『 最近の記事 』

出町柳賀茂大橋『通りに寄り添う門構えの大正ロマンリノベーション』vol.1

時間がゆるやかに流れる鴨川

新しく始まったリノベーションをご紹介いたします。

京都市上京区・出町柳。
賀茂大橋にほど近く、水面に映る青空、三角州で思い思いに過ごす人々の姿が見られる場所。鴨川の穏やかな風情と学生の活気が共存する町に、今回承った一軒の京町家があります。

通りに寄り添う門構え

こちらの京町家でまず目を引くのが、門の佇まいです。
斜めに走る通りに寄り添うように据えられ、建物とは、わずかに角度を変えて建てられています。 個性あふれる佇まいから、
「通りに寄り添う門構えの大正ロマンリノベーション」と題し、ご紹介してまいります。

昭和初期の町家を大正ロマンの住まいへ

建物は、昭和初期に建てられた京町家長屋の一角です。約10年前には、耐震補強や屋根の葺き替え、上下水道管・ガス管の更新が行われていました。

「大正ロマンの趣を生かした住まいへ整えたい」というご希望で、吟優舎にお問い合わせくださった施主様。畳とフローリングが共存するリビング空間や、これまでなかった浴室の新設などのご希望を受け、計画が始まりました。

解体して初めて見えたシロアリの被害

解体工事が進むにつれ、明らかになったのが、想像以上に深刻なシロアリ被害です。

詳しく見てみると、地面に直接柱が設置されているような箇所も多く、シロアリが侵入しやすい環境であったことが分かりました。


シロアリが上がりやすい環境

中でも、こちらの柱は被害が進行し、途中で欠損していました。

シロアリの被害を受けた柱
根本から欠損した様子

それに伴い、荷重を支えられなくなったことで負荷がかかり、関連する梁にはひび割れも生じていました。このままでは、構造全体へ深刻な影響が及ぶ危険性があります。

ヒビが入った梁

直す前の応急補強

状況を確認後、すぐに支えとなる筋交いを入れ、応急補強を施しました。

仮補強のために入れた筋交

解体は単に壊す作業ではなく、どんな時間を重ね、どんな状態で今ここに建っているのかを知るための工程でもあります。

次回へ

こちらの町家が、どのようにして大正ロマンの空間へと生まれ変わっていくのか。 次回 vol.2 でも引き続き、再生のプロセスをご紹介してまいります。

blogged by 黒川京子


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加茂街道『賀茂川沿いに佇む京町家リノベーション』vol.4

賀茂川の気配と木々の緑に包まれる「賀茂川沿いの京町家リノベーション」。
屋根の葺き替えを終え、現場は「木工事」の段階へ。建物の骨組みを整え、新しい命を吹き込む、とても大切な工程です。

前回のお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3

見えない場所こそ大切に

京町家のリノベーションを考えるとき、多くの方がまず気にかけられるのが「耐震性」ではないでしょうか。戦前に建てられた町家は、現代の耐震基準とは異なる考え方のもとに造られています。

吟優舎では、その歴史を尊重しつつも、木工事の段階で構造を根本から見直し、現代の暮らしにふさわしい強度へと高める補強を行っています。

金物補強の様子
金物補強の様子

写真は、梁と梁を専用の金物で繋いだ様子です。
長い年月を耐え抜いてきた古い部材と古い部材、また古い部材と新しく加えた部材。それらを金物でしっかりと繋ぎ合わせることで、住まいを支える強固な骨組みへと生まれ変わります。

金物補強の様子

また、より高い耐震性を確保するために、厚みがあり高い強度を備えた板材「構造用合板」を用いた施工も取り入れています。柱・梁・土台を連続的につなぐことで、地震の揺れを「面」で受け止める、より確かな耐震構造へと整えていきます。

これらの補強は、完成後には壁や天井の奥に隠れてしまいます。
しかし、「見えない場所にこそ、大切に」。 私たちはそう考え、工事中にしか見ることのできない構造補強の様子も、施主様へ丁寧にお伝えしています。

歳月を物語る、京町家の象徴「ゴロンボ」

町家の解体を進めるなかで、力強い姿を現したのが、ゴツゴツとした丸太の梁。 京町家で古くから「ゴロンボ(ゴロン棒)」と呼ばれるものです。

ゴロンボ

かつての職人たちは、自然のしなりがある丸太が、いかに強靭であるかを知り尽くしていました。その特性を生かし、適材適所に配置することで、町家の強度を支える要としたのです。

通常は2階天井に見られるゴロンボですが、この町家では、1階部分にも立派なゴロンボが渡されていました。1階と2階の梁を交差させるように配置することで、建物全体のねじれを防ぐという、当時の大工の見事な仕事ぶりが伺えます。

当初、ゴロンボは天井裏に収める予定でした。 しかし、2階の寝室に現れたゴロンボがとても堂々と美しかったため、急遽施主様にご相談し、その力強い質感を活かした「見せる意匠」へと変更いたしました。

本来は「野材(のざい)」と呼ばれ、隠れることを前提とした材料ですので、 手をかける必要があります。一つひとつ丁寧に磨き上げ、風合いを損なわないよう塗装を施して、大正ロマンが香る空間のアクセントとなるよう整えていきます。

少しずつ家らしくなっていく喜び

「木工事も順調に進んでおります」という担当者からの報告に、施主様からメッセージをいただきました。

「解体ではなく、『作る』作業が始まったんですね。テンション上がります!」

その明るいメッセージに、私たちスタッフも励まされます。 壊す工程から、積み上げる工程へ。
新しい暮らしの輪郭が少しずつ見え始める瞬間は、何度立ち会っても感慨深いものです。

施主様の期待をしっかりと受け止め、完成の日まで、細かな気遣いを忘れず歩みを進めてまいります。

blogged by 黒川京子


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加茂街道『賀茂川沿いに佇む京町家リノベーション』vol.3

少し時間が空いてしまいましたが、加茂街道「賀茂川沿いに佇む京町家リノベーション」の続きをお届けいたします。


街路樹の緑と賀茂川の気配がすぐそばに感じられ、ふと時間が緩むような、穏やかさに包まれた京町家。
解体工事を終え、現場では次の工程へと作業が進んでいます。

前回のお話はこちら→ vol.1 vol.2

吟優舎の建築幕を掲げた現場

強い日差しのなか、大屋根(2階上)の葺き替え工事が行われました。
吟優舎の建築幕が、光を受けながら現場を静かに見守ります。

未来へ繋がる京町家の屋根

京町家の屋根には、いぶし銀の「和瓦」が用いられることが一般的です。
その施工法は、かつては瓦を土で固定する「土葺き」が主流でしたが、粘土質の葺き土は重量があるため、屋根全体に相応の負担をかけてしまいます。

阪神・淡路大震災以降、町家の屋根にも軽量化と耐震性が求められるようになりました。
現在では、瓦桟(かわらざん・瓦を受け止める下地材)に瓦を掛け、釘で固定する「桟葺き(さんぶき)」が、和瓦屋根の標準的な工法となっています。

「伝統を守りながら、現代における安全性を追求する」。
今回の工事も、その理念に基づいて進めています。

解体中の現場の様子

京町家を守る屋根葺き替えの工程

①古い屋根材の撤去
長年この町家を守ってきた瓦や屋根材を、一枚一枚、丁寧に取り外していきます。古い葺き土が残っている場合は撤去し、昔の下地材である杉皮(通称トントン)が確認された場合は、こちらも取り除きます。下地をあらためて確認することで、傷みや雨漏りの原因を根本から整えます。

②新しい下地づくり
垂木の状態を確認しながら、12mm厚の野地板(のじいた)を隙間なく張り込んでいきます。既存の野地板がある場合は、その上から重ねて張り、現行基準に適した屋根下地へ更新します。屋根を支える、構造上最も重要な工程です。

③防水シートの敷設
野地板の上に、雨水の侵入を防ぐルーフィングと呼ばれる防水シートを丁寧に施工します。屋根の耐久性を大きく左右する大切な役割を担います。

④瓦桟を用いた和瓦の施工
ルーフィングの上に瓦桟(かわらざん)を設置し、その桟に和瓦を一枚ずつ掛けていきます。瓦にはあらかじめ釘穴が設けられており、釘やビスで確実に固定することで、強風や地震によるズレを抑え、軽量で安定した屋根構造となります。

落ち着きと格式を備えた屋根へ

大屋根の葺き替え

安全性を追求した、いぶし瓦の大屋根へ。
銀灰色の瓦が整然と連なる町家の屋根は、すっきりとした佇まいの中に格調を宿し、住まい全体の表情を引き締めています。

一つ一つの工程を大切にしながら、現場は順調に歩みを進めています。
次回も、工事についてお伝えしていきます。

blogged by 黒川京子


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お引き渡しの日 【上京区 御所前に佇む新築3階建て】

施工前の完成イメージスケッチ

京都市上京区。京都御所と同志社大学にほど近く、歴史の静けさと学生街の活気が心地よく混ざり合うこの地に、新しい住まいが誕生しました。

吟優舎は主にリノベーションを手がける工務店ですが、お客様のご要望により、新築も行っています。

本日は、施主様へのお引き渡しの日。
東京にお住まいの施主様に、完成した姿をご覧いただくのはこれが初めてです。

解体前
完成後

初めて迎える「完成の景色」

工事中は写真や動画で進捗をご確認いただいていましたが、素材の手触りや空間の雰囲気は、やはり現地でしか味わえないものです。

玄関の扉が開き、あらためて新居に足を踏み入れられた瞬間、「すごい…!」「わあ…!」という驚きと喜びの声がこぼれました。その表情にふれたとき、私たちもまた胸が熱くなります。

One Teamで受け継ぐ想い

この日は、吟優舎所長の松山をはじめ、現場管理者、設計プランナー、チーフコーディネーター(チームリーダー)、広報スタッフと、チームスタッフが揃いました。


家庭用エレベーターは専門業者様による操作説明。住まいの「これからの時間」をともに見守るための大切な工程です。

人が集い、思いを育む家

この新築は、施主様の邸宅兼・ご友人との時間を楽しむプライベートスペース。
2階には防音室も設けられています。3階には個室とともに、シャワー室を設けました。

3階の窓には京町家らしい格子がついていますが、非常時には外せるように工夫されています。

格子を開け放つと、目前にはお寺の屋根が広がり、京都らしい情緒ある風景が姿を見せます。

家が、暮らしとつながる瞬間

「いかがですか?」とお尋ねすると、にっこりと微笑んでくださった施主様。

その嬉しそうな笑顔にふれた瞬間、「この工事に携わってよかった」と、心から思えます。

「吟優舎 One Team」で造り上げた住まいが、ここから施主様の新しい暮らしへと静かにつながっていく…その節目に立ち会えることが、何よりの励みであり、これまでのすべてが報われる瞬間です。

最後になりましたが、この住まいづくりの機会をお任せくださった施主様に、心より感謝申し上げます。ご家族の思い出が息づくこの地に、新たなお住まいが形となったことを、私たちも大変嬉しく思っております。
このお住まいが、これから多くの人が集い、時を重ねていく場となりますように。今後とも末永くお付き合いいただけましたら幸いです。

blogged by 黒川京子


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冠木門のある路地奥の京町家

通りの奥に、そっと灯るあかり。
そこに佇むのは、吟優舎がリノベーションを手がけた京町家です。

施主様は現在、東京にお住まい。

長年ご家族が暮らしてこられた大切なこの一軒を、町家ショールームとしてお貸しくださっています。

今回は、玄関と冠木門の改修の様子をご紹介いたします。

暮らしの動線に寄り添う「裏玄関」

BEFORE

こちらは、日々の暮らしで使われてきた「内玄関」。吟優舎では、表玄関に対して「裏玄関」と呼んでいます。

AFTER
AFTER

「裏玄関」は通り庭へ通じ、台所・浴室・洗面など、水まわりへとまっすぐに繋がる動線。
日常の暮らしを支える要として、静かに息づいています。

お客様を迎える「表玄関」

BEFORE

こちらは、座敷へと続く「表玄関」。
訪れる人を迎え入れる、この家の「顔」です。

改修前は、靴脱ぎ場が外に設けられていましたが、リノベーションでは玄関戸を外側へと移設。
もともと二畳の和室だった空間を新たに玄関へと再構成し、床には、味わい深いなぐり調のフローリングを採用しました。

和の趣を残しつつも、現代の暮らしに馴染む玄関に。お客様を迎える空間に、凛とした佇まいが生まれました。

AFTER

冠木門と路地の風情

ショールームとしての新たな顔にふさわしく、

冠木門もあわせてリフォームしました。

BEFORE
製作中
AFTER

冠木門をくぐると、
細い路地がまっすぐ玄関へと伸びています。
塀に囲まれたその小径は、
まるで別世界へ誘うアプローチ。

AFTER

大通りの喧騒を離れた、京町家らしい静けさと品のある佇まいが感じられます。

AFTER

新しく生まれ変わった冠木門の向こうに、
静かな時間が流れています。
この場所を快くお貸しくださっているN様に、
心より感謝申し上げます。

施主様のお声もぜひご覧ください

blogged by 松山一磨 & 黒川京子


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