『 最近の記事 』

堺妙法寺御手洗いリノベーション vol.11

堺妙法寺様のお手洗いリノベーション、木工事の続報です。

今回のリノベーションのポイントのひとつが「木製建具」です。
妙法寺は茶の湯にゆかりのあるお寺ということで、茶室や安土桃山時代を思わせるイメージに合わせ、伝統的な建具のスタイルを取り入れました。

窓の障子は、木の組子で「井桁」風のモチーフを表現しました。井桁は「井戸のフチの井の字型の木組み」を図案化した紋様です。井戸は昔の生活には欠かせないものであり、その井戸を守る井桁には「家内安全」「くらしを守る」意味が込められています。

建具類は、取り付ける場所や雰囲気に合わせてひとつひとつ設計し、熟練の職人が丁寧に制作します。

先のブログでもお伝えしましたが、天井はかなり複雑な構造になっています。

というのも、一般的に天井は一番低いところに合わせてフラットに作られるのですが、こちらの場合は少しでも広く感じる空間に仕上げるため、場所によって高さや形状が異なる天井にしているのです。

さらに場所ごとに素材を変更しています。高さを均一にした天井造作に比べ、数倍の手間と労力が必要ですが、素材にこだわることでデザインとしても変化のある個性的な仕上がりになりました。

こちらの天井には、檜(ひのき)の薄板を斜めに編んだ、手間のかかる「網代(あじろ)」の仕上げに。茶室や天井などによく使われる仕上げで、和の趣を醸し出します。邪気をはらう魔除けの意味もあると言われています。

「簾天井(すだれてんじょう)」です。こちらも茶室によく使われる仕上げで、葭(あし)や淡竹(はちく)といった素材を簾編みにしたものを張っています。

このように様々な工夫をすることで、変化に富んだ空間を作り上げていきます。

完成まであと一歩です。次回はいよいよ完成をご案内します。

blogged by黒川京子

堺妙法寺御手洗いリノベーション vol.10

堺妙法寺様のお手洗いリノベーション、木工事の続報です。

真夏の猛暑の中、大工を始め多くの職人たちの頑張りで、工事は順調に進んでいきます。

堺妙法寺は千利休の茶道の最初の師匠・北向道陳(きたむき どうちん)の墓碑があるように、茶の湯にゆかりのあるお寺です。

今回のリノベーションにあたり、施主様は茶室や安土桃山時代を思わせるデザインと、結界を作ると言われる正方形をデザインに取り入れることをご希望されています。

以前は男女兼用だったお手洗い。広さにしてわずか4.5帖ほどのスペースに、今回は男女別のお手洗いと、本堂のお掃除や生花のお手入れに使うための大きなシンクを設置するのも、ご要望のひとつです。

限られたスペースの中で、いかに広くゆとりのある空間に仕上げるかが、この工事の課題でもあります。

少しでも広くするために、壁の厚みを最小限に抑えた繊細な造作をしています。

WC個室の仕切りは天井まで上げてしまうと圧迫感が出るため、高さを2mほどに抑えています。薄く華奢な壁を補強するために、デザインに見える梁を上部に通しています。

補強も露骨にすると美しさを損なってしまいます。「いかに美しく仕上げるか」は、私たちのこだわりのひとつでもあります。

女性用トイレの一つは、扉を開けるとすぐ横が洗面台です。スペースの関係上、どうしてもこのような配置になってしまいますが、洗面台の形をなだらかな曲線にすることで扉と洗面台との干渉を避け、スムーズな動線を確保しました。

何気ない小さな工夫の積み重ねが、全体の美しさを大きく左右します。


blogged by 黒川京子

堺妙法寺御手洗いリノベーション vol.9

日蓮宗寺院 堺妙法寺(さかいみょうほうじ)様のお手洗いリノベーションの続報をお届けします。

堺妙法寺は、千利休の茶道の最初の師匠である北向道陳(きたむき どうちん)の墓碑、また落語の祖ともいわれる曽呂利新左衛門の350年忌碑が残る、由緒あるお寺です。

とても整然としたお寺ですが、古くなったお手洗いのイメージを一新したいというご要望で、弊社がリノベーションを承ることになりました。

配管と電気配線の施工、天井と壁の工事に続き、いよいよ木工事のスタートです。

お手洗いだけでなく、お手洗い前の庫裡(くり・寺院の住まいのこと)と本堂をつなぐ廊下も統一されたイメージでの改修をご希望で、今回の工事の一部となります。

ここは以前、庫裡と本堂をつなぐために増築されたようです。ここだけコンクリート造りで、本堂とはいくぶん異なるイメージになっていました。

以前の階段は、コンクリートの上に直接カーペットが張られていました。

この階段も無垢の木(山から伐採した天然の材木)に変えたいとのこと。しかし階段は高さが決まっているので、厚みのある無垢の板を施行すると高さが変わり、つまずきの原因になります。そうならないよう、上の廊下の床高も変更しなければなりません。

無垢の木は建材とは異なり、木質を観て加工しなければなりません。

熟練大工の腕により、無垢材の階段へと変わっていきます。

施主様はこの工事のために、大阪ではなくわざわざ京都にある弊社を見つけ、ホームページからご依頼くださいました。そのご期待に応える責任の重さをひしひしと感じながら、工事は終盤へと進んでいきます。

blogged by 黒川京子

堺妙法寺御手洗いリノベーション vol.8

給排水設備の配管工事が済み、電気配線を施工し、いよいよ『大工さん』登場となります。

一般のお客様の中には、家は大工さんがほぼ一人で作るものと思われている方がいらっしゃいますが、このブログでもお分かり頂けるように、大工さんが入るまでに、沢山の工程が必要です。

以前の天井に比べ、かなり複雑な天井造作になっています。

これは少しでも高い天井を確保するための結果です。

多くの場合、天井は一番低い基準に合わせて造られがちです。しかしながら、制約があり、高さの取り辛い現場においては、このようにその状況に合わせて高さと形の違う天井を造ることで天井高を確保することが可能です。

また、デザインとしても変化の有る個性的な仕上がりに繋げることも可能になります。

フラットな天井造作に比べて、数倍の手間と労力が必要になります。

壁の造作です。

スペースを確保するために、解体後の壁の上ではなく、壁の内部に下地を組んでいます。

通常のリフォーム工事では、壁の上に下地を組むことが一般的な施工方法ですが、この現場ではスペース確保のため、この様な施工方法を採用しています。

その差は壁一辺で30㎜~40㎜です。



このような通常ではない現場においては、常に増して施工管理が大変重要になります。箇所箇所で、細かい指示を大工さんに伝えていきます。

また、担当大工の性質気質も重要な要素になります。この現場は、裏表の無いとても誠実な親子の大工さんが担当してくれました。親子なので、息はぴったりと合っています。

解体の職人さんに続いて、施主様に褒めて頂いた職人さんです。

blogged by松山一磨&安井加奈

堺妙法寺御手洗いリノベーション vol.7

次に進める作業は、給排水設備の配管工事です。

以前は男女兼用であった御手洗い。
広さにして4.5帖ほどのスペースに、ご住職様ご夫妻の念願でもあった男女個別の御手洗いを造ります。
つまり片方のスペースが2.25帖程ということになります。

この4.5帖の空間に給排水合わせて13箇所の配管を仕込んでいきます。
この狭い空間ですので、10mmの誤差も許されません。

10mmと聞かれると結構大雑把に思われるかもしれませんが、ご覧のようにまだ壁も床も天井も無い、解体後の基準が取り難い状況下での施工です。

通常このようなリフォーム工事では、造作する壁や床の側に余裕(余分な寸法)を取り、造作時に計画図面との誤差を+−5mm程に寄せていきます。
しかしながらこの工事ではスペースを確保するために、その余分な遊び寸法は見ていません。
つまり、配管施工は、一発勝負です。

正直に言いますと、『墨出し』をした私自身、ドキドキする配管工事でした。

*墨出し : 施工するための位置を設定する作業

  blogged by 松山一磨 & 疋田まり子