『 最近の記事 』

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.3

上京区西陣。
築100年以上の歴史がある京町家リノベーション『雅』、続報です。


(前回のお話はこちらvol.1vol.2)



平成14年に「歴史的意匠建造物」、そして2024年には「歴史的風致形成建造物」の指定を受けた、由緒ある京町家です。

新しいおもてなし空間『あそんでいきなはれKYOTO』へと生まれ変わらせるため、着々と木工事が進んでいます。

床下部分の施工です。
この現場は、床下状況が良かったので、土(地面)にそのまま施工をしています。

築年数を経た京町家は、床下が湿気がちになり、シロアリの被害を受けていることが多々あります。その状況は現場によって異なりますので、その都度判断し、適切な処置を加えています。

前回vol.1でお伝えした束石の上に「鋼製束/こうせいづか(大引を受ける床束の一種)」を設置しているところです。

この上に、床組の重要な構造である「大引(おおびき)」を施工していきます。

断熱施工です。
床下には、冬の寒さだけでなく、夏の暑さにも有効な断熱性能素材を敷き込みました。

京町家は、冬の寒さが気になるところ。
吟優舎のリノベーションでは、必ず断熱施行を行なっています。

シルバーのものは掘りごたつの専用断熱材です。

以上、現場からの施工報告でした。

blogged by 黒川京子

下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.1

京都市に残っている町家は、都市化や近代化の影響により年々減少する傾向にあります。
一方で、まだまだ現役の町家も見られます。

他の区に比べて町家がまだ多く残っているといわれる下京区。
六条通にほど近い、大きな京町家のリノベーションを承りました。

現場では、すでに解体工事が進んでいます。

100年以上の歴史がある立派な町家です。
解体の途中で貴重な意匠がいくつか見つかりました。

今回は、その一部をご紹介いたします。

◆茶室跡

玄関を入った土間の横。
屋根のような天井が見られます。茶室(数寄屋)だったようです。

「数寄屋」や「数寄屋造り」は、もともとは茶の湯を行う建物を指しますが、現在は高級和風建築を指す場合もあります。





◆囲炉裏跡

石で囲われたこちら。
詳しくは分かりませんが、おそらく囲炉裏の跡だと思われます。

「囲炉裏跡かとも思いましたが、比較的新しめに見えますので、もしかしたら豆炭を使った掘りごたつ跡かも?推測の域は出ませんが…」と設計士談。





◆防空壕跡

和室の下に隠れていた、地下に降りる小さな階段。
どうやら、防空壕のようです。

築100年を超える町家では珍しくないようで、大工によると「古い町家にはよく見られるんですよ」とのこと。歴史を感じさせます。





◆碍子(がいし)

1階の天井を取ると、古い電線とそれを支える陶器製の碍子(がいし)が現れました。

「碍子」とは電線を支えるための器具で、火事にならないよう陶器で作られていました。
昭和30年ごろを境に減っていったようですが、古い町家では軒下や天井に残っていることがあります。





◆嫁隠し

町家を貫く土間「ハシリ」の中ほどに設置される衝立(ついたて)、「嫁隠し」。
「これより奥はプライベート」の目印と言われています。

数々の珍しい意匠が残っていた京町家。
施主様ご家族が住みやすいようにリノベーションしてまいります。

blogged by 黒川京子

お客様のお声<京都市左京区 O様>

お客様が、ご依頼の経緯や施工の感想をお書きくださいました。

「お客様の声」として、こちらにご紹介いたします。

【京都市左京区 0様より】

コロナ禍が始まった2020年春、京都の街に町家ゲストハウスの売物件が沢山出ていることに気づき、私もこんな別宅があったらいいなと夢見ながらネットで何軒か古家を探しはじめると同時に、素敵な町家を検索していたところ吟優舎さんに行き当たりました。
ふと、ある古家について相談したく吟優舎さんにメールを送ったところ松山さんから迅速に返事をいただきその対応の良さにここにお願いしようとすぐに決める事ができました。

松山さんの良いところは(笑) 当方は素人で漠然としたイメ-ジしか伝える事しかできないのですがそれを受け止めてさらに上の提案を次々と勧めて頂けた事です。そして実際に小さな古家のリノベ-ションをして頂いたところ当方の想像以上の仕事をして頂けました。

大阪と京都の2拠点生活に確信が持てた一昨年、定年後の事を考えて車庫付きの物件があったらいいなぁとネットを見ていたら気になる1軒に当たりました。ただ今度は前と違ってフルスケルトンにするリノベ-ションが必要で改修費用が想定できず躊躇しましたが、松山さんに相談して“吟優舎さんに仕事を受けていただけて、予算が想定内だったら購入しよう”と決心しました。そして松山さんには内見に同行していただき、建物の状態を綿密に調査してもらい、上記2条件が可能と回答いただけたのでその場で購入を決めました。

私も建築にかかわる仕事をしているのでよくわかるのですが、一番心配なのが手を抜かれることです。ましてや工務店がそれを主導したら目も当てられません。 その点吟優舎さんに仕事をお願いすることができて、8カ月にわたる大工事も安心して過ごすことができました。(この安心というのは非常に大切だとつくづく思いました)
実際、完成最終チェック時に松山さんが何箇所もやり直しの指示を出されていて、そこまでしなくてもと恐縮すると同時にやっぱり吟優舎さんにお任せしてよかったと改めて思ったものでした。

吟優舎のスタッフのみなさんも松山イズムが浸透していて、とにかく対応が丁寧で何時も気持ちの良い応対をいただきました。
皆様本当にありがとうございました。

大切なお家のリノベーションを任せてくださり、さらにはこのようなメッセージをくださいますこと、大変嬉しく、また大きな励みになります。

身に余る内容に大変恐縮し、工務店冥利に尽きるばかりだと感激しております。心より深くお礼を申し上げます。

お客様に感動していただくことを目標に、今後も社員全員で日々の仕事を大切にしてまいります。 誠にありがとうございます。

blogged by 松山一磨 & 黒川京子

伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.3

現在工事中の「伏見御香宮の古民家リノベーション」、続報です。

前回までのお話はこちら→vol.1vol.2

この日は、解体工事を始めるにあたり、ご近所へご挨拶に伺います。

弊社でこのような挨拶文と粗品をご用意します。
施主様もお品を用意されています。

スケジュールを確認中。
その後、施主様と弊社女性スタッフでいざスタート。

ご近所のお家を一軒一軒ご挨拶に回ります。

工事が始まることをお伝えすると、「いよいよ始まるんですか、楽しみですね」とご近所の皆様。
日頃からの仲の良さ、ご近所付き合いの深さが伺えます。
とてもお話上手で明るい奥様のお人柄も大きいかもしれません。

中には、吟優舎の住所を見て「北白川?懐かしいわ。私は小さい頃、よくあの辺りで遊んだのよ」とおっしゃる方も。

ご挨拶回りも無事に終わり、お家の中の片付けも順調に進んでいます。
いよいよ解体工事が始まります。

blogged by 黒川京子

伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.1

今回よりお届けするのは「伏見御香宮の古民家リノベーション『蔵』」。

ご依頼のお宅は、湧水で有名な伏見御香宮や大手筋商店街にほど近い場所にあります。

伏見はまだまだ立派な町家が残る土地。

街を歩けば、古く美しい町家が多く見られます。

月桂冠の大倉記念館や坂本龍馬が襲撃されたことで名高い寺田屋など、歴史的な建造物にも出会えます。

施主様ご夫妻は、優しいご主人と弾けるように明るい奥様。お二人ともこの伏見のご出身です。

ヴォーリズ建築がお好きで、近江八幡市内に現存するヴォーリズ建築を見に行かれるほどだとか。

今回のご依頼の町家は、もともと奥様のご実家の数件先の並び。

改装されていますが、建てられたのは戦前です。

「高校生の頃、実家は友達から忍者屋敷って呼ばれていたんですよ」と奥様。

「なぜですか?」驚いてお聞きすると、建物正面に町家らしい格子があり、それが忍者屋敷を思わせたとか。

外観も内部も30年ほど前に改装され、忍者屋敷を思わせる格子はもうありません。 今回のリノベーションで「蔵」をテーマにした町家らしい外観に生まれ変わる予定です。

奥様はリノベーションをするにあたり、1年以上前から弊社ホームページとインスタを見ておられたそうです。

「もともと町家が好きだったんです。昔、町家をお昼どころに改修したお店で少し働いていたことがあって和風でいいなあと思っていたんです。終の住処ということで、自分の好きなものに囲まれて住みたいという気持ちが大きくなったんですよ」

「周りの家はどんどん現代風のお家になっていったけれど、歴史的な街並みの伏見が好きだから、自分の家を直すなら町家風の家にと思っていたんです」

今回のプランでは2棟の内、ご両親が住まわれていた1軒を弊社が町家風にリノベーション。

もう1軒は新築して息子さんご家族が住まわれる計画です。

「孫が3月に生まれるんです。体力が持つのかなあと心配!」
そうおっしゃいながらも、とても楽しみなご様子です。

どんな町家に変わっていくのでしょうか、少しずつ様子をお伝えしたいと思います。

blogged by 黒川京子