が、
すっかり大きくなっていました。
灯篭の上の苔がとってもいい感じ。

「全部に手をかけて思い入れが詰まっているので、全部が気に入ってます」

住み始めて5年以上。
その空間は、むしろ今がいちばんY様らしく輝いているように感じます。

リノベーションは終わりではなく、
新しい暮らしの始まり。

「住まいは育てるもの」

私たちもあらためて気づいた訪問となりました。

Y様による「お客様の声」も
合わせてご覧ください。
お客様の声

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加茂街道『賀茂川沿いに佇む京町家リノベーション』vol.2

趣あふれる「賀茂川沿いの京町家リノベーション」。
第2回では、設備選びと内装の打ち合わせの様子をお届けします。

前回のお話はこちら→ vol.1

施主様とともに「ぴったり」を探す一日

この日、施主様と吟優舎の女性スタッフが向かったのは、タカラスタンダードのショールーム。 キッチンや洗面台などの実物を見ながら、ぴったりの設備選びをお手伝いします。

現地では、専門スタッフの丁寧な説明を受けながら、実物を見て、触れて、確かめられるのが魅力です。

吟優舎では、女性設計プランナーが同行し、キッチンや洗面台の色合い、寸法、そしてご予算とのバランスまで、細やかに寄り添いながらサポートいたします。

空間全体の調和を一緒に考えていくことで、「こんなふうに暮らしたい」が少しずつ形になっていきます。

施主様は身長が高めの方。

実際にキッチンの前に立ってみて、「もう少し調理台が高い方がいいな」と数センチ高めの設計に。

また、「大きなシンクはいらないから、調理スペースを広くしたい」とのご希望もあり、ひとつひとつを体感しながら、ぴったりの仕様を選んでいきます。
こうした細かなサイズ感を確かめられるのも、ショールームならではの魅力です。

午前の見学を終えて、午後の打ち合わせに備え、いったんランチ休憩へ。

お食事の間にも、暮らしのこと、ご趣味のこと、お好きな色や風合いのこと…。いろいろなお話を伺います。


吟優舎では、ご希望を深く理解することで、お客様の夢を形にしたいと考えています。

今回の施主様は、進化の研究をされている方。
こんなお話をしてくださいました。

「古いものが好きなんです。進化も、急に変わるのではなく、少しずつ、でも確かに形を変えて、元になるものは続いていくんです。 家もそれと同じように、古いものに少しずつ手を入れて残っていくものに惹かれます」

そのお話を伺いながら、私たちも思わずうなずいてしまいました。
住まいもまた、時を重ねながら少しずつ姿を変えていくもの。
このリノベーションも、そんな流れの中にあるのだと、あらためて感じます。

キッチンまわりには、ご研究にまつわるモチーフを取り入れたいというアイデアも。
ピクトグラム風のタイルで、さりげなく遊び心を添える予定です。

午後からは事務所にて、内装の打ち合わせ。
素材のサンプルや図面を広げながら、丁寧に一歩ずつ話を進めていきます。

ふと「今日はお打ち合わせばかりでお疲れではないですか?」とお声がけすると、やさしい笑顔で、こうおっしゃってくださいました。

「いえ、こうしてひとつひとつ選んでいく時間が楽しいんです」
このひと言に、私たちも心がほどけるようでした。


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大切な住まいづくりを、ともに楽しみながら進めていけること。
それこそが、私たちの喜びでもあります。

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下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.6

After:リノベーション後の外観

六条通りにほど近い、100年以上の歴史を持つ京町家。

前回は完成編①として、ガレージや玄関まわりをご紹介しました。今回は庭に面したリビングやダイニングキッチンなど、住まいの中心となる部分をご紹介します。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5

After:ダイニングキッチン

玄関から入るとすぐに広がるのが、ダイニングキッチン。
以前のキッチンは離れにあり、靴を履いて移動しなければならない不便さがありました。



今回のリノベーションでは、リビングと一体となるダイニングキッチンへと再構成。 家族が自然と集まり、ゆったりとした時間を楽しめる空間へと生まれ変わりました。

キッチンの造作カウンターも、「ただのカウンターではないものを」という施主様のご希望を反映し、なぐり加工を施した台の上にモザイクタイルをあしらい、デザイン性のある仕上がりに。

タイル選びのこだわり

施主様と吟優舎スタッフのLINEグループ会話

タイルは色の組み合わせひとつで、空間の雰囲気が大きく変化します。
施主様に4つのパターンをご提案し、お好みの色味を選んでいただきました。

こうした細やかなやり取りには、施主様と吟優舎のLINEが大いに役立っています。

完成したタイル部分

庭を生かした設計

Before:解体後の庭まわり

今回の設計で最も大切にしたのが、庭まわりの設計です。

After:完成後の庭まわり

町家ならではの美しい奥庭を最大限に生かすため、庭に面した窓から渡り廊下の出入口までを4枚ガラスとし、室内からも緑豊かな景色を存分に楽しめるよう設計しました。

広々としたリビングからは、四季折々の表情を見せる庭が一望でき、心地よい開放感に包まれます。

さらに、もともと庭の一部だった場所には、渡り廊下を設置。
ガラス窓を採用することで、冬の寒さを防ぎながら、年間を通して自然を身近に感じられる空間となりました。

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ご高齢のお母様のお部屋にも工夫を

廊下の奥は、ご高齢のお母様のお部屋です。
庭に面した大きな窓を設けることで、室内からゆっくりとお庭が眺められるようにしました。

吟優舎の町家リノベーションのこだわり

吟優舎のリノベーションでは、庭を設計の中心に据えています。
庭に面した和室(リビング)、浴室、御手洗いを庭に隣接した場所に配置し、どこからでも緑を感じられる住まいを目指しています。

可能な限り庭に面した広い開口を設け、光と風、そして庭の緑をたっぷりと取り込むことで、開放感あふれる心地よい空間を追求しています。

blogged by 黒川京子


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下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』 vol.5

Before:リノベーション前の外観

六条通りにほど近い、100年以上の歴史を持つ京町家。 前回は、エントランスに移設したアンティークの灯りや、船底天井を生かした2階部分をご紹介しました。

前回までのお話はこちら→ vol.1vol.2 vol.3 vol.4

今回も、完成した部分をご紹介していきます。
歴史と施主様のこだわりが息づく空間、どうぞご覧ください。

この町家の特徴のひとつが、玄関庭と屋内茶室があったこと。
今回のリノベーションでは、この部分をガレージへと再構成しました。


After:新しく生まれ変わった玄関とガレージ

ガレージの奥に玄関と勝手口を配置。もともと茶室だった空間が、施主様の暮らしに寄り添うガレージへと変わりました。

玄関の壁に見える黒い柱は、もともとの大黒柱。この家の歴史を象徴する大切な存在だからこそ、あえて隠さずにデザインに生かしました。

3つの天井が織りなす玄関

玄関の天井には、異なる3つのデザインが共存しています。

網代天井:薄く削いだ竹を編み込んだ様式。上品な趣を演出。
竿縁天井:伝統的な和風建築に多い、細い角材を使った様式。
元々の天井:家の歴史や風合いを残す工夫。


異なる表情が響き合い、訪れる人を迎え入れます。

猫足スタンプと金魚手洗い

勝手口の土間には、猫好きの施主様がご用意された猫足スタンプが。職人がバランスを考え、ひとつ一つ押しました。

その先には、金魚柄タイルがかわいい手洗いを。ブロックと市販のガーデンパンを組み合わせ、タイルを貼って一体感が出るように工夫しています。
施主様のこだわりが詰まった、とても可愛らしい一角になりました。

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ウッドデッキへと変化した通り庭

玄関から奥へと続く土間「通り庭」は、ウッドデッキにリノベーション。既存の透明素材の屋根を活かし、可動収納式の物干しを設置。
天気に関わらず洗濯物を干すことができるようになり、機能性がぐんと向上しました。

まだまだ見どころ満載

歴史とこだわりが詰まった大正ロマン数寄屋造りの町家。次回はまた別の空間をお届けします。お楽しみに。



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京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.5

2002年(平成14年)に「歴史的意匠建造物」、2024年(令和6年)には「歴史的風致形成建造物」の指定を受けた、築100年を超える京町家リノベーション。
いよいよ、完成編(前編)をお届けします。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4

「観光・食事・鑑賞」が楽しめるプライベート空間 『あそんでいきなはれKYOTO』として新しく生まれ変わり、玄関横の壁には切文字看板もつけられました。

「おうちへ遊びにおいでよ」というコンセプトを京言葉で表現した店名。
そして施主様自らデザインされたロゴマーク(チューリップとAの文字をイメージ)が、切文字で表現されています。

チューリップの花言葉は「思いやり」、Aはアットホームを表し、アットホームなおもてなしができたらという施主様の思いが込められています。この切文字看板設置も、吟優舎でお手伝いさせていただきました。

BEFORE
AFTER

玄関扉を開ければ土間、その隣の部屋はダイニングキッチンへと再構成。
工事前は畳の四畳半だったため、ずいぶんと印象が変化しました。

建物の外観は趣のある京町家ですが、一旦扉を開けるとおもてなしにふさわしい華やかさが広がります。古さと新しさがマッチしているのではないでしょうか。

vol.4でお伝えした、アイランドキッチンです。
ふだんはご家族のキッチンとして使われていますが、おもてなしの際にはここがお客様との会話の中心に。時には、出張シェフが腕を振るうこともあります。

タイル貼り込み前
タイル貼り込み後

モダンなタイルが目を引くこちらの壁。
棚の板を先に組み込んでいるので、職人がタイルをカットし、繋がっているかのように丁寧に貼り込みました。職人ならではの技が生きています。

BEFORE
AFTER
AFTER

こちらが、ダイニングキッチンの全体です。
瀟酒なダイニングから奥へと視線が広がり、奥庭の緑がアイストップに。

立派なシャンデリアが輝く内装は、施主様のこだわりが結集した部分。全てを新しくするのではなく、残すべき良いものは残し、新しいものとなじむよう磨き上げてから再設置しています。

AFTER

ダイニングキッチンと座敷を分けるのは、 3枚引き戸の京唐紙の襖。その横には、晒竹(さらしたけ)のパーテーションを設置しました。

晒竹(さらしたけ)のパーテーションは、完全に目線を塞ぐのではなく、適度に目線を遮りながらも向こう側が見えるため、奥行きを感じさせることができるポイントとなっています。

ランダムに並ぶ節が美しく、オブジェのような存在感も併せ持ちます。 現代的なインテリアと違和感なく調和しているのではないでしょうか。

今回はここまでのご紹介とさせていただきます。
完成編(後編)をお待ちくださいませ。

blogged by 黒川京子