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京都市左京区『下鴨の古民家』リノベーション VOL.3【完成編】

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下鴨の古民家、続編 VOL.3【完成編】です。

(※以前のブログはコチラ→ VOL.1・ VOL.2

 

ベランダから送り火「妙」が見える家のリフォーム後をご覧頂きます。

中庭に面したリビングに、楠(くす)の無垢材カウンターを造作し、

すべての工事が完了しました。

 

(after)楠 無垢材カウンター その1

 

(After)楠カウンター

(after)楠 無垢材カウンター その2

 

(After)楠無垢材カウンター

(after)楠 無垢材カウンター その3

 

楠(くす)は、とても木目が美しい木材です。

ナチュラルな風合いに拘(こだわ)り、

植物性のオイルで仕上げました。

 

(after)玄関内部

 

(After)玄関フローリング

(after)玄関フローリング

 

玄関床には、フランス製の波形加工された松フローリングを採用。

 

格子天井は朱色。

和紙と京都伝統の唐紙 で、市松(いちまつ)模様に貼り上げました。

 

(after)玄関 朱の格子天井

 

天井の唐紙と照明器具の相性はいかがでしょうか?

プランナーが苦労して探し出した逸品です!?

 

(after)レトロ照明に反射する、唐紙の黄金色

 

 

このリノベーションには、3つの大きな造り付け収納を造作しています。

 

その1つ目は、

玄関土間、正面の土間収納です。

二方向から出入りが可能な回遊式になっています。

 

(after)玄関土間収納の入口アーチ

 

棚は、全て可動式になっています。

 

(after)玄関土間収納の棚

 

 

(After)土間収納

(after)玄関土間収納

 

和室は既存のスタイルを残し、

お客様のイメージに合わせてデザインを刷新しました。

 

(after)一階和室

 

奥に深い広いLDK。

細長い空間が間延びしたり、無駄な空間が発生しないように、

奥様主導で、ゾーンニング(間取り設定)していきました。

 

(after)リビングスペース

 

リビング奥の空間は、おそらく過去の増築のなごりだと思われますが、

勾配天井になっています。

天井を垂木(たるき)風にでデザイニングし、

テラスガラス戸上に無垢板の幕板(まくいた)を取付けました。

これは、エアコン取り付け位置にもなります。

 

(after)リビング中庭側 天井&デザイン垂木

(after)リビング中庭側 天井&デザイン垂木

 

(after)キッチンスペースと縦格子

 

2つ目の収納は、

階段横の使いづらいスペースを活かしたキッチン収納庫です。

建具はオリジナルデザインの木製3枚引戸。

また、造り付けステンレス天板のキッチンカウンターに設けた「カウンター裏収納」、

そして、階段裏の段差を利用した「レンジ台+収納棚」

 

(after)3枚引戸の食器棚

 

(after)階段裏収納・レンジ台カウンター

 

(after)カウンター前面のモザイクタイルの飾り棚

 

(after)キッチン のモザイクタイル&レトロ照明

 

和室との間仕切り建具は、はんなりと。

薄い赤模様の唐紙で仕上げました。

 

(after)唐紙仕上げの建具

 

リビング奥のアーチは、中庭奥の離れへと続きます。

鈴蘭(すずらん)型のレトロ照明の下、ちょっぴりワクワク感を胸に進んでいきます!?

 

(after)夜の離れ廊下 アーチ正面

 

離れは、2つに分かれていたお部屋を1つの空間にリフォームしました。

書斎部分ともう一方の空間は、2枚の収納引込戸で分離できるようになっています。

常は広く、時には使用目的に合わせて仕切れる構造です。

 

(after)書斎の本棚&デスク

 

(after)唐紙建具&ロフト梯子

 

書斎上部はロフトに。

もう一つの空間は、吹き抜けに。

窓側は、隣家いっぱいに建っていた部分を減築し、

ウッドデッキのテラスを造作しました。

 

(after)吹きぬけとロフト

 

柱の並びが、以前の外壁が有った位置。

 

(after)ウッドデッキのテラス新設

 

3つ目の収納は、

和室のウォークインクローゼットです。

入口アーチのある一面にアート感覚な洋風の蔓草(つるくさ)模様のクロスを採用。

6帖サイズの内部には、

設置するものに合わせて、計画的に棚やハンガーパイプを設置しています。

 

(after)二階 和室横ウォークインクローゼット

 

奥様がお洋服を確認できるように、

正面の収納扉はミラーになっています。

 

(after)和室横ウォークインクローゼットの入口アーチ

 

 

とても大きな工事で、工期も長く、

その間の打合せは、

ほぼ全て奥様お一人で対応してくださいました。

とても大変な大仕事であったと思います。

お忙しい合間を縫って、

常に工事優先でのご対応をして頂けましたことを心からお礼申し上げます。

また、終始暖かいお心で、工事の進捗を見守り、必要な時には、

何をおいてもご協力してくださいましたご主人様に、この場をお借りして、

深くお礼申し上げます。

誠に有り難う御座いました。

そして、お疲れさまでした。

 

新居での初めてのお正月が、素晴らしいものでありますように。

 

 

※こちらの『下鴨の古民家』 は、弊社のホームページの

『  ピックアップ施工事例  Before&After  』にて、工事前と完成の様子を

詳しく確認することが可能です。

よろしければ、合わせてご覧ください。

『  ピックアップ施工例  』

(→ コチラ http://www.ginyusya.com/pickup/detail_11.html)

 

Blogged by  小川 還

( 監修 : 松山 一磨)

 

 

 

 

京都市左京区『下鴨の古民家』リノベーション VOL.2

【写真をクリックすると、大きく見やすくなります】

 

『下鴨の古民家』の続報  VOL.2 をお伝えします。

(※初回ブログは → コチラ

 

(after)ベランダからの景色

 

送り火の「妙」の字の山が見えるベランダが

完成いたしました。

中庭を見下ろす位置にあるベランダです。

同時に、屋根の葺替えも行いました。

 

(after)ベランダ/葺替えた屋根

 

この部分の屋根は瓦ではなく、ガルバリウム鋼板を採用しています。

軽く、従来の鉄板材とは違い耐久性にも優れています。

 

では、玄関から見てまいりましょう。

 

(工事中)新調された玄関戸

 

新調された玄関格子戸と欄間です。

これから塗装し、ガラスを入れて完成です。

 

玄関を入ると、すぐにアーチ形の開口部があります。

新設の土間収納です。

 

(工事中)玄関土間/土間収納のアーチ形開口部

 

左官職人が土間仕上げをする前に、設計デザイン担当者が、

 

(before)石の床飾りを考案中

 

石を選び、床飾りのパターンを実際に作っていました。

那智黒石を花びら状に並べています!

 

(工事中)アーチ型の開口部より内部を見る

 

アーチ形の向こうには、木工事担当の大工職人さんが二人。

この土間収納は、数人の大人が入れる広々設計としました。

2方向に入口があり、行き止まりのない回遊式の動線になっています。

では、もう1つの、階段脇の開口部から内部をご覧ください。

 

(after)階段脇の開口部/完成した那智黒石の床飾り

 

玄関天井は、華やかな格子天井に造り変えています。

元々あった来客用トイレと手洗いスペースは完全に撤去し、

明かりと風を取り入れるための大きな窓を新設しました。

 

(工事中)玄関天井に唐紙を施工中

(工事中)窓新設で玄関を明るく!

 

さあ、玄関横の和室へお進みください。

縁側との間仕切りを撤去して和室の一部に取り込み、

そのぶんだけ隣のLDK(主にリビング)の面積を広げています。

縁側だった部分は勾配天井を活かし、網代(あじろ)のクロスでデザインしました。

 

また、小さな拘(こだわ)りとして…

すぐ隣のLDKのリビングスペースに新設した、観音開きの物入れの建具の高さを、

和室内にある既存の床の間の開口高と合わせています。

このような設計により、言葉では説明できない、感情的な安定感を

生み出せるのではないかと考えております。

 

(工事中)縁側を撤去、和室の一部に変更

(工事中)既存の床の間と、新設した観音開きの物入れ

 

LDKのキッチンスペースには、食事もできるキッチンカウンターを

新しく製作し、リビングとキッチンの間に設置。

両方から利用できる便利なカウンターです。

カウンター天板はステンレス、デザインのポイントとして側面の棚に

モザイクタイルを埋め込んでいます。

 

(工事中)キッチンカウンター 製作中/設置予定場所の壁面

(工事中)キッチンカウンター 固定

 

リビング側から見た、キッチン正面全景をどうぞ。

私たちスタッフのお気に入りの場所(見せ場)の1つです。

モザイクタイルとアンティークイメージのカウンター、そして、

オーバル(oval:卵形や楕円形)のペンダントに、

シンボルとも言える…木目を強調させた大きな柱。

 

(工事中)キッチン正面全景

 

キッチン正面右側は、斜板をはずし、敢(あ)えて凸凹が見える

ようにした階段の裏側です。

デザイン的に楽しめるよう、従来のクロス仕上げではなく、

裏側全体を無垢材(むくざい)で造作し直しました。

下部は、レンジ台と収納になっています。

 

(工事中)階段下収納

 

この階段手前の、ぽっかり空いたスペースには、天井まである超大型の食器棚を

新しく造作しました。 扉は3枚引戸ですので、大きく開けることが可能です。

またこの建具、デザインにも力を入れています。

完成をお楽しみに!!

 

(工事中)キッチン食器棚 製作中

 

キッチン正面左側(すぐ上の写真の左奥)には、

洗面&洗濯室への開口部があります。

こちらも回遊式の動線にリフォームし、キッチンとリビングの2方向から

出入りが可能になりました。

洗面&洗濯室の奥に見えているのは、浴室です。

 

(工事中)キッチンカウンター横から、洗面&洗濯室を見る

 

洗面&洗濯室の内部へどうぞ。

左には天井まである収納棚を造作し、右には大型洗面台と洗濯機置き場を。

これでもう、『お母さ〜ん、パンツは?』という声に悩まされることはない…かも!?

 

(工事中)洗面&洗濯室。左:収納棚/右:洗面台と洗濯機置き場

 

リビングスペースは、中庭側の既存の屋根勾配の天井に

新しく無垢の垂木(むく の たるき)をデザインし、

ナチュラル感あふれる空間を演出しました。

 

(工事中)リビングスペース。中庭側のテラス窓と天井

 

リビングから離れへと続く通路入口は、アーチ形の開口部にリフォーム。

通路の途中には、前より広くなったトイレがあります。

このトイレ、以前は、リビングから出入りする配置となっていましたが、

今回のリフォームで、離れへの渡り廊下から入れるように設計変更しました。

扉の多くは、大正~昭和初期に製作されたアンティークの建具を採用しています。

 

(工事中)リビングから離れへの通路を見る

(工事中)エアコンのダクトケース、フタを外したところ

 

じつはこのアーチ壁、デザインのためだけのものではなく、

エアコンのダクトケースにもなっています。

テラスサッシ上部に設置されるエアコンのダクトやドレイン配管を隠し、

スッキリさせるためです。

 

アーチを通り、離れへ進みます。

 

(工事中)離れ。ロフトのある書斎正面/オーダーメイドの本棚と机

(工事中)ロフト側(書斎の上部)/吹きぬけ側

 

離れの2部屋は天井を撤去し、一方をロフト付きに、

もう一方を吹きぬけに改造しました。

 

(after)吹きぬけには天井扇を設置

吹き抜けの高い天井

 

また、吹きぬけ側に、テラス窓(掃き出し窓)を新設。

隣家までいっぱいいっぱいに建っていた外壁を、半間(90cm)後退させ、

その空間にウッドデッキを敷き詰めました。

ちょっと面白い空間になっています。

子供たちが大好きになりそうな場所…が出来たかもしれません!?

隣家との目線を遮るため、微妙な高さ(?)のアルミの通風フェンスを設置しました。

 

(工事中)ウッドデッキのテラス

 

さて、二階の和室は、縁側と床の間・押入れを撤去して、大きな空間を造り、

収納棚が3列ある大容量のウォークインクローゼット(→ 約6畳の広さ)を

新設しています。

珪藻土のクロスを採用し、教室として多人数が使用されていた以前とは違う、

ほっとする雰囲気を目指しました。

 

(工事中)二階の和室、板床部分

(工事中)二階の和室、畳部分/ウォークインクローゼット

(工事中)ウォークインクローゼット内部/3列の収納棚

(工事中)棚板は可動式になっています。

 

夕暮れ後に、各室に照明器具を取付けてまわりました。

中庭が見えるリビングの窓辺です。

 

(工事中)リビング窓辺の照明

 

私たちが目標とする『 新しいのに古く懐かしいデザイン 』に

相応しく(ふさわしく)ありますでしょうか!? いかがでしょう?

 

このあと、塗装と最後の仕上げに入ります。

腕によりをかけて、塗装職人と大工職人が

木工作業に奮闘いたします。

ご期待ください!!

 

ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました。

m(_ _)m

 

Blogged by  小川 還

( 監修 : 松山 一磨)

 

 

 

 

 

京都市左京区『杉皮塀のある町家』改修 VOL.6 【 完成編 後半 】

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(after)洋のリビング ・吹き抜け

 

杉皮塀のある町家、完成編【 後半 】をお届けいたします。

※過去ブログへ → VOL.1・ VOL.2VOL.3・ VOL.4・ VOL.5

写真は、キッチンから見た洋のリビング。

 

(after)玄関内周り

 

天井を撤去し、屋根に天窓を造作しました。

吹き抜けにすることで、大きな梁や柱、勾配の屋根裏が見え、

変化に富んだ空間が創り出されました。

そして天窓からの光がさらにその変化に彩(いろどり)を添えてくれます。

このお屋敷ならではの美しさが際だったように思われます。

 

(after)吹き抜け 〜02〜

 

夕暮れの陽光が、天窓から吹き抜けへ差し込み、

様々な梁影を映し出し、退屈しません。

ちなみに上部の丸太の梁は、以前から有った古いもの。

下に見える角材の梁は、デザインと補強を兼ねて造作した新しいものです。

見た目には、どちらも元々有った古い梁に見えますが・・・。

 

(after)両開き窓を引戸に改造

 

リビングスペースの両開き窓は、

新しく外格子を取付け、そのまま引戸にリフォームしました!!

既存の開き窓の建具に溝加工を施し、納めています。

 

(after)アンティーク戸

 

室内各所に大正から昭和初期製造のアンティーク扉を設(しつら)えました。

扉の向こうは、和のリビングスペースです。

 

(after)和のリビングスペース

 

変色がなく、肌触りの優しい和紙の市松畳

オリジナルの京唐紙(からかみ)

新規造作のコンパクトでかわいい書院

個性豊かな和のリビングスペースの完成です。

 

(after)隠れ家的な書斎

 

押入の隣には、奥様の強いご要望であったミニマムな書院が完成しました!!

幼いお子様の様子を見ながらササッとメールを書いたり、本を読んだりと・・・

隠れ家のような空間で、作業にも集中できそうです。

 

(after)京唐紙(からかみ)の襖

 

襖(ふすま)は、伝統ある京唐紙(からかみ)へ貼り変えました。

柄(がら)はもちろん、紙色、紙質まで選んで、昔ながらの版木を使っての職人の手で作られる京唐紙です。

一点しか存在しない本物の逸品です!!

 

(after)新しい階段

 

さあ、二階へどうぞ。

階段は傾斜を緩(ゆる)くし、お子様が登りやすいように

段数を増やしています。

手摺(てすり)も大工造作で製作したオリジナルです。

 

(after)2階の洗面 〜01〜

 

町家イメージの洗面台の完成です!!

右のアンティーク戸(二階トイレ入口)とのバランスを考え、

この家の風格に合う、”渋さ”のあるデザインに。

陶器製の洗面ボウルが載(の)る天板は、一見(いっけん)、木の板に見えますが、

水の変色や腐れを考慮して、木肌色の陶器タイルを採用しています。

 

(after)2階の洗面 〜02〜

(after)2階の洗面 〜03〜

 

照明・鏡・陶器製洗面ボール・タイルなどは、

『  大正期の町家の 趣(おもむ)き  』を表現するように、

設計デザイン担当者が現場で実際の色や風合いを確認して選んだものです。

 

(after)和室の押入棚

 

一階和室の押入。

ここは二つあった階段の一つを撤去して収納にリフォームしたもの。

施主様のご要望をお聞きして、従来の中段のみの押入でなく、

洋服ダンス代わりにも使えるように

可動式の棚やネクタイハンガー、ズボンハンガー、パイプハンガーを設置しました。

 

 

(after)ウッドデッキバルコニー 〜01〜

 

一階キッチンの屋根上に空中庭園さながら!? 広いウッドデッキバルコニーを新設しました!!

正面にある目隠しの塀は、手前と奥に縦板を交互に並べて造作した

菖蒲張り(あやめばり)という和の木工仕上げです。

視線を遮(さえぎ)り、風を通します。

 

(after)ウッドデッキバルコニー 〜02〜

 

お子様が簡易プールに入って遊んだり、

外でちょっとした軽食をとったりできるように、

ここにもかわいいタイル仕上げの手洗い場を設置しました。

 

さて、最後のお掃除が済み、メンテナンスの日まで、

私達スタッフはこの家とお別れです!

 

築80年以上の風雅なお屋敷。

この家を引つ継がれた若きオーナー様のセンスと往時の細やかな

彫刻や加工が施された素敵なデザインのコラボレーション(融合)。

新たな80年間を超えて、また次に受け継がれていくことだと思います。

 

弊社の建築とデザインは、完全な復元ではありません。

残すべき良きものは残し、新しい部材が馴染むよう、

設計デザイン担当者と職人が奮闘した結果が、こちらのお屋敷です。

いかがでしょうか?

 

最後になりましたが、

ご信頼いただき、その多くを私たちにお任せくださった施主様に

心から深く、お礼を申し上げます。

誠に有り難うございました。

 

こちらの『杉皮塀のある町家』 は、弊社のホームページの

『  ピックアップ施工事例  Before&After  』にて、工事前と完成の様子を

詳しく確認することが可能です。

よろしければ、合わせてご覧ください。

 

『  ピックアップ施工例  』

(→ コチラ http://www.ginyusya.com/pickup/detail_08.html)

 

おつきあいいただき、ありがとうございました。

 

Blogged by  小川 還

( 監修 : 松山 一磨)

 

 

 

 

京都市南区『子供を育てやすい町家』改修VOL.4 完成です!!

京都市南区『子供を育てやすい町家』の完成編です。

私たちが昨年施工させていただいた建築の中で代表的なものだったと思います。 この建築のプランナーを務めた新造は、一度に複数の建築の担当をしません。 『 1棟入魂 』 が彼女の信条です。 現場に通う頻度も高く、その拘(こだわ)りは、最後の最後まで続きます。 共に働く私ですら、その姿勢には敬服の念を感じています。

今回のこの建築は、今から子育てをされるまだお若いご夫妻の新居として、プランさせていただきました。 引渡しに際して、その施主様ご夫妻が夕方暗くなろうとする中で、いつまでもその外観を眺め続けていらした姿に、胸が熱くなりました。 建築をしていて、一番嬉しい瞬間です。

『 良いものを造りたい 』 『 美しいものを造りたい 』 『 可愛いと喜んでもらえるものを造りたい 』 と常に思っています。

プロでなくても、とてもセンスが良く、素晴らしいご提案をしてくださる施主様がいらっしゃることは、事実です。 ただ  『  こんな家を造りたい 』  という思いを実際に形にしていくことは、容易なことではありません。 細かいバランスやディーテイル(細かいデザインや納め方)を考慮しながら、トータルに考えて建築を進めることは、たいへん難しく、お客様にその一つ一つを聞いて、施工してしまうと、『 お客様のイメージされていた欲しい形 』 とは、『 違う物 』 ができてしまうことの方が一般的だと思います。 だからこそ建築の専門家としての私たちの存在価値が有るのだと信じています。

時間をかけて施主様の 『 欲しい形 』 をヒヤリング(じっくりとお客様のお話を聞くこと)を通して理解していきます。 そしてそのイメージをできる限り正確に捉(とら)えて、私たちのアイデアやデザインをプラスした形でプランニングを制作します。

2つのプランを提出することはありません。 『 最善を尽くした1プラン 』 をご提案しています。

施主様の言われるがままをプランするという設計士がいますが、私たちは敢(あ)えて、イメージのみを聞いた上で、細かい部分までご提案しています。 そこにはある意味、逃げ場のないリスクが存在します。  それでも、そうでなければ  『良い物 』 はできないと考えています。

この 『 子供を育てやすい町家 』 をご発注してくださいました施主様は、初めにご提出したプラン通りの内容で、ほぼそのまま建築をさせてくださいました。 だからこそ、私もプランナーもなおさらに、最後の最後までこの家に 『 一棟入魂 』 で臨めたのかもしれません。

ここまで信頼してくださった施主様には、感謝の念でいっぱいです。 このことは、一生涯忘れられないことだと思っております。

以下は、今の私達の精一杯の建築です。

勿論、これからなおいっそう精進して、さらに良い建築を志し続けます。  末永いご贔屓のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

Blogged by 松山 一磨(いつま)

 

左から玄関、自転車スペース、子供たちのフリースペース。 大きく見えますが間口は5mです。

 

手前は子供たちのフリースペースです。 ここからも出入りできます。 汚れた手足を表のモザイク造りの洗い場で綺麗にしてから室内へ・・・

 

もともとこの建物に有ったメタル製の花台です。 とてもお洒落な形をしています。 錆を落とし、不要な部分は撤去し、さらに溶接補強して生まれ変わりました!! 次の30年、また頑張ってください。

 

竪の格子で揃えたデザインです。 それぞれの格子のサイズを変えることでバランスに変化がついています。 この『バランスの変化』がある意味『美しさ』でもあると感じています。

 

玄関の片引き戸を空けた状態です。 表側の土間のデザインをそのまま玄関内部まで連続させています。

 

玄関網戸も木製で製作しました。 ネットはステンレスで耐久性をアップさせる仕様にしています。

 

一見お茶室風の3帖間。 子供たちの憩いの場。 ちょっとした来客時など、奥のリビングでなくここでお話することも可能です。

 

玄関収納はオーダー製のものを誂(あつら)えました。 飾り台は銀杏(いちょう)の無垢材。 表の路(みち)から格子のFIXを通して、飾ったお花がさり気無く見える設計になっています。

 

施主様拘(こだわ)りの玄関収納内部。 何を置くかを決めた上での設計と施工です。 電動自転車のバッテリー充電用のコンセントも設置してあります。

 

玄関廊下。 このフローリングは、フランス製チョウナ加工の無垢材です。 左はLDK入口。 昭和初期製作のアンティーク建具です。 ガラスを装着し、塗装をして再登板!! 正面のお部屋は子供のフリースペースの玄関からの様子です。 一見お茶室っぽい感じではありませんか?

 

お茶室をイメージした子供たちのためのフリースペース。 天井は格(ごう)天井にして、色の違う和紙調のクロスを市松仕様で施工。 床面は畳ですが、和紙をコーティングした色褪(あ)せしない、汚れの拭き取りやすい素材です。

 

玄関廊下からリビングを臨んだ様子。 右側は2階への階段室扉。 左はキッチンですが、来客者からキッチンが丸見えにならないように格子のパーテーションをつけました。 また幼児が自由にキッチンに入れないように鍵つきの格子扉を設置しています。

 

リビング内部から見た入口付近の様子。 アンティーク建具が町家の雰囲気を醸し出してくれます。 床は松の無垢フローリング。 塗装は柿渋+ベンガラの日本古来からの天然素材です。

 

LDKの一番奥、増築して天井を高くしたもっとも寛(くつろ)げるスペースに家族が憩(いこ)うリビングゾーンを配置しました。 その真上には大型の天窓が有ります。

 

東西に窓の無い町家。 天窓は明かりを取り入れる最強のパーツです。 天井は構造材を出してナチュラルな雰囲気を演出してみました。

 

奥様のご希望でキッチンは家族の顔が見える対面キッチンに。 風通しを考えて窓を多めに設置しています。 これも東西面に窓が無いことへの対策です。

 

モザイクタイル造りのキッチンカウンター。 LDKの中心に位置する、この町家の新たな顔の一つとして、製作しました。

 

レトロ感満点のモザイクタイル。 『 古いが新しい 』 という言葉がぴったりなモザイクタイル。 弊社お勧め素材の優等生です。

 

弊社では、取り壊された町家から回収された江戸時代~昭和初期製作のアンティーク建具を好んで再利用しています。 新品では決して表現できない味わい深さがあります。 これもまた弊社お勧め素材の優等生です。