『 最近の記事 』
出会い――長く探し求めた町家
「町家に住みたいという思いで、何年も探し続けてきました。でも、なかなか見つからず、もう諦めようかと…そんな時に出会ったのが、この家だったんです。本当に嬉しかったです」
そう語ってくださったのは、フランス・ボルドーご出身で、日本語も堪能な施主様。
京都に暮らす中で、ずっと町家に心を寄せてこられました。
吟優舎のことはインターネットで見つけてくださり、「昔ながらの趣を大切にしたリノベーションが気に入って」とご依頼いただきました。
舞台は、賀茂川のほとり
この町家が佇むのは、京都市北区。
賀茂川の流れに寄り添うように延びる、加茂街道沿いの一軒です。
「賀茂川(または加茂川)」と「鴨川」
――同じ川なのに、名前が二通りあることをご存じでしょうか。
このあたり一帯は、古代より賀茂氏という有力な氏族が力を持っていた土地。
上賀茂神社と下鴨神社は、いずれもその賀茂氏の氏神を祀る社です。
そのため、上流にある上賀茂神社周辺では「賀茂川」あるいは「加茂川」、
下流の下鴨神社周辺では「鴨川」と表記されるようになったようです。
今回ご紹介するのは、まさにその「賀茂川」のほとり。
加茂街道沿いに静かに息づく、風情豊かな京町家です。
受け継ぐ意匠たち ― Beforeの姿
Before:冠木門
風格ある冠木門。その先に続く通路が、奥へと導いてくれます。
Before:網代天井
編み込まれた竹の表情が美しい網代天井は、今ある趣をそのままに、丁寧に残していく予定です。
Before:掘り炬燵の跡
足元に目をやれば、なんと掘り炬燵の跡が。
かつての暮らしの温もりが、静かに息づいています。
Before:浴室
浴室は、在来工法で一から仕立て直す予定。
施主様のこだわりが詰まった、特別な空間になります。
窓の先に、美しい景色が待つ
Before:2階
そして、今回の町家で特に魅力的なのが、この2階。
窓の外には賀茂川の緑が広がり、春には満開の桜がまるで額縁のように景色を彩ります。
今もすでに、時を経た美しさがにじんでいますが、ここからさらに丁寧に磨き上げ、記憶を受け継ぐ新たな美へと生まれ変わります。
次回は、ショールームでの設備選びへ
この家がどのように息を吹き返していくのか、お伝えしていきます。
続くvol.2も、どうぞ楽しみにお待ちください。
blogged by 黒川京子
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@ginyusya_official
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2025年5月28日 3:30 PM |
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京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.6
京都市上京区西陣の京町家リノベーション。完結編(後編)をお届けします。
「実際に住んでいる町家にお客様をお迎えし、アットホームなおもてなしを」。
施主様が長年温めてこられたコンセプトの下に、観光・食事・鑑賞が楽しめるプライベート空間「あそんでいきなはれKYOTO」として生まれ変わりました。
前回までのお話はこちら→
vol.1
vol.2
vol.3
vol.4
vol.5
前回vol.5では、おもてなしの中心となる華やかな「ダイニングキッチン」をご紹介しました。
その奥に広がるのは、京町家らしい座敷と緑鮮やかなお庭の景色です。
BEFORE
AFTER
AFTER
庭に面した開口は、できるだけ広く取ることで、最大限の視界と光、風を取り込んでいます。
座敷は、おもてなしの場として、また舞妓さんや芸妓さんを招いてのお座敷遊びにも使われます。
掘り炬燵を設置した座敷
床には設備を入れていますので、畳を一部上げれば掘り炬燵としても使用できます。
施工過程
座敷と縁側の境の欄間には「黒竹(くろちく)の欄間」を採用しました。
黒竹とは竹の一種で、古くから建材や工芸品などに利用されてきた、素材本来の黒色が人気の素材です。
2mほどの黒竹のうち、最も細い先端30cmだけを選び抜きます。
それを職人の手で「一・二・三(ひふみ)」の間隔で並べていきます。
先端以外の太い部分は、あえて使用しません。
太い部分が入るとどうしても繊細さに欠けてしまうためです。より美しい意匠を求めるが故のこだわりです。
黒竹の後ろには、曇り調のカッティングをグラデーション状に施したガラスを嵌めています。黒竹の欄間を引き立てるとともに、美しい化粧を施した縁側の軒裏が、室内からも見えるようにしています。
最後に、庭についてもお伝えします。
吟優舎の町家リノベーションにおいての造園は、設計のコアとなる重要な部分です。
植栽はもちろん、灯籠や蹲(つくばい)、手水鉢(ちょうずばち)、石の一つまで自社で取り揃え、自社でプランニングし、専門の造園職人さんと一緒に作庭しています。
BEFORE
AFTER
こちらの造園では、施主様がご先祖様から大切に受け継がれてきた庭石が最も美しく見えるよう、専門の職人さんと共に作庭いたしました。
築100年を超える京町家のリノベーション。
弊社としても多くのチャレンジがありながらも、お客様の温かいご協力のもと、ついに完成することができました。
離れに住まわれながらの工事は、大変なご苦労であったことと思います。
終始温かくまた忍耐を持ってご対応下さった施主様には、心より深くお礼申し上げます。
誠に有難う御座います。
引き続き末永い御贔屓の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
blogged by 松山一磨 & 黒川京子
歴史的意匠建造物のプライベート空間、贅沢で優雅な「あそんでいきなはれKYOTO」様。
舞妓さんとのお座敷遊び体験など、非日常な京都時間を楽しめる場所となっています。詳しくはホームページをご覧ください。
『あそんでいきなはれKYOTO』様のホームページはこちらをクリック
2025年1月23日 5:55 PM |
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下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.1
京都市に残っている町家は、都市化や近代化の影響により年々減少する傾向にあります。
一方で、まだまだ現役の町家も見られます。
他の区に比べて町家がまだ多く残っているといわれる下京区。
六条通にほど近い、大きな京町家のリノベーションを承りました。
現場では、すでに解体工事が進んでいます。
100年以上の歴史がある立派な町家です。
解体の途中で貴重な意匠がいくつか見つかりました。
今回は、その一部をご紹介いたします。
◆茶室跡
玄関を入った土間の横。
屋根のような天井が見られます。茶室(数寄屋)だったようです。
「数寄屋」や「数寄屋造り」は、もともとは茶の湯を行う建物を指しますが、現在は高級和風建築を指す場合もあります。
◆囲炉裏跡
石で囲われたこちら。
詳しくは分かりませんが、おそらく囲炉裏の跡だと思われます。
「囲炉裏跡かとも思いましたが、比較的新しめに見えますので、もしかしたら豆炭を使った掘りごたつ跡かも?推測の域は出ませんが…」と設計士談。
◆防空壕跡
和室の下に隠れていた、地下に降りる小さな階段。
どうやら、防空壕のようです。
築100年を超える町家では珍しくないようで、大工によると「古い町家にはよく見られるんですよ」とのこと。歴史を感じさせます。
◆碍子(がいし)
1階の天井を取ると、古い電線とそれを支える陶器製の碍子(がいし)が現れました。
「碍子」とは電線を支えるための器具で、火事にならないよう陶器で作られていました。
昭和30年ごろを境に減っていったようですが、古い町家では軒下や天井に残っていることがあります。
◆嫁隠し
町家を貫く土間「ハシリ」の中ほどに設置される衝立(ついたて)、「嫁隠し」。
「これより奥はプライベート」の目印と言われています。
数々の珍しい意匠が残っていた京町家。
施主様ご家族が住みやすいようにリノベーションしてまいります。
blogged by 黒川京子
2024年8月15日 4:12 PM |
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お客様のお声<京都市中京区 N様>
お客様が、ご依頼の経緯や施工の感想をお書きくださいましたので、ご紹介いたします。
【京都市中京区 N様より】
吟優舎さんとのご縁は今から6年前ほど前に始まりました。
住む人の居なくなった母の実家を、今は関東に居を移した両親が、自分達のアイデンティティとして、また維持管理や経年劣化を最小限にするための策として、リノベーションを決意した時でした。
数社のプレゼンを伺いましたが、その中でも吟優舎代表の松山さんの言葉の端々から、京町家に対する熱い想いやその家への敬意、家族の歴史に寄り添おうとする姿勢などが感じられた事が、私たちにこの方ならと安心感を与えてくれました。
実際リノベーションをお願いしてみて、思っていた以上に繊細で巧みな構想とそれを表現できる確かな技術によって、昔の面影を残しつつ現代に相応しい京町家としてモダンな雰囲気に一新していただけました。
リノベーション工事が完成し、生まれ育った大切な思い出のある家が現代的な美しさを纏って蘇った姿を見て、母が真っ先に思い浮かべたのは祖父や祖母の嬉しそうな顔だったそうです。そして次の世代に引き継げる確かなものがここにあることに、この上ない喜びを感じたそうです。どの家にも家族の物語があり、それを第一に尊重してくださった吟優舎さんの心遣いと高い技術力の賜物であると、我が家一同感謝しております。
「家族の物語に寄り添う京町家再生のスペシャリスト」私達家族にとって、吟優舎さんはそんな会社だと思います。
【冠木門】
家の顔である冠木門には木目の美しい欅の板で素敵な意匠の扉が造作されたので、風格が大きく上がりました。また、電子錠を取り入れたことで安全性も高まりました。
【玄関と光庭】
それまでは気にもされず眠った状態だった玄関奥の小さな光庭は、吟優舎さんの巧みな構想によって、玄関扉を開けた時の、一瞬で目に飛び込んでくる絵画の様な仕掛けが施され、我が家自慢の庭となりました。表玄関と内玄関の床は手斧(ちょうな)掛けの床板で造作され趣ある佇まいになりました。
【中の間と奥の間】
中の間は畳からフローリングに変わり、間のガラス戸が取り払われ奥座敷と一体感のある空間が生まれました。奥座敷はこれまで通り四枚の雪見障子で縁側と繋がり、その向こうの奥庭を眺めてお喋りや食事を楽しめる居間となりました。母は昔のハレの日の光景が重なるようです。
【二階の間】
二階の和室の一つはフローリングの間となり寝室専用の部屋に、もう一間は畳のままで洋間と合わせて大きく一つの部屋となりました。畳の間の押し入れの板戸は昔からの物がそのまま使われ、母は懐かしい家族との思い出にいつでも浸れるようです。
【浴室】
お風呂場は庭を眺められる位置に作り替えられ、ライトアップされた紅葉や椿など四季折々の風情を楽しめるようになりました。
N様からのお声をご紹介しました。
大切なお家のリノベーションを任せてくださり、さらにはこのようなメッセージをくださいますこと、大変嬉しく、また大きな励みになります。
身に余る内容に大変恐縮し、工務店冥利に尽きるばかりだと感激しております。心より深くお礼を申し上げます。
お客様に感動していただくことを目標に、今後も社員全員で日々の仕事を大切にしてまいります。 誠にありがとうございます。
blogged by 松山一磨 & 黒川京子
2024年7月30日 5:18 PM |
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伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.5
「伏見御香宮の古民家リノベーション『蔵』」の続報です。
前回までのお話はこちら→
vol.1
vol.2
vol.3
vol.4
弊社では、工事前に全ての家具、家電を施主様に決定(場合によっては購入)して頂き、サイズや形状を確認します。
配置は弊社で検討し、図面に反映させていきます。
これには理由があります。
あらかじめ家具とその配置を決めることで、ちょうどいい場所にスイッチやコンセントなどを設置することができ、「あと5cm広かったらソファが入ったのに」「あと3cm低かったらコンセントが届いたのに」といった失敗をなくすことができるのです。
「伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』」の施主様は、リノベーションにあたってアンティークの本棚と食器棚をご購入されました。
購入された家具の配置や大きさは、すべて図面の中に記載していきます。
細やかなプランニングを行うためです。
これらの家具のサイズをもとに、コーナー幅やコンセントの位置などを決定します。
施主様からLINEにてご購入家具のご報告を頂きました。
施主様との打ち合わせは、もちろん対面でも行いますが、このようにLINEでも行います。
吟優舎ではご契約が済むと、施主様とのグループLINEを作り、進捗のご報告や細かなご相談ができるようにしています。
どんな些細なことでもお客様がご相談できる体制を心がけています。
blogged by 黒川京子
2024年7月24日 4:08 PM |
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